2024/04/18 南日本新聞朝刊

 太平洋戦争後の混乱で旧満州国に取り残された残留日本人孤児の親代わりとなった「中国人養父母」に感謝する記念碑が鹿児島市の天保山公園に設置され、今年で10年がたった。中国で祖先を供養する清明節にあわせ、県日中友好協会が献花式を開き、県内の残留邦人ら約20人が「日中関係の悪化が懸念される今こそ、変わらぬ絆を記憶しよう」と平和を願った。

 7日あった献花式で鹿児島華僑総会会長で残留邦人2世の楊忠銀さん(87)は「養父母に感謝を伝える石碑は全国でも珍しい。各地に広がれば両国の友好関係構築の一助になる」。中国駐福岡総領事館の楊慶東総領事(56)は「武力行使は中国だけでなく日本人も深く傷つけたことを胸に刻み、互いを尊重し対等に付き合うべきだ」とあいさつした。

 石碑は、鹿児島市の在留邦人が提案し県と市の日中友好協会らの協力を得て2014年に建てられた。旧満州国(1932~45年)があった中国東北部で、家族と離れ離れになった在留邦人が中国人に引き取られた経緯や感謝の思いを込めた漢詩が刻まれている。

 建立に協力した県日中友好協会の海江田順三郎会長(96)は「名も知らぬ幼子を家族と同様に育ててくれた。この恩は永久に忘れてはいけない」。養父母に育てられた高橋達雄さん(82)は「養父母がいなければ私は生きていない。敵味方関係なく愛を注ぐ広い器に救われた」と話した。(鹿島彩夏)

【写真説明】中国人養父母へ感謝を込め石碑に献花する楊慶東総領事=鹿児島市の天保山公園