「LGBTの働きやすい企業」と「誰もが生きやすい社会」と | 弁護士みなみかずゆきのブログ - ON AND ON -

弁護士みなみかずゆきのブログ - ON AND ON -

南森町の「なんもり法律事務所」の弁護士の南和行のブログです。同性愛を公言するカップル弁護士,弁護士夫夫です。
【法律相談予約・問合せ】
〒530-0041大阪市北区天神橋二丁目5-28千代田第二ビル2階 tel.06-6882-2501 / fax.06-6882-2511
 
 

「LGBTが働きやすい企業」の指針を軸に取り組みをしている企業に金銀銅の評価をする取り組み。授賞式のニュースです。

 

LGBTが働きやすい企業は?国内初の指標、53社が「ゴールド」受賞



まさかの過労自殺認定の電通が「LGBTではゴールド」というのは,いったい全体。「LGBTは働きやすいけど」「過労で自殺する人もいる」という。「人の働き方」という根っこは関係なく,「LGBT」についてのみ評価するということでしょうか。

 

ただ,注意深く考えたいのは「LGBTがどうのこうの」は別にして,一般的な意味での「現実の働きやすさ」と相関していないということは,単なる「企業の宣伝材料に使われるだけの可能性」も秘めているということです。

 

「大企業でもLGBTを差別しない取り組みをしています!」というのは,僕も講演なんかでよく言ってます。それは大企業に縁のない人にとっても「おぉ・・・大企業が差別をヤメたんやから,ワシらも差別したらあかんな」というけっこうな影響があります。

 

当該企業にとっての宣伝材料となるだけでなく,大企業の名前というのは,多くの人の意識へ働きかける強い影響力があります。

 

だから,結論としては,こういう取り組みは,仮に企業の宣伝材料にすぎないとしても,社会における性的指向や性自認の差別を解消する良い影響があるから,ドンドンやってほしいです。

 

それに,現実に大企業がこの取組みをするにあたり,企業の中で「あの,実は私・・・こういう取組みをしたいと考えていて」と声を上げた人たちの勇気,そして曝された嫌な思いを想像すると,胸も熱くなるし尊敬する気持ちもいっぱいです。

 

それでもぬぐい去れない漠然とした心配もあります。「はい、ここまで来ました。一件落着です」となるのでしょうか?

 

地方都市で親に同性愛者だとバレてギクシャクしているけど都会に出られない事情があって死にそうな気持ちで地元で働くしかない人・・・

 

自分の自覚する性別で生きるために無理して家を出て大企業に勤められるような学歴やキャリアを得るどころではなく都会でギリギリの暮らしをする人・・・

 

もちろん,そんな人たちだけでなく身の回りの人から差別されない温かい暮らしを実現できている人もたくさんいると思います。

 

このニュースの「プライド指標」は,LGBTというキラキラ言葉がブームを牽引してきたことの到達点の一つだと思います。そして、この辺りでボツボツと言葉としての「LGBTブーム」は終わるのでしょうか。

 

難しいなぁと悩みます。建設的な気持ちで批判をしたとしても,「南さん,呼んでもらえなかったからひがんでんじゃないの」と思われないかと気になるし。

 

それに言葉としての「LGBTブーム」を牽引してきた人たちも、それぞれ企業や組織の中で、LGBTを理由にした自己否定感に苛まれることも多かったろうと思うと、この様な取り組みの実現は悲願でもあったろうし「ここまで来たんだ!」という思いもひとしおでしょう。

 

僕はもともと「彼氏と2人で弁護士事務所したーい」とごく個人的に盛り上がって、個人的な体験だけで実現でき、そんな中で「LGBTブーム」のおかげで本まで出せて、「性別と法律」「家族と法律」専門家としての発言もできて,パートナーのみならず母親とワイワイ楽しい家族経営の自由業、、、「めでたしめでたし」の身の上です。

 

組織で働く苦労を知らない僕が「企業のLGBTの働き方アワード(賞)」に、何か言えるほど、僕には苦しみの負担はありません。水を差してはいけない立場だと思います。企業の皆さんには心から尊敬と敬意です。

 

蓋を開けることができなかった「性」についての悩みや葛藤を,たくさんの人が次々と蓋を開いて社会にメッセージを投げたことは,少しずつ世の中の安心感が高まったからかなと素直に嬉しいことです。

 

でも「普通の社会」に生きていると,このニュースは「誰それさんの一日警察署長」並みに流れるニュースです。そんなもんです。