2024/03/31 西部読売新聞=福岡

 歌手の加藤登紀子さんが、終戦後、大陸からの引き揚げの途中に望まぬ妊娠をした女性らに中絶手術を行った筑紫野市の「二日市保養所」跡を訪れた。

 加藤さんは満州(現中国東北部)ハルビン生まれで、引き揚げを経験。5月に同市であるコンサートの打ち合わせで保養所のことを知り、訪問を希望したという。

 同市によると、保養所は引き揚げ者の健康回復を目的に設置。日本への帰途、外国兵からの暴行を受けた女性に、中絶手術や性病治療を施したとされる。跡地は現在、特別養護老人ホームになっている。

 加藤さんは19日に現地を訪問。跡地に立つ水子供養堂に手を合わせ、報道陣に「色々と清算しなければならない女性の気持ちは様々だったと思うが、未来を生きるために一歩踏み出した場所だったと受け止めたい」と述べた。

 ロシアによるウクライナ侵略にも触れ、「ロシアでもウクライナでも早く戦争を終わらせたいという女性の声は強くなっている。歌で世の中を変えることはできないかもしれないが、願いを支える力はあると思う」と平和への思いを語った。

 コンサートは5月18日午後3時、同市文化会館で。一般6600円、中学生以下3500円。問い合わせは三宅さん(090・5389・5646)へ。

 写真=水子供養堂(左奥)の前で思いを語る加藤さん