全員参加型PTAで「役職の強要」をなくせるのか? (経験者さんからの質問に答えて) | まるおの雑記帳  - 加藤薫(日本語・日本文化論)のブログ -

全員参加型PTAで「役職の強要」をなくせるのか? (経験者さんからの質問に答えて)

皆さま、たくさんのコメントありがとうございます。
勉強させていただいています。

前々エントリ(8/23)に対していただいた「経験者」さんからのコメント(質問①~③)へのレスを考えていましたら長くなりましたので、エントリを立ててお答えさせていただくことにしました。


経験者さんからの質問①
>これのどこがリアリティが無いのか、逆にお聞きしたい。(コメント34)

経験者さんの改革案への疑問を以下、述べます。

<1>何が必要で何がムダかは誰にも決められない
経験者さんは、「まずやらなくていいことを減らして、20人くらいは強制しなくてもやってくれる人は来てくれるから、(以下省略)」と、ムダな仕事をなくせばPTA問題は簡単に解決すると主張されます。(コメント25)

しかし、「やらなくていいことを減らし」たら、ゼロになっちゃいませんか?
別の言い方をすれば、「やらなくてはいけないこと」って、あるのですか?

コメント34でお示しになっている三つの委員会の仕事の内容は、一見すると、「これなら確かに保護者は苦労しなくて済むよなあ」という簡略化されたものです。
しかし、ちょっと冷静に考えてみると、その三つの委員会の仕事内容って、別に「なくなったって誰も困らないもの」ではありませんか?
なくても、学校も、親も、そもそも子どもも困らない。
そういった活動を「保護者全員を巻き込んでまで」維持する必要があるのでしょうか?


<2>活動の膨張を止めることは難しい
次に、<1>の内容と密接にかかわることですが、「張り切る人」をどう抑えるのかの問題です。
もともとPTAには「子どものため、子どもがお世話になっている学校のため」という大義名分がありますから、「どうせやらなくてはいけないなら、【意味のある】活動をしよう」という人が出てきてもぜんぜんおかしくありません。
気合を入れてPTA新聞の編集をしコンクール入賞を目指したり、校外の安全のためにいろいろな活動に取り組もうとしたり。
このような動きは、あなたの言う「やらなくてもいいこと」を生み出すことになったり、また、所詮、素人の集まりですから、効率も悪く、あなたのような一線のビジネスマンから見たら「何やってんだ。オバさんたちが」という感じになるのかもしれません。
でも、それではいったい、そういう動きをどうやって抑えますか?
そして、もし抑えられたとしても、あとに残るのは、コメント34に示されているような【ほとんど無意味】な活動になってしまうのではないでしょうか。


<3>地域や学校から依頼される仕事は断りにくい
<2>でとりあげた会員からの内発的な仕事の増加に加えて、学校や地域から依頼される仕事が多々あるPTAも多いです(あなたの地域はこの点において相当に恵まれているようですが)。
地域ぐるみで仕事を頼まれる場合、よその学校はこなしていることが多く、自分たちの学校だけ抜けるわけにはいかないという大きなプレッシャーもかかるわけです。
地域や学校から押し付けられる仕事をどうはねのけますか?
しかも、ややこしいのは、保護者の中には、「地域や学校から依頼される仕事」を、まさに保護者が積極的に取り組むべき【本来の仕事】と感じる人もいることです(そういう熱心な人がいること自体何も不思議ではないし、悪いことではないですよね)。


以上、三つに分けて述べてきたことをまとめますと、「無駄な仕事をなくせばいい」と言っても、なくしていけば会としての存在意義がなくなりかねない。いっぽう、仕事が増えていく要因は内部的にも外部的にも存在します。

「仕事の強制的な割り当て」をしないことには会が回らなくなるのは、“全員参加型PTA”の「構造的必然」だと言うべきではないでしょうか?


経験者さんからの質問②
>非会員が発生すると、どうして彼らに対してのプレッシャーになるか意味がわかりませんが、分かりやすくご説明してもらえますか?(コメント41)

<4>PTAの「暴走」を防ぐためにも、入退会自由の確認・周知は必要
入退会自由になれば、「無茶なことをすれば会員がいなくなり、会が消滅するかも(汗)」という健全な危機意識が執行部や学校・教委側に生まれるはずであるということです。
「入退会不自由」な状態では、執行部や、教委・学校幹部などのやりたい放題になりがちですから。
(この考えは、川端さんの『PTA再活用論』でも紹介されていますのでご参照いただければと思います。)

あなたが言うところの「極悪非道の教委」に対抗するものがあるとしたら、「保護者一人ひとりの自由意思」ではないでしょうか。
あなたの唱える「全員参加体制」は、その大切な自由意思を縛ってしまうという点で賛成できません。


経験者さんからの質問③
>私は退会者が出ることを、目の敵にしてるわけじゃありませんよ。自分の経験上、必ず大きな軋轢が生じて、退会者が幸せになれないと確信してるから、そういう人を出したくないだけです。
日本には言論の自由がありますから、退会者への風当たりを防ぐ手立てがありません。
(コメント41)

<5>役職の強要をめぐる軋轢にも目を向けるべき
あなたは「『退会者』はピラニアの餌食になる」と退会者の心配ばかりされていますが、今現在、役職を押し付けられて困っている人は、どうでもいいのですか?
「役員決め前より相当不安が高まります、女性に関しては少なからず当院受診の理由としてこうした活動に関するものです。」といった精神科のお医者さんの発言とか、ご存じないですか?
(精神科 本当の話 PTA・地域活動に悩む母親たち(2011.07.18)

最近でも、北海道のmoepapaさんのブログでPTA活動により追い詰められたお母さんの話が取り上げられていますよね。その他にも、似たような話はネット上にあふれているといっても過言ではありません。
いっぽう、退会をすることで追い詰められたという人の話はあまり聞きません(リスクがないと言っているわけではないので、誤解なきよう)。

そもそも、役職の強要がなぜ横行しているのかと言えば、誰かがやらなければ自分にお鉢が回ってくるからではないでしょうか。
その大きなストレスが母親たちに「冷酷非道」なこともさせているのだと思います。
いっぽう、会費の方は、「入会しない人がいる分だけ自分たちの会費が値上げされる」というのならばまだしも、ピラニアを活性化させるというのはちょっと想像しにくいです。
和歌山の件をきっかけに、PTA会費から学校への寄付金が減っていくなら、会費の問題はなおのこと問題になりにくいように思います。