フリーダムズ後楽園大会 by megane1964 | 熱闘!後楽園

フリーダムズ後楽園大会 by megane1964


熱闘!後楽園-image  葛西純は苦労人、なのだそうである。


 なのだそうだ、というのは、別にワタクシは葛西選手と知り合いでもなんでもないので、雑誌やらwikiやらで仕入れた知識だから書くのだが。


 まあ、ゼロワンに行って猿キャラをやらされたり、過酷なデスマッチの結果、手術をすることになったり……そもそもレスラーとしてはあまり体が大きくないこともあって、様々な試行錯誤を重ねたあげく、今のスタイルになったそうなのである。


 そうである、というのは、これもまた伝聞による知識だからだが、そういう葛西の過去はファンなら大体分かっている。わかっているから、七転び八起き、その雑草のようなたくましさを持ったファイトに、決して自分自身も順風満帆な人生を送っていない人々は、強く惹かれていく。葛西は現在、デスマッチのカリスマ、のひとりである。



熱闘!後楽園-image  佐々木貴が高校時代、生徒会長だったそうだ。


 そうだ、というのは…まあ、ご想像の通りだが、佐々木のファイトは、デスマッチをやっていても、まさに生徒会長そのもの。寡黙で実直で、ウソのないレスリングをいつもしているのである。


 だれもが自然と頼りにしてしまうような包容力と統率力がその背中に現れている。実際、大日本マットでは、そういう「兄貴分」的存在であるようで、なぜようで、というかというと……クドイので以下略とするが、とにかくレスラーや関係者の間、それにもちろんコアなファンの間で、貴に対する信頼度はとても高いのである。


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 つまり、フリーダムズという団体は、ピープルズチャンピオン的なカリスマと、生徒会長的なアニキが中心になっているわけだ。となると、やっぱり観客が熱狂するのはカリスマの試合なわけで、本日全6試合(詳しい内容は、こちら=http://freedoms.ne07.jp/ =を見てね)の興行で、セミファイナルに登場した葛西は、本当に会場一体となった声援を浴びていた。


 対戦したのは、「涙のカリスマ」大仁田厚とその仲間。つまり新旧カリスマの対決だったのである。


 まあ、大仁田さんも運が悪いというかなんというか。ここは葛西のホームだからねえ。何をやってもブーイングを食らってしまう。試合を終えて、得意の「オオニタ劇場」に持っていこうとしても、「オイ! オイ!」の段階で、「ブー」の嵐だから。吹本と竹田を「助さん、格さん」に置いた葛西が「電流爆破には命を張れても、蛍光灯の痛さには耐えられないのかよ」と挑発すると、会場は大喝采。オオニタ先生、さぞかしストレスがたまっただろうなあ。



熱闘!後楽園-image  試合の方は、相変わらず、ゴングが鳴るか鳴らないかのうちに、大仁田一味が葛西軍を襲撃し、華々しく場外乱闘を繰り広げる、……まあ、いつものパターン。


 それにしても感心するのは、矢口、保坂の試合運びの上手さ。ハードコアらしいスリリングでスピーディーな展開を作っておいて、最後のオイシイところは、ボス・大仁田に譲り渡す。ちゃんと本日も、お二人は仕事をしましたですよ。最後は大仁田が3カウントを取ったしね。ホント、いつみてもほれぼれするような職人技である。


 まあ、葛西サイドも竹田、というデスマッチ・キッドがちゃんといたからね。かみ合って、非常に盛り上がった試合になったのだった。


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 これだけセミが盛り上がると、メーンはやりにくいだろうな、と思ったんだけど、そこは「生徒会長」。実に堂々と正攻法で締めてみせた。


 本日のメーンは、キング・オブ・フリーダム・ワールド・チャンピオンシップ決定戦。トーナメントを勝ち上がったのは、貴と高岩竜一である。


 いや、これが実にマトモなプロレスだった。ヒジの打ち合い、ラリアットの打ち合いから始まって、お互いのパワーを誇示し、受けの強さをアピールする、実に日本的な「意地」と「張り」のプロレスだったのである。


 どうしてもデスマッチのイメージが強い貴なんだけど、この試合、凶器も蛍光灯も、フツーの意味の反則(つまり急所蹴りとか、ね)もすべてなし。新日本などで鳴らした高岩と正々堂々と渡り合った。


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 高岩の雪崩式ブレンバスター、デスバレーボムをきっちり受けて、得意のみちのくドライバーⅡをお見舞いする。カウント2・9で肩を上げる攻防が、二度三度と続いていく。


 いやあ、ちゃんとしたレスリングだってこんな風にできる。普段やっているデスマッチは、そのうえで、自分の生き方を見せるためにやっているんだ--。


 そんな貴の心の声、というかプライドが前面に押し出されたような試合だった。最後は、サソリ固めでタップを奪い、「初代王者」になったわけだけど、まあ、そんな結果はともかくとしても、感心したね、ワタクシは。


 団体の代表者ってのは、やはり時に応じて、「正統派」のレスリングを見せなければいけないことがあるわけですよ。たとえ、それが自分の普段のファイトスタイルではないとしても。「正統派」をきちんと見せることが、団体の格式にもなるし、ある種の信用にもなる。WNCのTAJIRIなんかも、あえてそういう試合をしているよね。同じことを、しっかりと今回、貴は見せてくれた。「生徒会長」らしい試合だったねえ。


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 ちなみに、本日の目玉は、もうひとつあって、グレート小鹿大先生のデビュー50周年記念試合。こちらは、小鹿&TAJIRI&藤田ミノルに、謎のジジイキャラ、がばいじいちゃんが加わって、バラモン兄弟+カラテバラモン、キャプテン・アブノーマルと試合を行った。


 まあ、これはバラモンだからねえ、バラモンの試合になったよねえ。小鹿センセイは、ボーリングの玉のエジキになったり、顔面ウォッシュみたいな攻撃をしたりと、72歳の年齢を感じさせない獅子奮迅の活躍で、最後は4人をまとめてフォール。ジ・ウィンガーから試合後に花束をもらっておりました。このほかの3試合もそれぞれに見どころ、面白さはあったんだけど、長くなるので割愛。ゴメンナサイ。



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 カリスマ・葛西と生徒会長・貴が中心のフリーダムは、まあ、この二人が中心だから、どうしても、「大日本プロレスの別動隊」と見られがちだし、実際、出場選手も相当かぶっている。だけどね、大日本がどんどんスケールアップして、メジャーに近づいていく今、なんというかとても居心地のいい「インディー感覚」を残してくれているわけですよ、こっちの興行は。


 大日本がデカくなるのは当然だし、そうなってほしいけど、デカくなるとどうしても切り離さざるを得ない「遊び」や「趣味」の部分はある、やっぱり。それをこの団体、フリーダムズがフォローしてくれているような気がする。大日本のスピンオフ的な気軽な楽しさが、ここのマットにはある。


 だから、ファンは限られるでしょう。後楽園ホールが超満員になる、ってことはないかもしれない。でもね、年に何回かはこういう大会は必要なんだ、とワタクシは思います。大日本のファンの、インディーズプロレスのファンの、ひそかな楽しみの場として、これからも続いて欲しい興行なのだと、ワタクシ的には思った本日の興行なのでした。