「非会員の子どもに記念品を渡さない」は認められるのか? 名古屋市教委と意見交換 | まるおの雑記帳  - 加藤薫(日本語・日本文化論)のブログ -

「非会員の子どもに記念品を渡さない」は認められるのか? 名古屋市教委と意見交換

先日、前エントリにコメントをくださったumicofさんのブログを訪ねてみると、びっくりするようなことが書かれていた。

いくつもあるのだが、そのうちでもっとも問題だと感じられたのが、市教委の対応だった。
umicofさんのブログから引用すると次のようなことを教委職員から言われたというのだ。

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名古屋市教育委員会に電話にて問い合わせしたところ、加入は任意であるとのことでした。
また文部科学省の見解と同一見解であるとのお答えでした。

しかし同教育員会に、PTA非加入より児童が義務教育時間内に差別的区別、扱いを受けるか質問しましたところ、PTAによる景品などが運動会、入学式、卒業式等で非加入児童にだけ配られないことがありうるとの見解がありました。
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http://ameblo.jp/hahawatsuyoku/entry-11642514845.html

この教委の言い分は、上記引用部分に続けてumicofさんが次のように述べている通り、どう考えてもおかしな話だと思います。

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PTAはあくまで一団体であり、公的機関ではありません。個人的に景品の配布が義務教育時間外ならば問題はないと思います。

しかし、運動会等は義務教育時間内においての行事であり、義務教育時間内において児童がそのような扱いをうけることは、差別、いじめにつながらないとは言い切れません。
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本当にこんな回答を教委がしたのか、これはぜひ確認したいと思い、名古屋市教委に聞いてみました。
生涯学習課社会教育係のT係長が応対してくれました。

問題の核心は↑に引用したumicofさんのコメントに語られている通りですが、以下の点について説明いたしました。

○PTAは互助会ではなく、全ての子どもたちのために活動する団体である。だから、保護者ではない教職員も会員になっていたり、学校の施設を借りられるなどの特別な便宜を受けられている。

○会員になったりならなかったりするのはあくまでも保護者であり、子どもは全員非会員である。

○よって、学校行事や授業の中で、会員の子どもか非会員の子どもかで扱いを変えたとしたら、それは「区別」ではなく「差別」であり、教育基本法にも触れる問題である。

○学校行事や授業中における配布物の適否については学校長が責任を持つべき問題であり、ことは「PTAの問題」にとどまらず、「学校・教委の問題」でもある。

以上のようなことを指摘しましたら、T係長はとてもよく理解してくれました。
そして、うれしいことに、「子どもに不利益が行くようなことはどうしても避けなくてはならない。子ども第一に考える必要がある。」とも。

umicofさんが問題にされている教委職員の発言については承知されていませんでした。しかし、部署の中で、「保護者が非会員になった時の不利益の一つとして、例えば運動会の景品がもらえなくなるということがあるかもしれない」といった話は出ていたそうです。だから、umicofさんへの発言はありえないものではないと思うと率直に認められました。
そして、umicofさんへは「おわびしたい」ともおっしゃいました。

私の方からは、担当部署の中で、今回の反省をぜひしっかりと共有してほしいとお願いしておきました。

以下、本筋から外れることですが、
① T係長とのやりとりの中で、名古屋市のPTA加入率は100%だとの話が出ました。もし本当なら、どのような加入のやり方をしているのか等、今後さらに確認したいと思いました。
② 話の途中で、T係長から「PTAというのは子どもたちの健全育成のために多くの人が力を合わせてやっていくものだ。(だから、全員加入が大前提ではないか)」との率直な立場が示されましたが、それについては、「だからと言って全員に網をかけて有無を言わせず入らせるのはおかしいのではないか」と申しましたら、納得いただけたように思います。


なお、千葉市教委は、今年の6月上旬に、「会員ではない保護者のお子さんが不利益を受けないよう、学校としても最大限の注意を払っていきたいと言っている」と述べています。
http://ameblo.jp/maruo-jp/entry-11470756394.html
(コメント54参照)
今日の電話では触れられませんでしたが、名古屋市教委にもぜひ参考にしてほしいと思います。

あともうひとつ、滋賀県栗東市の学童においては、
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現在、栗東市立学童保育所の保護者会に入っていない児童を区別するような事業の場合は、栗東市社会福祉協議会では断っているとの回答をもらっています。
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栗東市PTAと学童保護者会問題≪義勇兵≫のブログ 2013-10-20より
http://ameblo.jp/giyuhei/entry-11644422670.html

この点もぜひ全国の教委に参考にしてほしいです。


追記
非会員の子どもに関する問題を考える上で、岡山西小の先進的な取り組みは外せませんね。
平成23年の6月付けのPTAから保護者宛てに出された文書において、

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なお、PTAに加入、未加入によりお子さんが不利益を被ることは一切ありません。
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と明言されています。
(THINK!PTA!素晴らしい、PTAハンドブック・規約などのページ[009])
http://www.think-pta.com/PTA_kiyaku/kiyaku_nice.html

追記2
本文最後の方でも、千葉市教委の良心的な対応(口頭)について紹介しているが、文書による発言もあるので、紹介しておく。
市の回答として、文書にて以下のように明言されている。
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はじめに、「学校行事における外部任意団体からの贈与行為」についてですが、特定の外部任意団体に所属している保護者の児童生徒のみに物品を贈与することは適切ではないと考えております。
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(2013年7月31日)「千葉市・市民の声」回答内容より。
http://www.city.chiba.jp/shimin/shimin/kocho/shiminnokoe/h25/h25-131.html