アイスリボン GOLDEN RIBBON 2011 by チャン・マメルトン | 熱闘!後楽園

アイスリボン GOLDEN RIBBON 2011 by チャン・マメルトン


「子供の日」に子供がリングに上がるアイスリボン。北側をクローズしスクリーンと入場通路を設けた仕様で、残った三面の客入りは見た目でおよそ8割。しかし、既に固定客を掴んでいるのだろう。実数発表で749人ながら、会場熱はそれ以上に感じた。


ところで、まず書いておきたいのは、私は元々アイスリボン否定派である。昭和50年代前半に日本中を熱狂させた「ビューティーペア」でプロレスの“産湯”を浸かって以降、クラッシュギャルズの時代も、90年代前半の北斗晶狂い咲きに象徴される対抗戦時代もリアルタイムで観てきた者とすれば、読み聞き伝え聞く情報を精査した限り、それはおのずと「女子プロレスに非ず」という結論に行き着き、結果見る必要もないとして興味の対象外にあった。それこそこの企画に参加しなければ、一生観ることはなかっただろう。よって今回、個人的な興味としては自身の認識を一つでも二つでも改めるような内容があるのか、どうなのか?


12時の試合開始。暗転になるやオープニングVTRが場内に流される。この日の各試合に至るストーリーラインを紹介するものだ。VTRの作り自体分かりやすいのだが、ここでまず最初の違和感を覚える。使われるBGMが、聴き慣れた闘いへの期待を煽るロック調あるいは勇壮な音楽ではなく、萌え系アニメに使われるようなそれで、色使いも赤やオレンジではなくパステル系のスカイブルーが基調だ。団体のシンボルカラーでもあるが、この時点で既存のプロレスとはやはり一線を隔している。そして場内が明転すると、さくらえみを中心に選手全員がリング中央にぎゅっと集まった状態でのご挨拶。ここでの言葉には違和感を超えて、嫌悪感しかなかった。「見るよりする方が楽しい女子プロレス。小学生でも出来る女子プロレス」。ならば、さくらえみが主張する女子プロレスとやらを、その試合で見せてもらおう。

試合は全11試合。そのうち8試合が、さくら曰く「お祭り感を出したい」という意図で行われた“ゴーゴーゴールデンミックスドタッグ”1dayトーナメント戦で、決勝戦の10分1本勝負以外はすべて5分1本勝負。個々の試合感想はいちいち書かないが、全体としてまず入退場で時間がかかり過ぎで長い。正直飽きた。またタッグを組む男性レスラーが、下手に怪我をさせてはいけないという思いからか、まるで保護者のように労わりながら試合「ごっこ」に付き合っていた。その中で魅せたのは安藤あいかに対する菊タローの“お約束”セクハラ攻撃と、小学生のくるみに対して澤宗紀が放ったシャイニング・ウィザードだろう。もちろんヒットはさせていないものの、当然受ける側に衝撃はあるはずだ。「やり過ぎくらいがちょうどいい」が澤のキャッチフレーズだが、今回に関しては「大人気ない」と言うべきか…。その澤と組んでいたのが、最近他団体にも上がるようになった真琴。確かに体は大きい方だが、運動神経のなさがすべてだろう。


後半はタイトルマッチが3つ。

JWP認定ジュニア&POP選手権、王者・花月vs挑戦者・都宮ちい。花月は見るからに里村明衣子の弟子という体つき。どう見ても現状で小さな都宮が勝てるわけもなかったが、向かっていく姿勢は十分に見せてくれた。

インターナショナルリボンタッグ選手権 王者・さくらえみ、Ray vs 挑戦者・志田光、朱里。この試合が一番プロレスの試合だった。挑戦者チームの志田は将来的な可能性を感じさせるようなファイトだったし、朱里も1月のsmashで観た時よりキックが良くなっていた。とは言え、やはりベテラン・さくらの存在が大きい。元々、豊田真奈美や堀田由美子たちがいた全女でも試合巧者だったからプロレスは出来る。そのさくらが、とにかく相手の技を受け切るのである。やはりプロレスは相手の技を受けられる体があってこその競技。そうでないと相手も思い切って技を出せない。そうやってプロレスの試合は成立し、その試合をファンは長い間見続け興奮してきた。この試合自体、お世辞にも良い試合と言えるレベルではないが、それでも“オアシス”のように感じたのは、その他の試合は言わずもがなである。

メインはICE×60選手権 王者・藤本つかさ vs 挑戦者・つくし。藤本は、この中では出来る部類に入るんだろうし、つくしも“中学生にしては”頑張っていると言えるだろう。でも、メインなんだよなぁ…。


午後3時、全11試合が終わった。まず思ったことは、もう少し短く出来ないのかということと、この会場の客は何を観て喜んでいるのかということ。可能性がありそうな選手もいたにはいたが、アイスリボンという団体に対する自身の思いは観た後も何ら変化はなかった。自分にとってこれは女子プロレスではない。体を作ることに時間を割くのではなく、プロレスの「所作」を覚えるのに時間を割いた者たちによる、ストーリーと映像・音楽を加味した「プロレスごっこ」ショーであり、そこにプロレスの本来はない。それを「女子プロレス」と言い切るさくらえみの図々しさ、ふてぶてしさには恐れ入る。

ただ、その試合を観に749人が足を運び、その多くが喜んでいた事実は否定できない。彼らにとってこれがプロレスだとかどうかはどうでもよく、目の前で展開される世界観を自身が楽しめればそれでいいという事か? プロレスファンというより、アキバ文化をも受容できる人々がお客の主層なのか? 自分とは異次元のアスリートではなく、自分が助けてあげられるような身近な存在感を求めているのか? だとすれば、さくらが選手たちの体を必要以上に大きくさせずに女の子らしさを維持させ、また技ではなく「所作」を体得させる程度でリングに上げているのも納得はいく。


それにしても「プロレス=世間との闘い」という図式を洗脳された昭和からのプロレスファンにとって、これを本気で女子プロレスだと思って楽しんでいる人がいるなら、その感性はどうしても理解できない。そして、アイスリボンが世間から女子プロレスとして認識されたとしたら、こんな屈辱的なことはないと思った初観戦であった。もちろん「これはこれ、それはそれ」で割り切って観ても良いとは思うんですけどね…。




『ゴールデンリボン2011』観衆749人


◆第1試合 『ゴー!ゴー!ゴールデンミックスドタッグトーナメント 1回戦』5分1本勝負
安藤あいか 矢郷良明○ vs りほ× 菊タロー
(時間切れ引き分け→じゃんけん)
※安藤あいか&矢郷良明、準決勝進出

◆第2試合 『ゴー!ゴー!ゴールデンミックスドタッグトーナメント 1回戦』5分1本勝負
みなみ飛香× 大家健 vs 新田猫子 大石真翔○
(2分18秒 横十字固め)
※新田猫子&大石真翔、準決勝進出

◆第3試合 『ゴー!ゴー!ゴールデンミックスドタッグトーナメント 1回戦』5分1本勝負
たま子× 怨霊 vs くるみ 入江茂弘○
(時間切れ引き分け→じゃんけん)
※くるみ&入江茂弘、準決勝進出

◆第4試合 『ゴー!ゴー!ゴールデンミックスドタッグトーナメント 1回戦』5分1本勝負
真琴○ 澤宗紀 vs 内藤メアリ× THE101
(3分32秒 W・W・ニー→体固め)
※真琴&澤宗紀、準決勝進出

◆第5試合 『Shall we dance?』タッグマッチ 15分1本勝負
松本都 成宮真希○ vs 星ハム子× 宮城もち
(5分41秒 丸め込む→エビ固め)

◆第6試合 『ゴー!ゴー!ゴールデンミックスドタッグトーナメント 準決勝』5分1本勝負
安藤あいか 矢郷良明× vs 新田猫子○ 大石真翔
(時間切れ引き分け→じゃんけん)
※新田猫子&大石真翔、決勝進出

◆第7試合 『ゴー!ゴー!ゴールデンミックスドタッグトーナメント 準決勝』5分1本勝負
くるみ× 入江茂弘 vs 真琴 澤宗紀○
(2分43秒 やりすぎボーイ)
※真琴&澤宗紀、決勝進出

◆第8試合 JWP認定ジュニア&POP選手権 30分1本勝負
【王者】花月○ vs 【挑戦者】 都宮ちい×
(9分32秒 脇固め)
※第20代JWP認定ジュニア王者並びに第10代POP王者2度目の防衛に成功

◆第9試合 『ゴー!ゴー!ゴールデンミックスドタッグトーナメント 決勝』10分1本勝負
新田猫子○ 大石真翔 vs 真琴× 澤宗紀
(8分26秒 カサドーニャ)
※トーナメント優勝は、新田猫子&大石真翔の、にゃん'sクラブ

◆第10試合 インターナショナルリボンタッグ選手権試合 20分1本勝負
【王者】さくらえみ○ Ray vs 【挑戦者】志田光× 朱里
(17分26秒 ラ・マヒストラル )
※第15代王者3度目の防衛に成功。

◆第11試合 ICE×60選手権試合 20分1本勝負
【王者】藤本つかさ○ vs 【挑戦者】つくし×
(13分40秒 ビーナスシュート→片エビ固め)
※第11代王者3度目の防衛に成功。