【連載⑯】国立ランブリング 「逃げる二月」小山伸二 | 国立情報WEBマガジン くにたちハッピースポット

国立情報WEBマガジン くにたちハッピースポット

東京都国立市のハッピー情報をお届けします♪

国立ランブリング 「逃げる二月」小山伸二

【連載】国立ランブリング



逃げる二月  小山伸二


昼酒

一合だけでゆるいほろ酔いに
ここで打ち止め

それが肝要

それが寛容への道筋

理屈ではどうにもならないこともあるのよ

小学生の頃にそんなことを教えてくれた

近所の綺麗なお姉さんを思い出す

きっといまごろ

綺麗なおばあさんになっているお姉さん

この二十一世紀の二月を

どんな気持ちで

過ごしているのかな



風呂上がりにね

濡れたタオルをパンパンと音を立てて

鳴らすのをとても嫌がっていたひいおばあさま

濡れたタオルをパンパンと水切りする

その音が

お侍さんがお百姓さんの首を斬り落としてしまった

その音にとってもよく似ていたんだって

と、縮んだ首をさらにすくめて

おっしゃっていたわ、ひいおばあさまが

そんなことまで

教えてくれた

近所の綺麗なお姉さんに

二十一世紀の二月のニュースは

届いているのかな



ニュースのなかの教室は

荒れたとまでは言えないけれども

寒い二月

校庭の砂場は冷たく乾き

きっとざわつきのなかで

廊下を走って逃げる子供みたいで

教室のなかでは歴史の教師が

声を振り絞るように叫んでいるはずだった

いまはわからなくてもいいけど

いつかきっと

この本を読んでみて下さい

青ざめた岩波新書

E.H.カーというひとの書いた『歴史とはなにか』

そんなことまで思い出される二月が

この町のブランコ通りの蕎麦屋から

駅のほうに向かって逃げていったんだよ



」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」



国立ランブリング「創作ノオト」

いろんなことが詰まっていた二月。

あっという間に逃げて行ってしまった二月。

遠い昔に、遠い町に住んでいた頃の近所のお姉さんに

登場してもらいながら、この町から逃げて行った二月

を書いてみました。




本 バックナンバー
国立情報WEBマガジン くにたちハッピースポット

<プロフィール>

小山伸二

国立在住。詩人。福間塾に参加。

最新詩集『きみの砦から世界は』(思潮社・刊)

http://www.shichosha.co.jp/newrelease/item_1189.html

https://note.mu/shinji_oyama



クラウドナイン

小山伸二と清水美穂子による詩と写真のコラボユニット。

https://www.facebook.com/cloudnine.sm








ハッピーマーケット ミモザ市

【同時開催】
くにたちハッピーマーケット2015 ミモザ市
2015/
3/7(土)・8(日)11~17時
コミュニティスペース旭通り
https://www.facebook.com/kunitachi.happy.market


詳細・お申し込み
https://happyspot.jp/event/form.aspx?no=302&month=201503


国立情報WEBマガジン くにたちハッピースポット 
https://happyspot.jp/