(内容を書き足し)平成31年度年金額は0.1%の上昇だが、価値は目減りした。 | 年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座

年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座

知れば知るほど奥深い年金制度!
僕も日々勉強ですが、一人でも多くの方に年金の事を知って欲しいと思います。
年金は…正確に書くように努めてはいますが、少しでも年金の事を知っていただければ幸いであります。
一緒に年金について考えてみませんか?

こんにちは!
年金アドバイザーのhirokiです。
 
 
今日の記事は最近書いたものですが、明日無料メルマガのほうに臨時で発行しようと手直ししてたらブログにも書こうと改めたものです^^;
ちょっとこの間の記事はわかりにくかったと思ったので…
 
最近、厚生労働省発表の年金額改定の資料が発表されて、年金額が去年より0.1%アップとなりました。
 
大体いつも、毎年1月下旬あたりに新しい物価や賃金の発表と共に年金額の発表がある。
これをもとに年金額の変更が分かる。 
今年は割と発表が早かったですね^^;
 
 
老齢基礎年金で言えば今年度は779,300円(月額64,941円)が満額でしたが、平成31年度は0.1%(1.001)上がって780,100円(月額65,008円)に上がる事になります。
 
 
計算式としては、平成16年度本来水準満額780,900円×(平成30年度改定率0.998×1.001=0.999)=780,100円
 
例えば、年金保険料を20歳から60歳までの間に350ヶ月納めてた人なら平成30年度の老齢基礎年金が779,300円÷480ヶ月×350ヶ月=568,240円(月額47,353円)でありました。
しかし、779,300円から0.1%アップして780,100円になったので780,100円÷480ヶ月×350ヶ月=568,823円(月額47,401円)にちょっと上がってるという事ですね。
 
 
 
厚生年金は過去の給与(標準報酬月額や標準賞与額)に再評価率という、過去の貨幣価値を現在価値に直して年金額に反映させる方法を取っています。
 
たとえば平成8年度の給与(標準報酬月額)が40万円×平成8年度再評価率0.993=397,200円だった人は、その再評価率の0.993×1.001=0.994と改定されて年金額に影響する。
 
毎年度の給与(標準報酬月額)にかける再評価率が年度ごとに違いますので、それらの再評価率に0.1%(1.001)をかけて過去の給与を改定するわけであります。
 
平成8年度に12ヶ月間働いて、その平成8年度の厚生年金だけを算出するなら40万円×0.993÷1000×7.125×12ヶ月=33,961円だったら、40万円×0.994÷1000×7.125×12ヶ月=33,995円になる感じ。
 
ただし直近3年度の再評価率の改定方法はやや違うので必ずしも0.1%というわけではないので注意。
 
加給年金額と諸々の年金額も上がる。
 
 
金額の変更は今年4月からですが、実際の振り込み金額に影響が出るのは6月15日支払分の年金からです。
 
 
にしても新しく発表された物価は1.0%上げ、賃金は0.6%増となりましたが、なぜ年金額はそれよりも低い0.1%程度の伸びなのか?
 
 
それは、今まで何度も言ってきたマクロ経済スライドが発動したからです。
マクロ経済スライドは今年度は0.2%で、前年度(平成30年度)から繰り越されたマクロ経済スライド0.3%の合計0.5%が賃金0.6%-0.5%=0.1%となって今回の0.1%の年金額の伸びになりました。
 
 
物価が1.0%上がって、賃金が0.6%上がったという状況であれば、65歳以上の人(実際は68歳到達年度の人。既裁定者という)は物価に変動させ、65歳未満の人(実際は67歳到達年度までの受給権者。新規裁定者という)は賃金に変動させる。
 
 
 
しかし今の年金額改定のやり方はそう単純ではない。
 
 
年金額は0.1%上がりますが、本来の伸びよりも低いから年金額の価値が落ちた状態となっています。
 
 
そんな!年金額を物価の伸びに合わせないと目減りするやないか!って言われそうですが、まさにそう。
 
 
しかしこれはやらなければならないとても重要な事なんです。
 
 
経緯を簡単に述べますと、平成12年改正の時に65歳以上の既裁定者の人は原則として物価に合わせるっていう事にはなりましたが、基本的には賃金の伸びよりも物価の伸びのほうが低い事が多いので高齢化社会にとってはちょっとした年金抑制策だったんです。
 
とりあえず物価に合わせとけば購買力の維持にはなる。
 
 
でもそうじゃない今回の平成31年度の物価上昇と賃金上昇率のような事もある。
 
 
 
平成31年度の物価は1.0%上げだったですが、賃金は0.6%上げだった。
 
 
 
賃金の伸びが低い。
 
 
 
これをそのまま年金額に当てはめて、物価の伸びに合わせると実際に年金受給者の支え手である現役世代の賃金の伸びの力を上回ってしまう。
 
 
そうなると支え手の現役世代の力を超えた年金額を支給してしまう事になる。
 
つまり年金給付と、保険料負担のバランスが崩れてしまうんですね。
 
 
年金というのはこの給付と負担のバランスが崩れると危険なので、賃金の伸びより物価の伸びが上回った場合は賃金の伸びに合わせるという事になっています。
 
そして用いた賃金上昇率から更に、マクロ経済スライド率で下げる。
 
 
あくまでも現役世代の負担能力を超えないようにする事でバランスを保つわけです。
 
 
 
さらに、平成16年の年金改正の時に今まで5年ごとの年金額再計算の度に夫婦の年金が現役男子の平均賃金の60%以上(よく所得代替率と呼ばれるもの)を確保するために必要な保険料額を決めていくというやり方から、
もう保険料の上限を決めてその入ってくる収入(保険料)の中で年金給付を行おうという保険料水準固定方式というのが採用された。
 
厚生年金保険料でいえば、平成29年9月に上限18.3%を迎えた(18.3%を事業主と労働者で折半して支払うから、個人負担は半分の9.15%)。
 
 
こうすれば、入ってくる収入(保険料)の中で給付(年金の支給)をやればいいから破綻する事が無い。
 
 
その平成16年改正までの年金の支給のやり方は、必要な年金を支給するために保険料をどのくらい取るべきかという受給者中心の考え方だった。
それが、受給者を支える現役世代の負担限度内で給付するという形に180度変えられた。
 
 
だって現役世代としては少子高齢化でどこまで上がるかわからない保険料負担に対して不安が凄く大きくなっていったから。
本当は年金改革は平成12年で終わるつもりだったが、平成16年改正でまた年金額計算を行わなくなって平成16年改正で抜本的改革が行われた。
 
 
 
ただし、保険料の上限を決めてしまったけれど、少子高齢化はこれからもどんどん進む(今は高齢化率28%くらいですが2060年頃には40%近くになる見通し)。
 
 
 
つまり入ってくる収入(保険料)は変わらないのに、受給者が増え続けて負担がまだまだ増えてしまうわけです。
 
 
 
 
そこで平成16年改正の時に導入されたのがマクロ経済スライド調整。
 
 
このマクロ経済スライドは少子化による現役世代の減少と、平均余命の伸びという年金にとっては負担増となる要因を年金額の引き上げの元となる物価や賃金の伸びから差し引いて年金額の引き上げを抑制するもの。
 
ちなみに年金額そのものからは減額されない。
たとえば、その年に使うマクロ経済スライドが0.9%だったとして、賃金の伸びが今回のように0.6%だったら0.6%-0.9%=マイナス0.3%になるが、この0.3%は年金額から引かない。
かなり雑に計算して示しますが、779,300円ー0.3%=776,962円とかにするのではなく、年金額を据え置いて779,300円となる。
 
そうなると前年度の年金額に据え置かれるから見た目では年金額が下がったとかそういうのはわからない。
 
翌年また物価や賃金が上がった時にその使えなかった0.3%を使う(税金の青色申告の繰越控除みたいな感じ)。
 
 
 
簡単に言うと、現役世代の負担を際限なく上げてしまうと現役世代の生活も厳しくなるので保険料上限を決めました。
毎年入ってくる保険料財源はもう限られている。
だけど高齢化は進んで高齢者が増える(年金負担増)。現役世代も少子化で少なくなる。
そうなると年金が保険料収入内で収まらなくなる。
だから、毎年マクロ経済調整で年金額を引き上げる要因である物価や賃金の上昇から、毎年発表されるマクロスライド調整率を差し引きながら年金額の価値を落とす。
価値を落としていくと、毎年入ってくる保険料負担と年金額が将来的には一致して年金が保険料収入内で給付が維持可能となる。
一致したらマクロスライド調整は辞めて、その後は現役世代の力である賃金の上昇に年金額も合わせて無難に維持していく。
 
 
 
受給者が増えても、現役世代が減ってもその分年金額がマクロ経済スライドによって抑制されるから負担の増大が抑制される。
 
 
現役世代が減ると一人一人の保険料負担が増大しますよね(ここはもう上限固定はされましたが…)。
平均余命が長くなればそれだけ高齢者が増えて年金額の負担が増える。
 
 
そういう日本経済全体に影響を及ぼすマクロ的な経済要因を年金額を引き上げる物価や賃金の伸びから差し引いて年金額の引き上げを抑制するわけです。
 
 
マクロ経済スライドで年金額の実質的な価値を落としながら、保険料負担と年金給付が均衡する所まで持っていこうとしてるのがマクロ経済スライド。
 
 
しかし、いつまでもその抑制策をやり続けるわけにはいかないから、生活資金としての役割を持つために所得代替率が最低でも50%以上になるように目標とされている。
 
 
厚生年金保険料率が18.3%上限というのは、夫婦の年金が現役男子の平均給与の50%以上という目標を元に出された保険料率。
 
 
もし50%以上を確保できない見通しになるようであれば所要の措置を講ずるという事になっている。
まあ…少子化もすこーしずつ改善傾向ですし、女性や高齢者の雇用拡大が進んでるので結構いい方向に行ってるんですけどね。
 
 
現在は本来の保険料の負担水準以上の年金給付なので、マクロ経済スライドで年金額の価値を落としつつ所得代替率50%ちょいくらい(今は60%くらいなので)で給付と負担が均衡する所まで持っていこうとしてる状態。
 
 
概ね100年以内の間に均衡するようにマクロ経済スライドを行いながら、その間給付に支障が無いように年金積立金の元本も補足的に取り崩しつつ年金給付を維持していく形となっています。
 
 
そういえば世間では年金積立金に話が行きがちですが、年金は年金積立金で主に支払ってるわけじゃない。
運用益が下がろうもんなら年金貰えなくなるチュー!!って大騒ぎですが、そこは大騒ぎする所じゃない。
 
 
いうなれば本質の外の話。
そんな部分を熱く議論したところで単なる雑学のようなもの。
 
 
年金貰える貰えないの話は年金積立金でやる意味がない。
 
 
究極な話、年金積立金なんて年金がマクロスライド調整で給付と負担が均衡するようになればほとんど必要ない。
 
日本は3~4年分くらいの積立金持ってるけど、多すぎ。
EU諸国あたりは2~3ヶ月分とかそんなもん。
 
 
そもそも運用って上がったり下がったりしながら長期的に見ていくものですよね。
 
おかしな不安の煽りには振り回されないようにしましょう。
 
 
また、安倍内閣で成立された平成25年の社会保障改革プログラム法(持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律)により、マクロ経済スライドの仕組みの在り方(取組中)、
短時間労働者の厚生年金拡大(取組中)、高齢者の就労と年金受給の在り方(取組中)、高所得者の年金給付や年金課税の在り方を見直し(配偶者控除がちょっと変わった)の4つを柱に年金制度の維持の推進が図られている。
 
 
その4つの柱の後の改正の検討として、20歳から65歳までの国民年金保険料納付により今の老齢基礎年金額の満額より多く支給する場合の試算(オプション試算という)が平成26年の財政検証時にされてますが、均衡する所得代替率が50%程度から57%まで上がって給付改善の効果が高い事が見込まれているのでこれからの年金改正としては是非検討の価値は大いに有りだと思っています。
 
 
さらに、67歳までの47年間国民年金保険料の納付が出来て老齢基礎年金が増額し、繰下げ効果も考慮した場合は所得代替率の50%程度が68%まで非常に高い給付改善の効果が見込まれている。
 
 
平成26年に検証された財政検証。
 
 
5年後の今年の平成31年は新しい財政検証が出される年でもあります。
 
そこも今年は注目のニュースになってくると思います。
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
毎週水曜日20時に有料メルマガ発行! 
・学問としての公的年金講座(クレジットカード決済のみ)
 
ここだけのオリジナルの内容でお送りしております。
 
1月30日の第70号は「源泉徴収票が送られてくる1月!65歳前と65歳後の年金からの源泉徴収と確定申告時の計算事例」。
 
1月は年金の源泉徴収票が送られてくる繁忙期なんですが、これを使って確定申告やら還付申告をします。
また、課税対象者かどうかは65歳前と65歳以上の人ではその内容が違ってきますが、源泉徴収するかどうかというのは年金の処理関係上最終的には2月の年金額がキーとなります。
 
多少、処理上の話も交える事になりますが頭の隅にでも入れていていただければと思います。
 
年金額は平成31年度の最新の年金額で事例作成。
 
 
月額756円(税込)で登録初月は無料。 
なお、月の途中で登録されても「その月に発行した過去分は全て読めます」ので今月発行した分は登録後即座に全て届きます。
 
解除はいつでも自由。
 
・学問としての公的年金講座の購読をしたい方はこちら(クレジットカード決済のみ)
 
・有料メルマガバックナンバーはこちらから月単位で購入可能