5.23 ZERO1「レスラーズ」 by チャン・マメルトン | 熱闘!後楽園

5.23 ZERO1「レスラーズ」 by チャン・マメルトン

うーん、もったいない…。これがZERO1を観戦した後の感想である。しかも、今回ばかりではなく、毎回だ。

ZERO1新シリーズ「レスラーズ」。南側階段席を全部潰したハーフサイズでほぼ満席。黒い布で覆い照明を消した南側客席に閑散とした感じはない。むしろ客が密集するせいか、リング上の闘いへ意識が集中するようだ。会場使用料も確か6割程度になるので団体にとっても良い。が、やはりフルサイズを満員にできない状況は、何とかしないといけないだろう。かの闘魂三銃士・橋本真也が立ち上げ、一時は準メジャーと称され、また約10年ぶりとは言え先に両国国技館を開催した団体ならば。

都合により第一試合は観られず。第二試合から観戦する。今大会、カードを見るとテーマは「若手の底上げ」のようだ。どの試合にも団体が期待する若手を組み入れ、彼らよりキャリアも経験も上の選手と対戦させることで、さらなる成長を促している。当然、団体とすれば試合が“できる”選手が増えれば、選手層も厚みを増し、試合のバリエーションも増える。何より新たな魅力を持った選手が台頭すれば、ファンに、業界に、そして世間に強気に打って出ることが出来る。プロレスが厳しい時期に入って以降、これはZERO1に限らずどの団体にとっても喫緊の課題だが、見る限りZERO1は、実は若手不足でも選手不足でもない。

まず、どの選手もきちんと体を作っている。どインディー団体の中には、プロレスラーを名乗るには恥ずかしいくらい、見ている者が「これで技を受けられるのか?」と心配になるような体つきのレスラーがいるが、ZERO1には1人もいない。しかも、武藤全日本のような均整がとれた逆三角形型ボディビルダーのような体ではなく、腹筋もちゃんとついた太い、いわゆるレスラーの体型をした選手ばかりだ。またグラウンド、ロープワークなど、レスリングの基本的な動きも体得している。若手に限らず、あとは生かし方次第なんだが。まぁ、それは試合の中で確認していこう。


第二試合、大谷晋二郎・横山佳和vs崔領二・佐藤耕平。団体社長の大谷と組んで、エースと目される崔・耕平の二人と対戦とは、横山に対する団体の期待の高さが伺える。試合だが、崔、耕平の強烈なキックを真正面から何発も食らい、ピンチになってもパートナー・大谷が助けに入ることも少なく、まさに「かわいがり」と言えたが、横山は随分と頑張っていたように思う。ただ、いかんせん技がない。出した技はスピアー、エルボー、張り手くらい。これでは「よく頑張りました」という評価しか得られない。キャリアから考えれば崔や耕平に勝つことはほぼ無理だろうが、せめて相手を追い詰めるまでいかなくても、一瞬でも怯ませるくらいの技が欲しい。客が見ているのは、よく頑張りましたをちょっとでも、一瞬でも超えてくれる良い意味での裏切りである。その点で横山に関しては、まぁそうだろうなぁという程度の印象だったが、一方でまたしても良くない意味で裏切られた感があるのは崔と耕平だ。

ZERO1という団体をもったいないと思えてしまう大きな理由の一つが彼らにある。全団体を見回しても、彼らの素材は良い方だと言える。体があって、キックも重く、相手の技も受けられる。でも、なぜもう少し客の想像を超えるような試合が出来ないのか? 納得させられる技を持っていないのか?

彼らと同じくらいのキャリアを持つ、大日本プロレスの関本大介を例に比較すればわかり易い。この1年以上、関本はホームの大日本に加え、ZERO1、DDT、全日本と各団体に出場し、どの団体でもベルトを獲るなどメイン級の活躍をしている。去年の東スポ選定プロレス大賞はノアの杉浦貴だったが、megane1964さんなどは関本だと声高に言い続けている。関本が活躍する、言い方を代えればどの団体でも関本に任せられるのは、彼がどの団体のお客をも納得させられるからだ。文句のない体、エグイ攻撃、チョップ一発でどよめかせられる破壊力、そしてぶっこ抜きジャーマンの圧倒的な説得力。誰もが知っているのに、何度見ても驚かされるというのは、やはり良いレスラーなのである。我々が崔や耕平に期待するのは、このレベルである。

ところが見た限り、この期待に応える試合にお目にかかったことがない。にもかかわらず団体の象徴であるベルトを巻かせ、トップ争いに加わらせている。これはマッチメーカーの失策だと言いたい。関本が何故あれだけの試合をするのか? 推測の域を出ないが、ホームの大日本では関本がどんなに素晴らしいファイトでお客を魅了したとしても、ほぼ例外なくメインにはデスマッチが組まれる。だとすれば、さらに凄い試合をしてお客を持っていこうというモチベーションがあっても不思議ではない。実際、この1年間のストロングBJの充実振りは目覚しい。一方で崔や耕平にはこのような団体内の競争がない。この差が彼ら二人の伸び悩みとなり、ついてはZERO1活性化に繋がっていかない理由だと思っている。

この日、他にもZERO1らしい極めてチープなアングルで試合が作られていたが、たとえそれがZERO1の売りのひとつとは言え、圧倒的な存在感を持つレスラーと試合内容があれば、そんな子供じみたアングルでストーリーを展開する必要はなくなるし、客の支持もより得られるはずだ。「破壊なくして創造なし」とは創設者の橋本真也が旗揚げ戦で叫んだ言葉だが、さしずめ今なら「崔と耕平の破壊なくして、ZERO1の創造なし」。マッチメーカーと大谷社長の決断に期待したい。でも、いつになったら覚醒するのだろうかなぁ?


あぁ、結局全試合のレポートをするつもりが、崔と耕平、さらにはZERO1に対して日頃思っていたことを書いただけで終わってしまった。まぁ休憩前の橋本大地は良く頑張っているし(でも大地に背負わせすぎ)、その後の試合はことさら書くこともあまりないし…。

でも、ZERO1ってキライになれないんだよなぁ。万馬券のように「いつかは当たるんじゃないか」というわずかの期待で、また次回も観に行くんだろうなぁ。



他の試合は一緒に観戦した新メンバー・鈴々舎馬るこさんのブログで。
http://reireisyamaruko.blog.players.tv/article/45447863.html


試合結果はこちら。ZERO1のホームページで
http://zero1-cardresult.blog.players.tv/article/45144368.html