DDT by megane1964 | 熱闘!後楽園

DDT by megane1964


熱闘!後楽園-megane1964
 一体何度、石川修司はディック東郷をマットにたたきつけただろうか、スプラッシュマウンテンで。一体何度、ディック東郷は石川修司にぺディグリーからダイビング・セントーンの「必殺コース」を味あわせたのだろうか。 195㎝、120キロの恵まれた体格を生かした力技ファイトを石川が展開すれば、レスラー生活20年、「レスリング・マスター」の東郷も、グラウンドを含めた多彩な技で対抗する。まさに「剛」と「柔」。31分18秒のぶつかり合い。メーンのKO-D無差別級選手権試合は、創立されて15年で下北沢タウンホールから両国国技館に“出世”したDDTという団体の充実ぶりを如実に表す面白い試合だった。


 東日本大震災直後の後楽園ホール興行では、得意の映像を封印し、リング上で控室の様子を再現する「省エネ版」の演出を見せたDDTだが、この日は北側客席の上にスクリーンを設置。通常の演出スタイルに戻してきた。北側上手をマスコミ席、下手を関係者席にして、少し客席を犠牲にする会場設定だが、団体の性格上、これは折り込み済み。満員御礼、熱気に満ちた観客席であった。


 実はワタクシ、megane1964は、旗揚げ当時のDDT、下北沢タウンホールでの興行を少しだけ見ていたりもする。当時は、WWEがロックさまの全盛時代だったが、当時のDDTのエース、現在の大社長・高木三四郎のマイクパフォーマンスは、まさにそのロックさまの完コピだった。舞台裏の会話を映像化してストーリーラインに取り入れる。観客を楽しませることをまず第一に考える。初期から、アメリカ流のエンターテインメント・プロレスをDDTは志向していた。時がたち、その手法は磨きあげられ、今やDDTのオリジナル・スタイルといえそうなところまで昇華されてきた。前半の4試合が、その楽しさを目のあたりにさせてくれた。


 例えば、第1試合。謎のマスクマンHERO!とHARASHIMAがタッグを組んだ試合だが、少しでもDDTを知っている人なら、「あれ?」と思うはず。HERO!がHARASHIMAと組むなんて、物理的に「あり得ない」からである(なぜかは、論理的に考えましょうね)。だからだろうか、この新生HERO!には、少しばかり「黒い」ところがある。レフェリーやHARASHIMAが見ていないところで、サミング、金的など、ヒーローらしからぬこずるい反則を繰り返すのだ。ところが「昔からファンだったんですよ~」というGMの鶴見亜門はこれを見て見ぬふりで、露骨にえこ贔屓したマッチメークをしようとする。アイツ、本当は何者なの。一体、何のために出てきたの。そんな疑惑を楽しみながら、観客は試合を見るのである。

 

 まあ、良くできた設定とストーリーだ。年中「団体、ユニット抗争」「ベビーとヒールの対立」に明け暮れるどこかの(どことは言わないけど)団体には、少しでも参考にしてもらいたい。男色ディーノの「ボブ・ゲーム」も両国に向けてうまい煽りである。メジャー、インディーを見渡しても、一歩抜きんでたエンターテインメントとしての質の高さ、それこそがDDTの特徴であり、面白さ。比肩できるのは、「みちのくプロレス」の「宇宙大戦争」ぐらいであろう。


 近年では、試合そのものの方も充実してきて(初期はそうでもないこともあったのよ)、休憩後の2試合が、この日はまさしくそうだった。セミファイナル。ジュニアクラスでは、十分メジャー団体でも活躍できる4人のタッグマッチ。ワタクシとしては、パンクラス出身らしいバチバチさのある佐藤光留のファイトが好みだが、これは人それぞれ。4人が4人とも質が高く、まさにゼニのとれる試合だった。


 で、冒頭の好試合で締め。エンターテインメントからジュニア、本格的なプロレス、と過不足のないラインアップと言えるだろう。ただ、いい試合だっただけに少し「あえて」言わせてもらうのだけど、ちょっと、「一体何度――」の必殺技を出しすぎたんじゃないかな、という気もする。一撃で「必ず殺す」から「必殺」なのであって、「限界までやった試合」なのは分かるけど、少しサービス過多なのではないかなあ。


 むしろ、試合途中、ゴンゴンゴンとディック東郷に頭をぶつけていった石川の姿に、ワタクシは「ヘビー級の凄み」を感じていた。東郷の方も、再三見せるグラウンドテクニックに「プロレス者」の年季がにじみ出ていた。そういうシンプルな技で組み立てた試合の方が、プロレスの面白さを堪能できるんだけど、というのは「昭和のファン」の繰り言なのかな。全体的にきらびやかなエンターテインメント色が強いだけに、そういうゴツゴツした試合がひとつぐらい入ると、ものすごく映えると思うんだけどね。


 では、試合結果のコピペを。遅ればせながら文中敬称略、ってことで。 

  

▼オープニングマッチ KO-Dタッグ選手権試合 60分一本勝負
○ヤス・ウラノ、GENTARO(34代王者組) vs HERO!●、HARASHIMA
13:3 エビ固め
※34代王者組が三度目の防衛に成功

▼第二試合 ゴージャス松野復帰戦 30分一本勝負
MIKAMI、●ゴージャス松野 vs アントーニオ本多○、星誕期
10:37 卍固め

▼第三試合 ボブ・ゲーム 3rd Season 30分一本勝負
○男色ディーノ vs <ボビー特戦隊>趙雲子龍、ドラゴン・チェン、リョーマ・リー●

5:54 漢固め
※男色ドライバー

▼第四試合 鶴見亜門流ロイヤルランブル 無制限一本勝負
<入場順>
1.DJニラ 2.美月凛音 3.中澤マイケル 4.さくらえみ 5.松永智充 6.バラモンシュウ 7.平田一喜
8.タノムサク鳥羽 9.趙雲子龍 10.高尾蒼馬 11.大石真翔 12.石井慧介 13.SSマシン 14.バラモンケイ
<退場順>
1. ○さくら(4:15 ラ・マヒストラル)松永●
2. ○さくら(7:21 ラ・マヒストラル)美月●
3. ○さくら(8:10 ラ・マヒストラル)趙雲●
4. ○大石(10:30 逆さ押さえ込み)さくら●
5. ○マシン(12:24 OTR)平田●
6. ○マシン(12:46 OTR)鳥羽●
7.8. ○シュウ○ケイ(15:25 OTR)大石●マイケル●
9. (16:26 自殺OTR)ニラ●
10.11. ○高尾○マシン(16:26 OTR)シュウ●ケイ●
12. ○石井(17:32 OTR)マシン●
13. ○石井(19:43 OTR)高尾●
※石井が優勝

▽アイアンマンヘビーメタル級選手権試合
●高梨(842代王者)(13時32分 首固め)石井○
※石井が843代アイアンマンヘビーメタル級選手権王者に

▽アイアンマンヘビーメタル級選手権試合
●石井(843代王者)(13時34分 首固め)高梨○
※高梨が844代アイアンマンヘビーメタル級選手権王者に

▼セミファイナル 30分一本勝負
飯伏幸太、○KUDO vs 佐藤光留、佐々木大輔●
18:23 ジャックナイフ式エビ固め

▼メインイベント KO-D無差別級選手権試合 60分一本勝負
●ディック東郷(35代王者) vs 石川修司(挑戦者)○
31:18 体固め
※クロスアーム式スプラッシュマウンテン。35代王者が三度目の防衛に失敗。
 石川が第36代無差別級王者として認定される。