「会としての議決」を経ていれば何でも正当化されるわけではない | まるおの雑記帳  - 加藤薫(日本語・日本文化論)のブログ -

「会としての議決」を経ていれば何でも正当化されるわけではない

前エントリに対していただいた「正直」さんからのコメント(19)へのレスを考えていましたら長くなりましたので、エントリを立ててお答えさせていただくことにしました。


「寄附者というのは個人に限られるのでしょうか。」とのことですが、「団体」も寄付者になれます。「団体」からの寄付を否定するつもりはありません。国立大学の附属学校で行われているであろう「(会費とは別に、寄付金を任意の額で会員から集める)後援会からの寄付」は、先のエントリ(2012-07-30)でも触れたように“あり”だと思っています。


>社団法人に準じればPTAという団体も一寄附者といえ、その意思決定は各団体で規約に定めてある決定機関・方法に拠りなされた場合、PTAという寄付者の自発的意思と解釈できるのではないかと思えるのです。

問題は、その「構成員」の自発的意思が抑圧・侵害されてしまっていないかです。
団体としての「PTAの自発的意思」が担保されても、「保護者個々人の自発的意思」がないがしろにされていたら、問題ではないですか?

その観点から考えると、「PTAからの寄付」は、以下の点で、問題を含むと思っています。

①ほとんどのPTAで入退会の自由が十分に担保されていない

②(「規約上「会費の何%までで総会決議によった一律の額を総会決議によった費目において寄付を行う場合もある」などのような条文を明記し、入会時に説明して、同意を得た者だけを入会させる」((c)ぶきゃこさん)ようなケースは別として)学校に対して、あるものを寄付するか否か、いくらくらい寄付するのかについては、保護者個々人により考え方や事情が異なることが当然予想されるから、「多数決による決定」は寄付の基本的な性格から考えて問題がある


②の論点に関しては、ぜひ、拙エントリ<「事実上の強制」を認めた画期的な判決 その1(自治会裁判とPTA(3))>をご参照ください。
また、最近の拙エントリ<『学校納入金等取扱マニュアル』を読む(下) ― ないがしろにされる保護者一人ひとりの意思>も合わせてご参照いただければと思います。

②の論点について補足しますと、甲賀市の自治会判決では、自治会費から寄付金が支払われることについて、「会員の思想、信条の自由を侵害するものであって、公序・良俗に反するとされました。

ここで注目しておきたいのは、自治会の会費から寄付を行うことに関しては、事前の話し合いと総会での議決も行われていたのに、それでも「思想信条の自由の侵害」が認定された点です。
自治会側は、「民主的な議決」を経ているから会費からの寄付金の支出は正当だと主張しましたが、その主張は認められなかったのです。


この甲賀市自治会をめぐる判決と、「寄付条例」に関連しての、寄付の採納に際して自治体側が留意しなければならない事項、すなわち、

第3条 寄附の採納をしようとするときは、次の各号に掲げる事項に留意しなければならない。
(1) 公序良俗に反しないこと。
(佐渡市寄附採納事務取扱規程)


といった規程に照らし合わせると、公立学校が、PTAから寄付を受け取る場合は、よっぽど慎重にならなくてはいけないと思うのです。
(「あり方」さんご教示ありがとうございます!)


このように考えてきますと、今回、文科省から出された「通知」の中の、「一方、学校関係団体から学校に対して自発的な寄附(金銭・物件)を行うことは禁止されておらず」の部分は、それ自体誤りではないですが、非常にミスリーディングではないかと思うわけです。



「正直」さんへ
・御地における寄付採納のあり方をご教示くださり、ありがとうございます。
・何かの文書を引用されているようですが、その場合は、引用箇所と出典の明示をお願いします。