2024/04/19 信濃毎日新聞朝刊

 早稲田大政治経済学部(東京)のジャーナリズムがテーマのゼミで18日、満蒙開拓と信濃毎日新聞の報道を題材にした授業が始まった。戦時下、県などに協力して開拓団の送出を推進する立場だった本紙の記事を読み解く。批判的に分析し、メディアが戦争に協力した経緯や教訓を学ぶ。

 ゼミは高橋恭子教授(映像ジャーナリズム)が主宰し、3、4年生の約30人が参加している。昨年秋から高橋教授の下で学ぶ大学院1年の工藤優介さん(24)=東京都出身=の祖父が中国残留孤児だったことを受け、授業で初めて満蒙開拓を扱うことにした。都道府県別で最多の開拓団員を送り出した長野県の事例を考察の対象に選んだ。

 5月初旬までの計3回、戦時下の本紙記事を活用した授業を行う。9月には県内を訪れ、下伊那郡阿智村の満蒙開拓平和記念館などを見学する予定だ。

 この日は導入として、本紙が連載中の「鍬(くわ)を握る」から、中国残留日本人の帰国者が長野市篠ノ井塩崎の千曲川河川敷で違法耕作していた問題を取り上げた。この問題を巡る他の報道も見て「実情を伝えるだけでは、背景が分からず嫌悪感ばかり募ってしまう」「日本語があまり話せない対象者でも、通訳者の協力を得るなどして丁寧に取材する姿勢が重要ではないか」といった意見が出た。

 高橋教授は「戦争の体験者が少なくなり、教育の現場で取り上げなければ知る機会もなくなってしまう」と話している。