思い出せない怖さ | お母ちゃん!認知症の症状がでてますよっ!

お母ちゃん!認知症の症状がでてますよっ!

お母ちゃん70歳。
先日、「アルツハイマーですね」と診断されました。
そのお母ちゃんの様子をしっかりと記録していこうと思います。

朝、いつものようにお気に入りの音楽で目覚めた。

今朝は予定があるから、1時間早く起きたんだった。
あ〜、昨夜はワイン飲み過ぎて、少しまだ良いが残ってるなぁ。
酔っ払って炒め物作って、食べ終わったお皿、洗わずに寝ちゃってる。
せっかくお片付けクセを習慣化しようとしてるのになぁ。ちゃんと洗わないと…。

あれ?
昨日、何作って食べたんだっけ?


思い出せない。
ええと、炒め物を作ったのよ。
揚げ豆腐と、もうひとつ……。

何だっけ?

あれ?

どうして?

出てこない。

食べたよ、食べた。

ええと…お野菜だった。

そう、お野菜。

お野菜?

玉ねぎ買ってきてたから…

減ってない。

あ、じゃあニンジンかな?しりしりにしようとしてたから…。

違う。残ってる。

え、何?

焦る、焦る、焦る。

どうして思い出せない?
確かにワインしこたま飲んだ。
ボトル1本ひとりで飲んだ。
炒め物作ったことも覚えてる。
でも…食材を思い出せないなんて。
どうして?
野菜だよね?

焦る、焦る、焦る、焦る。

ゴミ箱を覗く。

野菜の切れ端も、袋も無い。

どうして?どうして覚えてないの、私。

怖い、怖い、怖い。

冷蔵庫の扉を開ける。





あった!
半分残った牛肉!

酔った頭で
『揚げ豆腐と牛肉を炒めるのって、Wタンパク質だなぁ。料理としてどうよ』って思いながら炒めたんだった。

思い出した時、とても安心した。

良かった〜と、心から思った。



そして、コレがお母ちゃんの恐怖だったんだと、初めて体感した。



今回は酔ってる最中に、脳が寝てる状態の時に
ぼんやりしながら料理を作ったので、
お肉のことが記憶に残らなかったんだと思う。
お肉は切って無くて、包んであるラップを外して
そのまま投入しただけだったから印象が薄かった。
だから思い出せなかったのだ。

モノの事が記憶に無い。
けれども作った事は覚えてる。
だからこそ怖かった。
本当にポッカリと白塗りされたような感覚。
思い出しながらも、脳の中に答えがない事を心が知っていた。
恐怖だった。


普通の物忘れなら、脳の引き出しをどこか開ければ出て来るから、動いたりしながら頭の中を探す。
けれども今回は、脳の中を探せないのだ。
自分の行動の事なのに、頭の中には無いとわかっているから探せなかったのだ。


アルツハイマーのお母ちゃんはすぐに真っ白部分が出来て、不安だったんだろう。
こちらが答えて思い出せると、子供のように笑顔になって
『あ〜、思い出して良かった〜』と笑っていたのだ。



『思い出せんでも良かよ〜』

今まで私は、何度もお母ちゃんにそう言ってしまってた。
でも、自分で体験すると、それは怖くて仕方がないのだ。
少しでも情報を掴んで、思い出したいのだ。


ごめんね、お母ちゃん。
今度会った時には、一緒になって記憶探しをするからね。