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年金アドバイザーのhirokiです。
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(発行済み)4月24日の第343号.国民年金保険料の前納の性質と、年金記録を数える時の誤算。
(発行済み)4月3日の第340号.「目立たないけど歴史の変化の中で生まれた経過的加算と障害特例の事例」
(発行済み)4月10日の第341号.「小さい子供がいる時に死亡したら配偶者と子の生活が心配!だけど国民年金が威力を発揮する」
(発行済み)4月17日の「第342号.低年金者向けに支給される場合がある給付金と、保険料を多く支払った人より年金額が多くならないようにする仕組み」
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(以降の予定記事。タイトルは変わる場合があります)
5月1日の第344号.数ヶ月ほど行方不明の後に遺体発見したものの、死亡日がいつなのか不明の場合の遺族年金の取り扱い。
5月8日の第345号.国年保険料と厚年保険料の仕組みと、障害年金請求が月末か1日かで1ヶ月分変わる場合。
5月15日の第346号.加給年金は配偶者が65歳になったら消滅してしまうはずなのに、なぜこの夫婦にはずーっと付きっぱなしなのか(重要!)
5月22日の第347号.「遺族厚生年金の条件を何一つ満たしていないのに、発生させる手段」
5月29日の第348号.よく障害年金は65歳以降は請求不可と言われるが、出来る場合と出来ない場合。
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では本題です。
前回からの続き。
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1.全体で25年以上の年金記録がある人の死亡であれば、過去に加入した共済や厚年期間分の遺族厚生年金は支給される。
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前回は共済期間と厚年期間の両方の記録がある人が、厚年期間中に死亡した場合の遺族年金計算をやっていきました。
民間の厚年期間中に死亡したら日本年金機構が過去の共済期間も合わせて全ての期間を使って計算しました。
平成27年10月改正前までの場合は共済期間を使わずに、過去の民間の厚年期間だけを使って計算していましたが、共済が厚年に統合されてからはそのように過去の共済期間も計算に取り込む形となっています。
逆に共済期間(厚生年金期間とみなす)加入中に死亡した場合は、過去の民間の厚生年金期間も遺族厚生年金の計算に使って計算します。
なお、死亡日において死亡日の前々月までに年金被保険者期間があるのであれば、その3分の1を超える未納があってはならない、もしくは令和8年3月31日までの特例として前々月までの1年間に未納がなければそれでもいいという保険料納付要件があります。
年金は保険なので、死亡という保険事故が起こるまでに自分の力でできるだけ備えてきたのかという事を見るために、このように過去の保険料納付状況を確認します。
未納期間が全体の3分の1を超えるのであれば遺族年金は支給しません。
ただし、死亡した人に全体の年金記録(未納期間除く)が25年以上あったのであれば厚年や共済に加入した期間分の遺族厚生年金が支給されます。
この場合は過去の保険料納付要件は見ません。
25年以上も納めてるならもうそれでいいでしょうと。
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さて、前回は在職中の死亡(厚年や共済加入中の死亡)での場合でしたが今回は共済期間と厚年期間があり、全体の年金期間で25年以上ある人や、25年以上ある年金受給者が死亡した場合はどうするのか という事例を考えていきたいと思います。
一般的には厚生年金や共済加入中に死亡した時に保険料納付要件を満たしていたら遺族厚生年金が支給される事になりますが、もし国民年金のみの加入中に死亡した場合は保険料納付要件を満たしていても原則として過去の厚年期間や共済期間を使って遺族厚生年金は支払われません。
ただし、国民年金のみの加入中に死亡しても、全体で25年以上の期間(未納除く)があるのであれば過去の厚生年金期間や共済期間を使って遺族厚生年金を計算して支給します。
年金受給者であっても全体の年金記録が25年以上ある人が亡くなったのであれば、原則として受給している老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3を遺族厚生年金として支払われます。
基本的に老齢厚生年金受給者が死亡した場合は、遺族厚生年金が発生するものであるというのが世間の常識となっています。
とはいえ老齢の年金を貰うためには最低年金受給資格期間25年必要だったものが、平成29年8月からの改正で10年で貰えるよという事になりました。
老齢の年金を貰うハードルが、過去の年金記録25年以上必要から10年以上にかなり引き下がったわけですね。
その改正により喜ぶ人もいますが、年金は加入期間に応じて金額が人それぞれ違うので、本当に10年しかない人は非常に貧相な年金額になってしまってとても低額な年金になってしまいます。
最低でも10年で老齢の年金が貰えますが、もしその受給者が死亡した場合は遺族厚生年金が発生する事はありません。
なぜならば「25年以上の年金記録がある人の死亡ではない」からです。
どうして遺族厚生年金を貰える条件を25年から10年に引き下げなかったのか。
これは前述した保険料納付要件が、過去の被保険者期間の3分の1を超える未納があってはダメだよという事に関係します。
例えば20歳からは国民年金に誰もが強制加入し、60歳の前月までの40年間は保険料を支払う義務があります。
その間のうち、10年を納めていれば老齢の年金は支給されます。
しかし、それは30年間の未納があるという事です。
遺族年金を支給するかどうかを判断する時に過去の年金記録のうち3分の1(33.33%)を超える未納があってはいけないとしてるのに、この場合は75%もの未納があります。
でも「老齢の年金受給者の死亡」だから遺族年金を出しますよとやってしまうと、保険料納付要件との整合性が取れなくなってしまいます。
よって、遺族年金を支給するかどうかを見る場合は全体の25年以上が必要であるというふうに従来の法律とは変わらない事になりました。
25年以上ないのであれば、死亡日までの保険料納付要件で判断します。
というわけで今回は共済期間と厚年期間があり、全体の年金記録が25年以上ある人が死亡した場合の遺族厚生年金を考えていきましょう。
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2.共済と厚年期間があり、全体で25年以上ある人の死亡の場合の遺族厚生年金事例。
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◯昭和38年7月12日生まれのA太さん(令和6年に61歳になる人)
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https://ameblo.jp/mattsu47/entry-12835359902.html
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18歳年度末の翌月である昭和57年4月から平成4年7月までの124ヶ月間は地方公務員共済組合(国民年金第2号被保険者であり厚生年金第3号被保険者)期間。
この間の平均標準報酬月額は32万円とします。
(20歳になる昭和58年7月から平成4年7月までの109ヶ月が老齢基礎年金に反映する期間)
退職し、平成4年8月からは会社員である妻B子さんの扶養に入り、国民年金第3号被保険者として平成5年1月までの6ヶ月間。
平成5年2月には民間企業に再就職したので、平成15年3月までの122ヶ月間は厚生年金(国民年金第2号被保険者であり厚生年金第1号被保険者)に加入しました。
この間の平均標準報酬月額は28万円とします。
平成15年4月から平成22年6月までの87ヶ月間は未納とし(妻はもう会社員ではなかったので3号にはなれず)、平成22年7月から平成27年6月までの60ヶ月間は国民年金保険料全額免除(将来の老齢基礎年金の2分の1に反映)。
平成27年7月から令和4年8月までの86ヶ月間は海外に居住。
この期間は国民年金には強制ではないので、国民年金保険料を納める必要はないですが、日本国籍であれば任意で加入する事はできます。
任意加入しなかったのでこの86ヶ月間は年金受給資格期間10年に組み込むカラ期間となる。
令和4年9月から60歳前月の令和5年6月までの10ヶ月間は日本に戻っていましたが、国民年金保険料は未納でした。
61歳到達して以降の令和6年8月27日に病気により死亡。
死亡時点で生計維持されていた遺族は妻B子さん54歳と子20歳の1人。
生計維持されていたというのは簡単に言うと、死亡者と住民票が一緒で妻の収入が850万円未満の場合の事(別居でも生計を一にしていると考えられるなら生計維持関係ありとされる)。
さて、妻や子には遺族年金は支給されるのでしょうか。
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3.共済期間の分は共済が、民間厚年分は日本年金機構がそれぞれ遺族厚生年金を支給する。
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まずA太さんの年金記録をまとめます。
・共済期間→124ヶ月(20歳以降の109ヶ月が老齢基礎年金に反映)
・国民年金第3号被保険者期間→6ヶ月
・民間厚年期間→122ヶ月
・カラ期間→86ヶ月
・全額免除期間→60ヶ月(老齢基礎年金の2分の1に反映)
・未納期間→97ヶ月
年金受給資格期間は124ヶ月+3号6ヶ月+厚年期間122ヶ月+カラ期間86ヶ月+全額免除期間60ヶ月=398ヶ月≧10年なので老齢の年金受給資格期間は満たしています。
なお、死亡日は61歳の時の何も年金に加入していない時ですが全体で25年以上あるので過去の共済期間や厚年期間は遺族厚生年金として受給する事ができます。
全体の年金記録は25年以上なので、死亡日の前々月までの保険料納付状況を見る保険料納付要件は見ません(見るケースもあります)。
請求者はA太さん死亡時点で生計維持されていた妻B子さんのみ。
子は18歳年度末を超えているので対象外。
・令和6年8月27日の翌月からB子さんに支給される遺族厚生年金(地方共済組合から) →32万円×7.125÷1000×124ヶ月÷4×3=212,040円
・地方共済組合からの独自給付である旧職域加算(遺族共済年金)→32万円×0.713÷1000×124ヶ月(厚年に統合される前の平成27年9月までの期間)÷4×3=21,219円
(0.713というのは共済期間が20年未満の場合は7.125の10%を表す。20年以上の人は7.125の20%の1.425)
・遺族厚生年金(日本年金機構から)→(28万円×7.125÷1000×122ヶ月)÷4×3=182,543円
よって、遺族厚生年金総額は共済からの遺族厚生年金212,040円+旧職域加算21,219円+日本年金機構から182,543円=415,802円
また、A太さんは厚年122ヶ月+共済124ヶ月=246ヶ月で20年以上有り、A太さん死亡時点で妻B子さんは40歳以上65歳未満なので中高齢寡婦加算612,000円(令和6年度価額)が共済組合の遺族厚生年金に加算されます。
期間の長い方である共済に加算されます(期間が同じ場合は機構の方に加算)。
だから総額は遺族厚生年金415,802円+共済から中高齢寡婦加算612,000円=1,027,802円(月額85,650円)
このように、全体で25年以上ある人の遺族厚生年金の計算は共済期間の分は共済から、民間厚年の分は日本年金機構からというふうに分かれて支給されます。
平成27年9月までの期間で共済から旧職域加算も支給されます。
なお、前回のメルマガでは厚年加入中の死亡だったので最低でも300ヶ月加入したとして計算しましたが、厚年や共済加入中の死亡ではない25年以上ある場合の死亡の場合は実加入期間で計算します。
※追記
もしA太さんが生きていた場合の老齢の年金を計算してみます。
・65歳からの老齢基礎年金→816,000円(令和6年度満額。令和5年度に67歳までだった人)÷480ヶ月×(20歳以降の共済期間109ヶ月+3号6ヶ月+厚年122ヶ月+全額免除60ヶ月÷2)=453,900円
・共済からの老齢厚生年金(報酬比例部分)→32万円×7.125÷1000×124ヶ月=282,720円
・共済からの職域加算→32万円×0.713÷1000×124ヶ月=28,292円
・日本年金機構からの老齢厚生年金(報酬比例部分)→28万円×7.125÷1000×122ヶ月=243,390円
・65歳時点で65歳未満の生計維持している妻がいたら配偶者加給年金→408,100円(令和6年度価額)
(妻は20年以上の厚年期間のある厚生年金を貰っていないとします)
(差額加算の計算は割愛します)
よって、A太さんが65歳時点の老齢年金総額は共済からの老齢厚生年金(報酬比例部分)282,720円+職域加算28,292円+配偶者加給年金408,100円+機構からの老齢厚生年金(報酬比例部分)243,390円+老齢基礎年金453,900円=1,416,402円(月額118,033円)
(それでは今日はこの辺で)
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