5.15 全日本プロレス「RISE UP TOUR」開幕戦 by チャン・マメルトン | 熱闘!後楽園

5.15 全日本プロレス「RISE UP TOUR」開幕戦 by チャン・マメルトン

まずはアップが遅くなったことをお詫びしたい。参加者みなプロのプロレス記者ではないゆえ、ご容赦を…。

さて、どのくらいぶりだろうか、全日本プロレスの興行に足を運ぶのは? 確かジャイアント馬場さんの「引退」記念興行として東京ドームで行われた時以来だから、丸12年ぶりだ。

このドーム大会以降、全日本は分裂してノアが旗揚げ。一方、当時盟主だった新日本プロレスはアントニオ猪木に振り回され続け、そこから武藤敬司が電撃離脱。まさかの全日本プロレスの社長に就任し、後に一興行全体で試合を構成する「パッケージ・プロレス」を展開することで、一時は危機的状態だった団体を何とか存続させ続けている。武藤の新日本離脱に歩調を合わせて全日本に闘いの場を移した小島・カシンの姿は既になく、またシリーズ毎に“パッチワーク”の如く継ぎ接ぎでしのいでいた参加選手も、いつの間にか武藤全日本で生まれ育った選手たちが充実してきた。つまり、事実上の初観戦。名前は同じ全日本プロレスでも、目の前で展開される光景はほぼ初物づくしとなる。

「RISE UP TOUR」開幕戦。12時試合開始の少し前に会場に着き、当日券で入場券を買う。既に最も安いB指定:4000円席は完売で、残る席種は特別席の7000円とA指定の5000円。迷うことなくA指定を買って席に座る。ところがこの席が後ろから4列目。一列後ろからはB指定席。やはり前売りで押さえれば良かった。かなり悔しさが残る。

客入りは北・東・西は満席で、南は8割程度。北側真ん中最後列を潰して、スクリーンを設置。公式発表は1900人の満員。どの程度の利益が出たのか推計してみる。出場選手の多さを考えればある程度の収益が必要なんだろうが、果たしてそれに見合う試合やタレントを見せてくれるのか?


12時ちょうどに音楽が鳴り、黄色い派手なタイツを履いたマッチョが入場。大和タケシ、初めて見る。ご挨拶の後、各方向の客席毎に「ゼンニッポン・イヤァー」の掛け声。割と多くの観客が呼応している。“新生全日本”のファンは、ちゃんと定着しているようだ。

その途中でまたも音楽が鳴り、ブードゥー・マーダーズ(VM)の入場。メンバー全員でリング上を占拠し、総帥:TARUがマイクアピール。とは言え、特別派手なアジテーションを披露するわけでもなく、自軍のメンバー紹介とベルトのあるなし、ヘビーかジュニアかなど、初心者にもとてもわかり易い選手紹介。パッケージの中の、いわゆる「目次」なんだろう。このやり取りを見ながら、megane1964さんが5.4 DDTの項で書いていた『「団体、ユニット抗争」「ベビーとヒールの対立」に明け暮れるどこかの(どことは言わないけど)団体』は、ここではないかと思ったりする。でも、TARUってヒール役なんだけど、どうみても“良い人”が滲み出ているんだよなぁ。マイクでのしゃべりは、完全に話が上手い人の良い関西のおっちゃんである。出入りの激しい全日本マットにおいて、レギュラーの座を手離さないのは、このキャラゆえだろう。

次に当日のカード発表と各試合の見所を映像で見せてくれたのだが、やはり名は全日本でも隔世の感。こういう演出を許してもらえなかったのも、故三沢光晴が当時の全日本を離脱した理由のひとつになっているが、それでもここまで必要なのかな?という印象。


以下、各試合の簡単な印象を。

第一試合、登場したのはいきなり曙と浜亮太。何の説明も必要なく、ただデカい。これだけで見る価値がある。一方「王道トリオ」と紹介された対戦チームは、大森・太陽ケア・渕。相変わらず渕は白かった。つかみとしては十分だ。曙・浜はいるだけで説得力があり、渕も悪役商会時代の良い味を存分に残している。この辺に馬場さん時代の幻想を抱くのは、やはり全日本という名に由来しているのか。この中においてBUSHIと大森は余計だったと思う。hitomaro-exさんではないが、大森が気合を入れるほど、空回り感と寂しさを感じてしまうのはなぜなんだろう?

第二試合はジュニアタッグ。一転、反対側に来たようなマッチメイクだ。しかし、この試合が始まったのがすでに12時45分。最近の興行にしては長く、故にだるい。

第三試合は、VM・TARU組と鈴木みのる組。ヒールと世界一性格の悪い男と言われる、二人の盛り上げ上手による賑やかしタッグマッチ。TARUはすかさず観戦していた宮根誠司氏に突っかかり、負けじと宮根氏も応戦。勝負論はなかったものの、十分に楽しめた試合。

第四試合は、アジアタッグを巡る全日本対大日本の対抗戦。ワタクシ、最近のメインリングは大日本なので、他団体に出場した関本・岡林の試合内容や、客の反応などに大いに興味があった。見れば、客は二人に対し熱烈な声援やブーイングを送ることもなく、この点は4.28の大日本のリングにあがった征矢・浜組に対するものと明らかな温度差を感じた。大日本では「ストロングBJ」という看板でも、全日本では若手の範疇という価値基準のズレ故なのか? 
それ以上にアウェーのリングだというのを実感したのは、関本が新人・中之上の技をきちんと受けていることだ。大日本のリングであれば、そんなことはまずない。大介、ちゃんと仕事しているじゃないか! 試合は意地と意地、肉体と肉体のぶつけ合い。プロレスが持つすごさ、わかりやすさを最も表現する内容だった。個人的にはこの日のベストバウト。


休憩を挟んだ3試合は、6.21両国大会へのプロローグ。そのストーリーの始まりである。簡単に言えば、VMとKENSO・そしてグレートムタによる「ファンタジープロレス」。カズ・ハヤシとKAIによるJr.ヘビー級王座挑戦権をかけた、ジュニアに似つかわしくないゴツゴツした試合。そして、チャンピオン・カーニバル優勝者・永田裕志と三冠王者・諏訪魔による三冠ベルトを巡る闘いに、全日本と新日本の対抗戦要素を入れたタッグマッチ。

ここで最も印象に残ったのは、三冠王者・諏訪魔のふがいなさ。と言うよりは役不足感か。彼が団体の看板で良いのだろうかという物足りなさである。端的に表せば、弱い、説得力や存在感=信頼感がない、客の想像を超える粘りやファイトがない。比するなら「善戦マン」と言われた頃のジャンボ鶴田のほうが、遥かに良い。ここに今の全日本の弱点があると感じた。つまり数は揃っても、本当に託せる人材が育っていないのである。それを無理やり三冠王者に仕立て上げているのは、見ていてもねぇ。

一方で、永田・中西は相変わらず元気だ。主戦場・新日本は棚橋・中邑・後藤など、30代前半の選手をメインに展開。そこからあぶれて全日本のリングに上がる永田・中西。野球評論家・野村克也氏が監督を務めていた当時“野村再生工場”と言われたが、彼らにとって全日本が再生工場のようだ。


この文章同様、興行もとても長くなり、終了したのは午後3時10分。一興行だけ見て「パッケージ・プロレス」が何たるかわかったとは思わないが、各試合に意味を持たせ、バリエーションを持ってマッチメークし、各選手が役割を全うすることは分かった。でも、やはり最後にどれだけ満足させるのかが、一番大切なことではないだろうか? 諏訪魔の責任は大きい。その意味で「画竜点睛を欠」いた印象が残った。
両国へと続く第一歩であることは分かる。しかし、次の一歩を期待させられなければ、その歩みを先に進めようとは思えない。この日の興行を見たどれだけの人が、果たして両国まで歩を進めようと思ったのだろうか? 


それ以前に、これだけの選手数は必要ないから、その分もう少し入場券を安くしてくれないものかねぇ。選手構成がシンプルになれば、もっと面白くなると思うんだが…




試合結果はこちら。
http://www.all-japan.co.jp/schedule/tour03.php?taikai_id=140