建物譲渡特約付借地;期間中の建物売買→対抗関係~法定更新の適用がない借地←→建物譲渡特約付借地権 | 法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

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大学では資源工学科で熱力学などを学んでいました。
科学的分析で法律問題を解決!
多くのデータ(事情)収集→仮説定立(法的主張構成)→実証(立証)→定理化(判決)
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Q 建物譲渡特約付借地の契約があります。
  契約期間中に,建物+借地権,が,第三者に売却されました。
  地主と新たな建物所有者,はどんな関係になるのでしょうか。


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A 建物譲渡について地主名義での仮登記がなされていない場合は,
  第三者が「普通借地」を持つ状態となってしまいます。


【建物譲渡特約付借地;期間中の建物売買→対抗関係】
Q建物譲渡特約付借地の契約があります。
契約期間中に,建物+借地権,が,第三者に売却されました。
地主と新たな建物所有者,はどんな関係になるのでしょうか。

A建物譲渡について地主名義での仮登記がなされていない場合は,第三者が「普通借地」を持つ状態となってしまいます。

建物譲渡特約付借地の契約締結当初から,建物について地主への譲渡の仮登記を行っているかいないかで,大きく結論が変わります。

1 地主への建物譲渡仮登記未了の場合
「第三者への建物+借地権の譲渡」が優先,「地主への建物譲渡」は劣後,となります(民法177条)。
ここで「第三者への借地権譲渡」については,建物譲渡特約なしのノーマル状態,となります。
この特約は契約締結をした当事者間の合意→原則的には第三者へは影響しない,という,合意の原則論が理由です。
そうすると,普通借地,つまり,法定更新の適用のある,半永久的な借地という扱いになります。
ただし,このような前提から,逆に「借地権譲渡を承諾しない」という地主の対抗策が有効です。
地主が借地権譲渡に承諾しない場合,代わりに裁判所が許可を出す,という制度があります。
この代諾許可の裁判でも,裁判所は「賃貸人(地主)に不利な事情」が大きいと判断し,許可を認めない可能性が高いです(借地借家法19条1項;文献後掲)。
結果的に,地主が「半永久的な借地」を負担することにはほとんどならないと思われます。

以上は理論的な帰結です。
実際に建物が譲渡される場合は,「建物譲渡特約付借地の当事者たる地位」もセットで譲渡されることになりましょう。
つまり,特約も含めて借地契約内容が,建物の新所有者にも承継される,という前提です。
この場合は,地主も承諾しやすいでしょう。
仮に承諾しない→裁判所の代諾許可,となった場合でも,「賃貸人(地主)に不利な事情」がそれほど大きくはない,と判断され,許可が認められる可能性が高いです。
結果的に,以前の特約含めた契約内容が建物の新所有者にも承継されます。

なお,土地賃貸借ではなく,地上権の場合は,「譲渡について地主の承諾は不要」です。
「承諾しないことによる対抗策」は取れません。

2 地主への建物譲渡仮登記がなされている場合
「地主への建物譲渡」が優先,「第三者への建物+借地権の譲渡」が劣後,ということになります(民法177条)。
正確には,優先される内容は「地主への建物譲渡+借地権譲渡(消滅)」となります(借地借家法10条1項)。
借地権の譲渡は,建物譲渡に随伴すると考えられるからです。
結局,当初の建物譲渡特約付借地の契約どおりに,期間満了時に建物の買い取り+借地終了,が実現する,ということになります。

[民法]
(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第百七十七条  不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 (平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

[借地借家法]
(借地権の対抗力等)
第十条  借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。
2~4(略)

(土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可)
第十九条  借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる。
2  裁判所は、前項の裁判をするには、賃借権の残存期間、借地に関する従前の経過、賃借権の譲渡又は転貸を必要とする事情その他一切の事情を考慮しなければならない。
3~7(略)

[コンメンタール借地借家法(第3版)187頁]
借地権設定者は建物譲渡に関する自己の順位を保全するために仮登記を経由しておくことになろう。これを怠って,借地権者から第三者に建物が譲渡されて登記され,借地権も第三者に移転すると,その借地権は建物譲渡特約の付かない普通借地権,一般定期借地権または23条1項所定の事業用定期借地権として扱われることになる。もっとも,その借地権が地上権ではなく賃借権である場合には,借地権設定者は賃借権譲渡への承諾を与えなければよいし,また,19条により借地権者が承諾に代わる許可の裁判を求めても,「賃貸人に不利となるおそれ」のある場合として,許可がされないことが予想されるから,借地権設定者の実害は大きくないといえるかもしれない(ただ,14条により予定より早期に建物を買い取らなければならなくなるという不利益は残るのであり,仮登記をしておくにこしたことはないであろう)。
なお,借地権者として,建物および借地権の第三者への譲渡をスムーズに運ぶためには,借地権とともに建物譲渡人たる地位も当該第三者に譲渡することが必要になろう。その場合には,借地権設定者が仮登記を経由しているか否かにかかわらず,借地権設定者は後日予約完結権を行使してその第三者から建物を買い取り,借地権を消滅させることができるから,借地権設定者の承諾またはこれに代わる裁判所の許可が得やすくなるであろう。

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