こんばんは!
年金アドバイザーのhirokiです。
先日書いた記事に少し文言を書き足したので新しい記事としてアップしました^^
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1.民間保険や金融商品を売るために公的年金に対する不安が煽られてしまいがち。
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年金の話になると国の年金は当てにならないとか、どうせ将来は年金もらえないという憶測が飛び交う事があります。
そんな話はもう50年くらい前から言われてましたが、偶数月になると滞りなく支払われ続けてきました。
公的年金は当てにならないけど、民間保険には入らないと不安だよねって事で、民間保険会社や金融機関の商品を物色して頑張って保険や金融商品を探す。
あまりにも種類が多すぎて何が自分にとって最善なのかわからないけど、営業マンのおすすめに乗って加入したりする。
国民年金保険料は払わずに未納にするけど、民間保険は加入して滞納せずに一生懸命保険料を支払うというパターンの人も存在します。
果たしてこれは賢い選択なのか。
結論から言うと適切ではなく、力をいれる順番が間違っています。
まず国の年金をしっかり支払う事を優先した上で(払うのが厳しければ免除制度を利用する。なお、厚生年金保険料は免除不可)、余力があれば民間保険に入るのが正常な流れです。
そうしないと将来何か起きた時に後悔する事になりかねないです。
よく、保険会社とか金融機関の営業マンの営業トークで年金は当てにならないとか、年金だけでは生活できませんからねえというような不安を投げかけてきます。
ニュースで年金不安な事が流れると、それをネタに金融商品や保険商品を売ろうとします。
その方が商品売りやすいからですね。
どうしても公的年金に対しての不安を民間会社は語りがちです。
しかし、それにまんまとはまってしまうと将来後悔しかねないし、無駄に高い出費を強いられる事になりかねません。
そもそも本当に国の年金が立ち行かなくなるような社会になった時に、民間会社の保険商品や金融商品が大丈夫なんて事はないでしょう。
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さて、民間保険商品というのは何か起こったらいくら払いますという事を決めますよね。
最近は高齢者の有病者でも入れる保険の広告を見かけたりしますが、亡くなったら100万円とかそういうのが多いですね。
簡単な告知で入れてよさそうに見えますが、実際はいろんな注意書きがあるはずなのでしっかり確認しないと払われない事になりかねないので注意です。
重要な部分ほど小さな字でギュウギュウに何か書いてありますからね^^;あの大量の小文字はしんどい。
また、一定期間保険を使わなかったらお祝い給付金を支給とかいうのがありますが、払い戻しをするという事はそれだけ多くの保険料を納めてもらうという事になります。
何年か病気も怪我もしなかったら給付金もらえてお得だー!と錯覚しそうですが、その分高めの保険料を払う事でそこから給付金を出すだけの話です。
そんな給付金などいらないから、月々の保険料を安くした方がいいんじゃないかって思います。
基本的に民間保険は掛け捨てで十分です。
あと、民間の個人年金保険商品が人気ですが多くは終身ではありませんし保険料が高額です。
世の中には保険商品が多すぎて訳わかんないのが多いですが、基本はシンプルに掛け捨てでいいのではと僕は思っています。
そして、積立の保険商品は世の中の物価などが上がってもそれにスライドする事はありません。
例えば将来死亡したら2000万円貰うとか、満期を迎えたら2000万円という金額を決めていたとしても将来は物価が上がり、必ずしもその貨幣価値とは限りません。
例えばもし今後50年後に物価が10倍になれば、その2000万円は200万円の価値しかない事になります。
そうなると十分な保障にはならないかもしれないですね。
いやいや物価が10倍なんてそれは言い過ぎでしょう(笑)と思われそうですが、過去日本でも物価が200倍とか300倍になった事がありましたからね。
第二次世界大戦後ですが、昭和10年から昭和30年までの間に300倍になったりしました。
よって、その時に蓄えていた人のお金はただの紙切れ同然になりました。
戦前の昭和17年から始まった厚生年金も最初は積立方式の年金でしたが、ハイパーインフレでその価値を失いました。
あと、民間保険で老後保障ならその商品、死亡ならそのための商品や特約、障害ならその商品や特約などいろいろ付けないといけないでしょう。
把握するのが大変ですね。
まあ、民間の会社だから収益を出す事が最優先なのでさまざまな商品を出して買ってもらうようにするしかありません。
そのためには国の年金は当てにならないなどという不安が漂ってくれた方が彼らには都合がいい。
老後資金2000万円問題という馬鹿馬鹿しい話が以前ありましたが、もう金融商品売るための格好のネタでしたよね。
今もその文言が使われたりしますが。
その不安が漂ってる最中こそ彼らにとっては書き入れ時となります。
彼らが商品を売るためには公的年金は不安の種であって欲しいのです。
悲しい事ですが。
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2.公的年金は毎月1つの保険料で3つの人生リスクをカバーする。
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さて、そんなめんどくさい民間保険ですが、公的年金はどうかというと少なくとも20歳になると強制的に国民年金の被保険者になり、60歳前月までは保険料支払い義務が課されます。
自営業や農家、学生、自由業のように国民年金のみ加入の人は毎月16,520円(令和5年度)の国民年金保険料を自ら支払う必要があり、サラリーマンや公務員は厚生年金に加入してるので厚生年金保険料が毎月給料やボーナスから9.15%の保険料が天引きされます。
会社も同じだけ9.15%の保険料を負担します。
公的年金に強制的に入ってますが、多くの人はこれが約40年以上先の60歳台になってから貰う老齢の年金のためと思っています。
だからそんな先の想像も付かない将来のために保険料を払い続けるなんてダルいなあと思うのでしょう。
しかし、毎月国民年金保険料や厚生年金保険料を払うだけで、老後の年金だけでなく、死亡時、障害を負った時の3つをカバーしているのです。
民間保険だとあれこれ特約付けたり、他にそういう保障をする保険に入って別に保険料を払う羽目になるでしょうけど、公的年金は1つの保険料を払えば人生の3大リスクである老齢、死亡、障害に対応しているのです。
しかも国民年金保険料は約17000円程度でそれらを保障する(厚生年金保険料は給料が高い人ほど保険料高いですが、一番高い人で月59000円くらい払う)。
もちろん17000円という保険料はなかなかの負担ですけどね…
まず老齢の年金ですが、今から約40年前の昭和60年に女性の平均寿命が80歳に到達し、それから人生80年時代と言われ始めましたが、今の令和の時代を生きる人は人生90年どころか100年時代と言われる事が珍しくなくなりました。
今60代や70代の人であっても、その後20年とか30年を生きても全然珍しくない時代を生きています。
そうなるといつまで生きるかわかんないですよね。
若い時は「いやもう自分はそんな長生きするつもりないからさあ(笑)」と冗談混じりに話す人がいますが、そうは言っても寿命をコントロールなんてできないし将来は思いのほか長生きするかもしれません。
60代になって、そこから20年も生きる事はないだろうと勝手に予測して、民間保険で20年契約にしていた場合に、もしそれ以上長生きしたらどうするのでしょうか。
お金の心配が絶えない中で長生きしても毎日穏やかに暮らすなんてできません。
もちろん長生きは良い事だと思われますが、いつまで長生きするのかわからないというのはリスクでもあります。
生きている間は当然お金がかかります。
ではそのいつまで長生きするのかわからないという不確実性の中を生きる上で必要なのは終身の年金でしょう。
それが公的年金です。
いつまで長生きしようが、死ぬまで定期的に年金を支払続けます。
老齢の年金は必ず終身で支払います。
超高齢の現代において、終身で支払ってくれる公的年金は欠かす事はできません。
原則として有期支払か一時金払いである民間と、国が終身で支払う公的年金はどちらが心強いでしょうか。
公的年金は何かこう積立金か何かと勘違いされますが、いつまで長生きするかわかんないからもし思いのほか長生きした場合のための保険に入っているわけです。
保険なんだから、何歳まで生きたら元が取れるか?というよくある議論など意味がありません。
まあ、敢えていうなら貰い始めて10年くらい受給すれば元は取れますが、だからなんなんだって話です。
保険で最も重要なのは、安心感です。
例えば皆さんは車を買ったら必ず自動車保険に入りますよね。
任意保険も非常に重要です。
こういう事故はもし起こったらとんでもない事になるので、その万が一の事態が起こっても安心が欲しいからこれらの保険に入っている。
結局、何の事故も起こさなかったから保険料の払い損だね~、元が取れなかったね~なんて話はしませんよね。
年金もそれと同じです。
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3.経済変動しても実質価値を維持して、貧困を防ぐ機能を持つ。
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次に年金を受給し始めてもその金額が、将来の経済変動についていかなければとても貧相な給付になりかねません。
前述したように、物価が将来10倍になれば2000万円もらっても200万円の価値になります。
民間保険はその経済変動のリスクには対応できませんが、公的年金は物価変動率や賃金変動率にスライドするので、実質価値を維持する事ができます。
遠い昔、年金制度は積立の年金から始まりましたが、昭和30年以降の高度経済成長を迎え年率10%の賃金の伸び、物価は約5%の伸びが昭和50年ごろまで続きました。
物価は平成10年まではずっとプラスでした。
年金はまだ積立の年金だったから、将来は金額的には例えば昭和40年改正時に月1万円を支給しますと決めて、それを目指すための保険料を徴収しました。
ところが経済成長で現役世代の賃金は年が変わるたびに伸びていく事で、年金額と現役世代との給与の差が広がっていきました。
積立金というのは物価や賃金の伸びには連動せずに運用利回りなので、物価よりも運用利回りが低いとどうしても積立金の価値が下がってしまいます。
もし積立のままで年金は月1万円ですって頑なに変えなかったら、現代で大層貧相なものとなり、高齢者の貧困問題で大問題になっていたでしょう。
積立方式では貧困という問題に対応できないため、多くの国が年金の実質価値を維持するための賦課方式に早い段階で移行していきました。
日本も昭和48年改正の時から正式に物価や賃金にスライドする方式に移行しました。
これにより、現役世代の賃金の何%を維持するという形になったのです。
実質価値を維持する形にすれば、今後どれだけ経済成長で物価や現役世代の賃金が伸びても、それに合わせとけばいいですからね。
物価が将来10倍になっても100倍になっても、年金はそれに連動していく。
実質価値を維持するというのは公的年金ならではの強みです。
なお、賦課方式というのは働いてる人の給料から払う保険料を受給者に送る形の方式のため、もし働く人たちの給料(賃金)が上がれば年金も上がる事になります。
賃金が上がるというのはモノに対する需要が増える事になり、物価が伸びていく事にもつながりますが、現役世代の賃金が上がれば年金も上がるので物価の伸びに自動的に対応する事になります。
今の国民年金の満額(20歳から60歳までの480ヶ月間完璧に納めた場合)は795,000円(68歳以上は792,600円)ですが、将来の物価や賃金が変わればこれらももちろん変わってきます。
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4.死亡リスクや障害リスクにも対応する。
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最後に、死亡したり障害を負った時ですね。
民間保険だと特約やら、別に保険に入る事が必要になるかもしれませんが、公的年金は毎月払っている保険料でこれらもカバーします。
国民年金の遺族保障は18歳年度末未満の子(障害等級2級以上の子は20歳まで)がいた場合は遺族基礎年金という年金が保障されます。
例えば35歳時の令和5年7月16日に妊娠中に夫が死亡し、その後の9月4日に出産した場合はその翌月である10月分から遺族基礎年金795,000円+子の加算金228,700円=1,023,700円(月額85,308円)が支払われます。
最大18年間受給するとすれば(妻が53歳まで)、総額18,426,600円の受給となります。
あと、夫死亡時に夫が厚生年金加入中であり、その時の給与が43万円(男子平均収入)だったとします。
厚年加入期間は加入して間もなかったとして50ヶ月とします。
そうすると、上記の遺族基礎年金と一緒に遺族厚生年金が43万円×5.481÷1000×300ヶ月(最低保障月数。300月より多い場合はその月数で計算)÷4×3=530,286円となり、これは終身年金(再婚などしなければ)なのでもし35歳から女子の平均余命90歳くらいまで生きるとすれば、総額29,165,730円を受給します。
なお、18歳年度末を迎えた以降は遺族基礎年金は消滅しますが、その後は遺族厚生年金に中高齢寡婦加算596,300円が53歳から65歳までの12年間(7,155,600円)支払われるとします。
そうすると7,155,600円が上記の約3000万円にプラスとなります。
妻が65歳になると妻自身の老齢基礎年金と老齢厚生年金と遺族厚生年金を受給します。
なお、遺族厚生年金は妻の老齢厚生年金分が差し引き支給されるので、65歳以降は必ずしも遺族厚生年金年額530,286円になるとは限らないので注意。
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で、最後に障害を負った時ですが、これは初めてその病気や怪我で病院に行った日(初診日)を基準として、1年6ヶ月経った日(障害認定日という)以降に診断書書いてもらって障害年金を請求して障害状態を確認し、障害年金の受給を決定します。
状態がそこまで悪くなければ障害年金の受給に繋がらない事もありますが、その後に悪化したというような時は受給可能になってきます。
例えば22歳の大学生の時にスポーツの練習に励んでいる時に脊椎を損傷してしまい、脚がうまく動かなくなってしまったとします。
脊椎損傷は障害が残ってしまう事が多いので、今後の生活や就労に対して大きな不安が生じます。
ですが、国民年金加入中の時に初診日があり、1年6ヶ月が経過すると障害年金が請求できるようになります。
原則は1年6ヶ月待ちますが、もうこれ以上治りようがないと医師が判断した場合は、1年6ヶ月経つ前から請求できたりします。
仮に初診日から3ヶ月で治らないと判断された場合は、そこから障害年金を請求できます。
ちなみに、初診日までに国民年金の被保険者期間がある場合は初診日の属する月の前々月までにその3分の1を超える未納、または前々月までの直近1年間に未納がない事が必要ですが、20歳から22歳まで学生免除(学生納付特例免除)により1円も保険料を払っていなかったとします。
障害年金は請求できるのか。
この場合は未納ではなく、免除制度を利用してたので問題なく障害年金を請求できます。
請求する障害年金は初診日が国民年金のみの加入中だったので、障害基礎年金のみとなります。
年金は2級と1級のみですが、2級は795,000円で1級は1.25倍の993,750円となります。
障害年金は病気や怪我が軽快してくると、年金が停止になる事がありますが(1~5年間隔で診断書を提出しないといけない)、障害が続く間は年金が支給され続けます。
脊椎損傷により半身不随となったため1級の993,750円を終身受給と認定(永久認定という)されました。
もしこの人が85歳まで生きたとしたら、約60年間受給するので総額約6000万円の障害基礎年金を受給します。
65歳以降は障害基礎年金と老齢厚生年金は併給可能。
このように毎月1つの公的年金の保険料を支払ってるだけで、これだけの保障が用意されているのです。
特に若い働き盛りの世代にとっては遺族年金や障害年金は非常に重要な年金であります。
民間保険がダメだというのではなく、あくまで公的年金をベースとして、その上に足りない部分を民間保険で補うような形で考えるのが正常な順番となります。
公的年金は当てにならないとか、将来はどうせ貰えない…という言葉に騙されて、下手に未納にしてしまうととんでもない損を被る事になりかねません。
特に遺族年金や障害年金は死亡日や初診日までの過去の保険料納付記録を見なければいけません(原則として過去に3分の1を超える未納があると請求不可)。
よって、民間保険などを考える時は公的年金の事も合わせてプランを考えてくれるような営業担当を選びましょう。
それでは今日はこの辺で。
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11月8日の第319号.共済が厚年に統合される前から年金が貰える人と、統合後に年金が貰える人の大きな違い事例。
11月15日の第320号.昭和61年3月31日までに共済を貰う資格がある人は、昭和6年4月1日以前か2日以降生まれでは年金が全く違う(重要)
11月22日の第321号.障害年金受給者の年金受給終了までの一般的な流れと受給事例。
11月29日の第322号.未納が多いのに遺族年金が貰える場合と貰えない場合の重要事例。
12月6日の第323号.父母が子の死亡による遺族年金を受給する場合の同居時と別居時、そして隠し子の存在。
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