この出版不況とやらは、結局、良書を駆逐する方向で推し進められ、商売的な観点から見ても、やってはいけないことをやり過ぎた結果なのであって、決してそれ以外ではありません。雑誌にしても、単行本にしても、よくよくその中身を精査し、吟味した上で、出版社側の人間が心の底から出したいと思うようなものを出さず、自分を押し殺して世間の気まぐれな好みに調子を合わせ、ぼろ儲けを企む悪癖を身につけ、しまいには出版の理念をすっかり忘れた、というか、そもそも編集者としての資格も素質もない、出世だけが狙いの、その辺のお役所で働いていたほうがお似合いの連中が携わることによって、迎えて当然の衰退を迎えたのです。つまり、最も人間的な文化を象徴する活字の世界を、それにふさわしい扱い方をせず、むしろ、ぶち壊すような心得違いをし、版元の風上にも置けないような不行跡が積もりに積もって、こんな情けないことになってしまったのです。
 しかも、さらに悪いことには、真因に気づき、それを悟ったからといって、もはや編集者としての素質のかけらも持ち合わせていない者たちにはどうすることもできず、せいぜい昔の夢でも追いかけながら、大手出版社としての書き手に対する優位性やら、とうに失われてしまっている読者に対する権威性やらにしがみついて、破滅と破局の終焉の日をどうにか引き延ばそう、せめて自分の定年までは何とかしようとしているのが現状なのです。そして経営者の頭も、長年にわたる楽な商売の癖が抜けきれず、小手先の変化でどうにかしようなどという、実に愚かな発想しかできない体たらくで、腐りきったおのれの性根を認めようとはしません。地に墜ちた活字文化だって。笑わせるな。そんなことを言う資格があんたらのどこにある!