熊本PTA裁判 PTA、学校・教委の対応 | まるおの雑記帳  - 加藤薫(日本語・日本文化論)のブログ -

熊本PTA裁判 PTA、学校・教委の対応

以前の記事でも話題にしましたが、熊本でPTAが訴えられています。
この裁判はもともと簡易裁判所ではじまったものですが、社会的な影響が考慮され、裁判所の判断により地方裁判所において「慎重な審理」が行われることになりました。
地方裁判所での一回目の口頭弁論が1月15日に行われる予定でしたが、直前になって27日に延期されることになりました。被告のPTAが急遽(きゅうきょ)弁護士を付けたためとのことです。

弁護士を付けるとなると相当な費用がかかります。その費用はどこから支出されるのか?
ネットでも、すでに大分のTTさんや、札幌市札苗小のPTA会長であるmoepapaさんが話題にされています。

http://blog.goo.ne.jp/ihoupta
http://blog.livedoor.jp/moepapa516-pta/archives/54314634.html


この裁判の大きな争点を私なりに整理すると、PTAの強制性、詐欺性を問題にする原告(保護者)と、うちのPTAに強制性や詐欺性など全くないと主張する被告(PTA)の争い、ということです。
(新聞報道やこれまでに裁判所に提出された原告・被告双方の書面等を参照しました)

訴えられたPTAは、強制性、詐欺性を全面的に否定しているものの、個々の会員にきちんと諮(はか)ったうえで意見集約されたものなのだろうか?と、前から疑問に思っていました。


<学校に聞いてみた>
そこで、先日(1月19日)、教頭先生に以下の点について、確認してみました。

① 被告のPTAが最近弁護士を付けたようだが、弁護士費用の出所は?
② PTAが強制性・詐欺性をめぐり訴えられたこと、そして、その訴えに対して全面的に抗弁していることについて、各会員は承知しているのか?
③強制性・詐欺性を問題にする原告の訴えに対しどのように対応するのかについて、PTAとして適切に意見集約が行われたのか?

① については、「聞いていないから分からない」とのことでした。
今後、確認する意思もないようでした。
(PTA会費の使途の問題であるのに関知しないという態度が許されるのでしょうか?
教頭先生と校長先生は、PTAの役員会・運営委員会の構成メンバーでもあるのですが・・・。)

② と③の質問についても、「把握していない」という回答。一方で、「各会員に対して何らかの報告がなされるとしたら、裁判の結果が出てからになるのではないか」とも。

教育委員会は今回の裁判をめぐる学校やPTA執行部のあり方を承知しているのか聞くと、「裁判の件に関して、教委には報告・相談はしていない」。


教頭先生とのやりとりから、以下の事情が見えてきました。

・学校は、今回の裁判に関してあくまでも第三者(と言うよりも「無関係者」)の立場に立ち、PTAに対して指導・助言したり意見交換したりということは、ほとんど全くしていないらしい。

・各会員は、今回の提訴に対するPTA執行部の対応(強制性・詐欺性の全面的な否定)について何ら情報を与えられておらず、その方針の決定に関与していないらしい。


<熊本市教委に聞いてみた>
学校の説明に納得がいかなかったので、翌日(1月20日)、熊本市教育委員会に問い合わせてみました。
市教委教育政策課課長のMさんが対応してくれました。

① 学校と深く関係するPTAが訴えられているのに学校幹部が「無関係」とのスタンスをとっていること
② 民主的な組織であるはずなのに個々の会員がカヤの外に置かれて裁判が進行していること
この二つについて、教委の考えを聞きました。

すると、
「今回の裁判は、会長が個人で対応すると聞いている。今手元に資料がないので私の記憶で言うのだが、今回の裁判は、原告と会長との間の問題であり、被告は会長個人であって、組織としてのPTAではないはずだ。」
だから、学校が無関係な立場を取ることも、各会員に情報提供をしたり対応について諮ることがなかったとしても問題ではない、という言い分のようでした。
(さらに、M課長は、原告以外の一般の保護者はPTAが任意であることを理解した上で入会していると理解している、とも。)

しかしながら、手元にある裁判資料を確認したところ、被告は「会長個人」ではなく「熊本市立○○小学校PTA」となっていました。

熊本市教委は、これまで「あくまでも会長個人が訴えられた」との前提で、今回の裁判への対応をしていたようです。もしも被告が会長個人であるならば、裁判については関知しないとする学校のスタンスも、各会員に何の説明・相談もせずに原告の主張を全否定する会長のスタンスも、あるいは認められるのかもしれません。
しかし、事実はそうではなく、訴えられたのは、間違いなく組織としてのPTAなのです。

M課長は「事実関係を確認させてほしい。早速、学校にも確認してみる。そして、ご指摘のように被告がPTAであるならば、今後教委としてどう対処していくのかについては、できるだけ早く回答する」とのことでした。


個々の会員を無視する形で裁判への対応を進めているPTA執行部(あるいは会長個人)。
PTAの存立と運営に深く関与しているにも関わらず、いざ訴えられたら「関知しない」とのスタンスをとる学校。
そして、今回の提訴をあくまでも原告と会長との間の個人と個人の争いごととして処理し、PTAや学校の対応を「問題なし」とする教委。

訴えられたこと自体もさることながら、
PTAと学校、そして教委の対応も、非常に気になるところです。

M課長からの回答がありましたら、またご報告したいと思います。


追記(2/1)
本エントリ、コメント8に、M課長からあった「中間回答」を紹介しています。

追記(4/5)
記し遅れましたが、コメント10に、教委への再問合わせとそれへの回答の内容を紹介しています。