ひとたびその地位に就いてしまえば、あとはもうこっちのものだという、よしんばそれにふさわしい活躍をしなくても、いかにもそれらしく振る舞ってさえいればわが人生は大成功をおさめたも同然だという、そんないい加減な解釈が堂々とまかり通り、しかも立派に通用させてしまっているのは、ひとえに国民の側に致命的な欠陥があるからです。この国の人々は、伝統的に、さもなければ遺伝子的に、あまりにも権威や肩書きに弱く、そのご威光のみで一も二もなくかれらにひれ伏してしまい、かれらが本当にその地位にふさわしいかどうかを吟味することなど間違ってもありません。

 人物の器量や度量を正確に計る尺度は、地位そのものでないことは言うまでもなく、風貌や学歴や家柄などでも絶対にないのです。ましてイメージなんぞはもっての外です。用は実力と結果です。実力の有無についてはなかなか見分けられず、結果については実行してもらわないことにはわかりません。しかし、この二点の基準に的を絞って判断しなければ大きな誤りを犯すことになり、これまではその連続であり、これからもその連続ということになってゆくでしょう。

 ところが、現状はどうかと言いますと、実力も結果も常に蔑ろにされ、それに付け込んだ無能な連中が堂々とその地位に就いてふんぞり返って日本の足を引っ張りつづけているのです。よしんば大失態をやらかして馬脚をあらわしてもなおかれらがでかい顔をしてその地位にとどまっていられるのは、〈自分がないにも程がある〉という国民の異常な意識がいつまでも変わらないせいであって、ほかの理由ではありません。