日本は、島国であると同時に山国でもあって、人間が安全に暮らせる平坦な土地の面積はとても狭いのですが、そんなところに一億数千万人もの人口を抱えこむこと自体にそもそも無理があるところへもってきて、国家の支配層は、自分たちの豊かさを維持し、さらに安定させるために、労働奴隷としての人間の数の減少を極端に恐れています。このままでは日本は消滅してしまうなどと大げさに過ぎる論理をもってして、愚かな国民を煽り、戦時中に兵隊の数を確保したくて「産めよ、増やせよ」のキャッチフレーズで焚きつけたように、今また同じやり口でその気にさせようとしているのです。
 だから、ひとたび大雨が降ったりすればたちまち土石流の餌食にされてしまうような、危険極まりない土地であっても、宅地として許可をあっさりと下ろし、悲劇が発生した場合には、救助活動と救援活動に精を出してみせてお茶を濁し、根本的な解決策、つまり、そうした土地を宅地にすることをやめるという根本策を提案することすらもないのです。よくしたもので、上が上なら、下も下で、日本人に致命的に欠落している〈当然の怒り〉を怒らず、その代わりに女々しい限りの〈諦念〉へと逃げこみ、涙を流すことですべてを忘れ去ろうとし、結果的には為政者の思うつぼに嵌まるというわけです。
 こうした種類の災害は、あの〈原発犯罪〉と同様の巨悪そのものであって、致し方のない自然災害などでは断じてありません。そしてごまんといる御用学者は、その道の専門家面をしてああでもないこうでもないと尤もらしい解説をしてみせるのですが、しかし、誰ひとりとして宅地の許可を出した者を責めようとはしません。つまり、これからもずっとこの手の悲劇があとを絶たないことになり、為政者天国は永遠というわけです。