北海道キャンプ四日目。
相変わらず雨の天気予報でしたが、新しいテントで目覚めた夜明け、ポツポツ音がしません。
降っていないではありませんか。
なんだかついてるなぁ。
早起きは三文の徳です。
私たちの活動開始時間は4時半。
身支度して朝ごはん食べて撤収して、6時過ぎにはキャンプ場を後にしました。
今日はいろいろ盛りだくさんの予定があるからね。
本日巻頭の1枚は、知床のカムイワッカの滝登り。
酸性の強い温泉混じりの湯が流れる川の底は、苔が生えないために滑らないのです。
靴を濡らしたくないため、靴下だけになってサバイバルを楽しみましたよ。
さて。
早起きして最初に向かったのは、知床五湖です。
世界自然遺産である知床は、野生の動植物の生態系を壊さないために、訪れる人の数を制限しています。
朝7時半に知床五湖への散策道のゲートが開くので、開門と同時に入場するために、早目に到着しました。
これは、ウトロの国設知床野営場から知床五湖フィールドハウスに向かう道すがらの景観。雲が晴れて連なる山々の峰がくっきり見えていました。
鹿たちも朝ごはんの最中のようで、道端に多く見かけることが出来ました。
開門と同時に10台くらいの自家用車が入場しましたが、観光バスが到着する前の知床五湖は、とても静かです。
散策を始める前に、ヒグマの生息地に入っていく心得を説明するビデオを鑑賞し、簡単なレクチャーを受けました。
ロングコースとショートコースがあって、私たちは次の予定の時間を考えてショートコースを選びました。すると、しばらくエリアは貸し切り状態に。
ヒグマと鉢合わせするのは怖いので、教えられた通り、
「ポイポイ!」
と声をかけながら林の中を歩きます。
ヒグマが出没するのは、沼地であることが多くて、そこには夏を越えて巨大に育った水芭蕉が自生していて、その根っこに芋が出来ているのが好物なようです。
深い森と苔の美しいじめじめした湿地。そしてやがて視界が開けて、おとぎ話に出てきそうな湖が現れます。
ヒグマがいても安全に歩けるように、高架木道が整備されています。車椅子でも移動出来て、熊避けの電線を巡らせてあります。
私たちはヒグマには遭遇しませんでしたが、気持ちのよい朝の散歩を満喫したあと、ウトロ港に戻り、次のプログラムの集合場所に向かいました。
知床岬までクルーズし、海から知床の自然を観察するツアー。
ところがこの日は悪天候で海が荒れているために欠航になってしまいました。とても楽しみにしていたので残念でしたが、それならバスに乗って「カムイワッカの滝」に行きましょう。
ほどよい温度の湯の流れる川を遡るワイルドな遊びです。
さすがにアグレッシブなのは北欧系のカップル。ブラジャーとショーツ姿になってワアワア言いながら湯壺に飛び込んでいましたが、この日の気温は15℃以下で、山間部で雨が降り始め、かなり寒いのです。
そして、ここからの帰り道のバス。窓の外をずっと凝視していた夫が叫び声を!
ヒグマです。
路側の崖をよじ登っている小さな熊です。
ヒグマまで見ちゃった。
とうとう本格的に雨が降り始めましたよ。
お昼ご飯、少し遅くなりましたが、斜里の街中にいい店が見つかりました。
これは、夫の大好物つぶ貝のかき揚げの丼。
私は鱒のルイベの丼。
さぁ、釧路に向かいます。
途中、丹頂鶴の生息地として名高い鶴居村を通りますよ。
夫が、
「あっ!」
と小さく叫んで車を停車させました。
牧草地の緑の中に、1羽の真っ白い大型の鳥が立っています。
丹頂鶴です。
子供たちと北海道キャンプしたときにも、道端の畑の中につがいの丹頂鶴を見つけてたいそう感激したのを思い出します。
また、見れた!
しばらく走ると今度はつがい。
盛んに土を啄んでいます。
興奮しながら走っていたら、
「天に続く道」
という標識を見つけました。
曇っているけど、晴れていればもっともっと遥か向こうまで、丘をぬってまっすぐな一本道が続いている名所です。
「コッタロ湿原展望台」
という標識にも、誘われました。行ってみましょう。
鶴を見かける度に車を停めてしばらく観察。どんどん寂しい土地に誘われて行きます。カーナビに記載されている住所はアイヌ言葉に原野という地名。
コッタロ湿原展望台にやっと到着。
遠かったねぇ。
だけど、道中丹頂鶴は合わせて10体確認することが出来ました。
牧草地の中に、黒い土の見えてるところがよくいる場所のような気がします。そこには鶴たちの餌になるミミズがいるからかな?と夫が言います。
3体のグループの鶴たちは、人を見かけるとスタコラと逃げます。
純白に黒と赤のポイントがくっきりオシャレなつがいと、大きさは変わらないけど、まだうっすらグレーの羽毛の子供の親子なのでしょう。子育て中なので警戒心が強いのでしょうね。
合羽を着込んで朽ちかけた木の階段を上ります。
ひらけた景色を伝える写真が撮れなくて残念。
ここは広大な釧路湿原のまん中なんだね。
これは、
「湿原」と「失言」をかけたつもりの写真。
カーナビも、Googleも、
「この先は釧路湿原で道がないから引き返せ」
と指示を出すのですが、夫が野生の勘を働かせて、ここから釧路市に続くはずと判断し、霧の中を進みました。
激しい雨の中、5㎞も、水溜まりだらけの平坦なダート道が続き、時折餌を食んでいた鹿たちが、すくっと首を立てて侵入者の様子を伺うのに遭遇するばかり。
くねくねとうねる川が近づいたり離れたり、野性的な顔を見せてくれます。
やっと舗装道路に戻った時にはホッとしましたが、釧路湿原の中にわけ入った鮮烈な印象は鮮やかに心に刻まれました。
出てきた場所は塘路湖の畔。
明日はここから出発する、カヌーツアーに参加する予定なのです。
またもや天候に翻弄されるかな?
釧路の港近くの街灯はオレンジ色のこの色がロマンチックなんです。
以前初めてこの街に来たときは、夏の昼間でしたけど霧が深くて、この灯りが点っていて、幻想的な風景に驚いたものです。
大雨の予報でしたので、北海道キャンプツアーの中日、私たちは釧路市街地にあるビジネスホテルに宿泊することにしました。
都会の夜は久しぶり。でもやはり、雨風が吹き降り、たいそう寒くて、ホテル近くの居酒屋に向かうときにもアウトドア用の合羽を着込んで行きました。
釧路は盛り場が発達しており、炉端焼発祥の地と言われています。
1軒目に居座った店では、まずは本日の数々の感動に乾杯。
銀鱈のカマの炭火焼き、イカのわた味噌焼き、初物のサンマの刺し身に夫の大好物のつぶ貝の刺し身、シシャモ。
アスパラガス、なすの味噌田楽、バターとイカの塩辛を添えたふかしたじゃがいもなど、北海道の海の幸山の幸を次から次へと堪能しました。もちろん食べ過ぎ。
ビールも燗酒も美味しくて。
なのに途中から、夫が〆にラーメンを食べるから、そのぶんお腹を空けておけというのです。
もう満腹なんだけど、このままホテルに帰るのは惜しい愉快な夜です。
スマホで「釧路の〆」と検索して現れたのは、「つぶ焼きラーメン」というワード。ここからすぐの場所ではないか。つぶ焼きラーメンとはなんぞや?
暖簾の風情がノスタルジック。
創業昭和41年という老舗です。
カウンターに座ったら目の前で、店主が次々と大量のつぶ貝を焼き続けておられます。
特注の木製の台に焼きたての大きなつぶ貝が5つ。注ぎ込まれた特製の甘辛いタレと、つぶ貝のエキスとがクツクツとたぎっている熱々の貝殻を、ナプキンで挟んで持ち上げ、まずは貝汁をちゅうっと飲みます。旨い~。
つぶ貝は夫の大好物。
彼がゴキゲンなのは言うまでもありません。
偶然この店に出会えたのも、この日のミラクルな出来事のひとつ。
楊枝で刺してくるくる取り出した貝の身はプクプクに太って絶品です。
そして登場したラーメン。不思議に黒いスープと手打ちの縮れ麺とメンマ。つぶ貝の汁を少し垂らして完食しました~♪
帰り道、傘がおちょこになって吹っ飛ぶほどの嵐ですけど、果たして明日は晴れるかな?