最強の消滅時効キラー~プルトニウムより強い?~ | 法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

大学では資源工学科で熱力学などを学んでいました。
科学的分析で法律問題を解決!
多くのデータ(事情)収集→仮説定立(法的主張構成)→実証(立証)→定理化(判決)
※このブログはほぼ法的分析オウンリー。雑談はツイッタ(→方向)にて。

Q 消滅時効の耐性が最強なのは何ですか。

ホントはMAX10年!と言いたいのですが・・・ヤバい判例を紹介します。
プルトニウムの半減期2.4万年,よりも強い!?

誤解ありがち度 5(5段階)
***↓説明↑***
1 一般の方でもご存じの方が多い
2 ↑↓
3 知らない新人弁護士も多い
4 ↑↓
5 知る人ぞ知る

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A 仮差押放置作戦→「永久」!?
  けど,弱点もあります。


【最強の消滅時効期間】
→仮差押をした状態で放置すると時効が完成(進行)しないという判例があります(後掲)。

これについては反対説もあります。
「正式な訴訟の判決でも確定後消滅時効が進行する→10年で時効完成」
と比べると
「仮差押(暫定的措置)→永久に時効が完成しない」
というのは不合理だという考えです。
しかし,現時点で生きている判例では時効は進行しない(完成しない)とされています。

このように,仮差押は「ある意味最強」と言えます。
しかし,いろんな場面であっけなくやられたりすることもあります。
仮差押による時効中断の行方あれこれ,行きます。

【仮差押をしても時効が中断しない場合】

→「取下げ」「取消」があると「何もなかった」状態になるので中断の効果も生じません。

・取下げた場合 ⇒ 初めから中断しなかったことになる
・取消された場合 ⇒ 初めから中断しなかったことになる
ただし,仮差押解放金の供託によって仮差押が取消されたときは,時効は中断しません(最判平6.6.21)。
「供託された解放金(供託金取戻請求権)が仮差押執行の目的物に代わるものとなる」というのが理由です。

【差押・仮差押が功を奏しなかった場合の時効中断の有無】
→最低限,「債務者への通知」まで達成すれば時効中断の効力は生じます。

(中断効生じる)
・差押える物がないために執行が不可能になっても,中断の効力を生じます(大判大15.3.25)。
・債権の差押え命令が第三債務者に送達されないということがあっても,債務者に送達されれば,中断の効力を生じます(大判昭2.12.3)。

(中断効生じない)
・債務者の住所が不明で執行ができなかった場合には,中断の効力を生じません(最判昭43.3.29)。

【時効中断のタイミング】
→差押や保全の種類によって微妙に異なります。

・原則 (仮)差押通知が債務者に送達された時
・不動産 上記送達と(仮)差押えの登記のいずれか早い時
・動産 執行官に対して動産執行の申立てをした時

【他人の手続に乗っかった場合】
→他の債権者が申し立てた執行手続きに参加することにより,中断の効力が生じることもあります。
・他の債権者の行った競売に執行力ある正本に基づいて配当要求を行った場合
 →時効は中断します。
・その後,競売手続きが取り消された場合
 →取り消しまでの中断効は継続します。
  要は,「初めから中断しなかったこと」にはなりません。
・他の債権者の行った競売手続きにおいて,自分の持つ抵当権に基づいて配当要求を行った場合
 →時効は中断しません(強制執行につき最判平1.10.13,抵当権実行につき最判平8.3.28)。

【強制終了の場合】

→外部的要因で仮差押が終了した形になった→中断の効果は(消滅時点まで)は生じます。
・仮差押の目的不動産が第三者の申立による強制競売により競落され,仮差押の登記が抹消された場合
→「右抹消の時まで中断事由が存続したものというべきである」(最判昭59.3.9)
「法律の規定に従わないことにより取り消されたとき」には時効は中断しません(民法154条)。
これに対し,他の債権者の競売による仮差押の取消しは,「法律の規定に従わなかったこと」が原因ではないと考えられるからです。

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【最高裁判所第3小法廷平成7年(オ)第1413号債務不存在確認等請求事件平成10年11月24日】
仮差押えによる時効中断の効力は、仮差押えの執行保全の効力が存続する間は継続すると解するのが相当である(最高裁昭和五八年(オ)第八二四号同五九年三月九日第二小法廷判決・裁判集民事一四一号二八七頁、最高裁平成二年(オ)第一二一一号同六年六月二一日第三小法廷判決・民集四八巻四号一一〇一頁参照)。けだし、民法一四七条が仮差押えを時効中断事由としているのは、それにより債権者が、権利の行使をしたといえるからであるところ、仮差押えの執行保全の効力が存続する間は仮差押債権者による権利の行使が継続するものと解すべきだからであり、このように解したとしても、債務者は、本案の起訴命令や事情変更による仮差押命令の取消しを求めることができるのであって、債務者にとって酷な結果になるともいえないからである。
 また、民法一四七条が、仮差押えと裁判上の請求を別個の時効中断事由と規定しているところからすれば、仮差押えの被保全債権につき本案の勝訴判決が確定したとしても、仮差押えによる時効中断の効力がこれに吸収されて消滅するものとは解し得ない。