今朝は予定があるから、1時間早く起きたんだった。
あ〜、昨夜はワイン飲み過ぎて、少しまだ良いが残ってるなぁ。
酔っ払って炒め物作って、食べ終わったお皿、洗わずに寝ちゃってる。
せっかくお片付けクセを習慣化しようとしてるのになぁ。ちゃんと洗わないと…。
あれ?
昨日、何作って食べたんだっけ?
思い出せない。
ええと、炒め物を作ったのよ。
揚げ豆腐と、もうひとつ……。
何だっけ?
あれ?
どうして?
出てこない。
食べたよ、食べた。
ええと…お野菜だった。
そう、お野菜。
お野菜?
玉ねぎ買ってきてたから…
減ってない。
あ、じゃあニンジンかな?しりしりにしようとしてたから…。
違う。残ってる。
え、何?
焦る、焦る、焦る。
どうして思い出せない?
確かにワインしこたま飲んだ。
ボトル1本ひとりで飲んだ。
炒め物作ったことも覚えてる。
でも…食材を思い出せないなんて。
どうして?
野菜だよね?
焦る、焦る、焦る、焦る。
ゴミ箱を覗く。
野菜の切れ端も、袋も無い。
どうして?どうして覚えてないの、私。
怖い、怖い、怖い。
冷蔵庫の扉を開ける。
あった!
半分残った牛肉!
酔った頭で
『揚げ豆腐と牛肉を炒めるのって、Wタンパク質だなぁ。料理としてどうよ』って思いながら炒めたんだった。
思い出した時、とても安心した。
良かった〜と、心から思った。
そして、コレがお母ちゃんの恐怖だったんだと、初めて体感した。
今回は酔ってる最中に、脳が寝てる状態の時に
ぼんやりしながら料理を作ったので、
お肉のことが記憶に残らなかったんだと思う。
お肉は切って無くて、包んであるラップを外して
そのまま投入しただけだったから印象が薄かった。
だから思い出せなかったのだ。
モノの事が記憶に無い。
けれども作った事は覚えてる。
だからこそ怖かった。
本当にポッカリと白塗りされたような感覚。
思い出しながらも、脳の中に答えがない事を心が知っていた。
恐怖だった。
普通の物忘れなら、脳の引き出しをどこか開ければ出て来るから、動いたりしながら頭の中を探す。
けれども今回は、脳の中を探せないのだ。
自分の行動の事なのに、頭の中には無いとわかっているから探せなかったのだ。
アルツハイマーのお母ちゃんはすぐに真っ白部分が出来て、不安だったんだろう。
こちらが答えて思い出せると、子供のように笑顔になって
『あ〜、思い出して良かった〜』と笑っていたのだ。
『思い出せんでも良かよ〜』
今まで私は、何度もお母ちゃんにそう言ってしまってた。
でも、自分で体験すると、それは怖くて仕方がないのだ。
少しでも情報を掴んで、思い出したいのだ。
ごめんね、お母ちゃん。
今度会った時には、一緒になって記憶探しをするからね。