「旧皇族の復帰、難しい」園部内閣官房参与 
首相答弁と食い違い

2012.5.22

 女性皇族がご結婚後も皇室にとどまる「女性宮家」創設に向け、政府が21日に開いた「皇室制度に関する有識者ヒアリング」の第5回会合で、主催者側の園部逸夫内閣官房参与は、賛同の意見がある旧皇族の復帰について「なかなか難しい点がある」と述べ、今回議論している皇室典範改正では実現が困難との見通しを示した。島善高・早稲田大教授(法制史)の意見陳述に「私見」として述べた。

 野田佳彦首相は2月13日の衆院予算委員会で、旧皇族の皇籍復帰の検討を求められたのに対し、「有識者を中心にヒアリングを行う。指摘の点も含め、提起をもらいながら結論を出す」と旧皇族の皇籍復帰も検討する意向を示していた。園部氏のヒアリングでの発言は、首相の答弁とは食い違う形となる。

 政府は2月から始まった有識者ヒアリングについて、「皇室活動の安定性の維持」や「天皇、皇后両陛下の公務負担の軽減」に向け、「議論は女性宮家の創設に絞り、皇位継承には踏み込まない」としている。

 園部氏は、島氏が旧皇族が皇位継承権を持つ形で皇籍復帰することを求めたのに対し、「皇位継承資格を持つということになると、(今回は)なるべくそこを避けたいので、なかなか難しい」と述べた。

園部氏は元最高裁判事で、平成17年に小泉純一郎首相(当時)のもと、女性・女系天皇を容認する報告書をまとめた「皇室典範に関する有識者会議」で座長代理を務めた。同報告書は旧皇族の皇籍復帰について「現天皇陛下との共通の祖先は約600年前までさかのぼる遠い血筋」などとして、「採用は極めて困難」と結論づけていた。

 この日のヒアリングでは島氏のほか、小田部雄次・静岡福祉大教授(日本史)が意見を述べ、小田部氏は女性宮家の創設に賛意を示した。

 島氏は、女性宮家創設について「夫や子の身分をどうするかや皇位継承権の問題が生じる」と指摘し、旧11宮家の復帰や、男系男子を養子に迎えられるようにするための皇室典範の改正を求めた。



■皇室制度ヒアリング要旨■

 ▽小田部雄次・静岡福祉大教授


 【女性宮家】内親王や女王が(現存の)宮家を継承する方法と新宮家を創設する方法があるが、できるだけ皇族方の数を増やさないほうがよい。女系天皇に道を開く危惧があるというのであれば、(当主の)夫や子は身分を皇族としない方法もある。

 【旧皇族の復帰】子孫の方々の多くは出生時に皇族ではなく、一般国民として生活してきた。皇籍離脱のときに生まれていない方まで「皇族復帰」とするのは無理がある。

 【皇位継承】現皇室典範では悠仁親王が皇位を継がれることになる。個人的には長子相続を重視するほうがいいと思うが、それは将来の課題としたい。

 ▽島善高・早稲田大教授

 【女性宮家】方法としてはあり得るが、(当主の)夫や子の身分をどうするかや皇位継承権の問題が生ずる。皇室典範改正に向け、国会ですんなり合意するのは難しく、今回の議論からは省いたほうがいい。

 【旧11宮家からの養子】国民にとっては養子は当然の権利なので、皇族方にもあっていい。旧11宮家の男系男子から、本人の意思や皇族方のご意向を踏まえ、養子を迎えられるようにしてはどうか。

 【尊称の付与】女性皇族にご結婚後も皇室関連の活動をしていただくため、「内親王」「女王」の尊称を認めることも考えられる。旧皇室典範ではその規定があった。

産経新聞:http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120522/plc12052200520001-n1.htm





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