創設すべきは旧皇族復帰の「男性宮家」
2011.12.17 20:31

 「女性宮家」創設の動きに対して、保守派から「宮家の当主となる女性皇族やその子供に皇位継承権を与えるとすれば、女系天皇に道を開くから問題だ」との声が出ているが、甘いのではないか。「女性宮家」構想は最初から女系天皇容認とセットなのだ。

 藤村修官房長官は11月25日の記者会見で「安定的な皇位継承の確保」に言及。「女性宮家」創設に前のめりの報道を続ける読売新聞は12月15日付で、年明けから始まる有識者からの意見聴取について「『女性宮家』創設などを含む安定的な皇位継承制度について検討するため」と書いている。

 天皇陛下のご公務をお助けするための「女性宮家」なら「皇位継承」は関係ないはずだ。彼らの言う「安定的な皇位継承」とは、平成17年の皇室典範に関する有識者会議報告書が使った言葉で、イコール女系天皇容認を意味するのだ。

 1日付の日本経済新聞は社説で「将来は、一般の男性が結婚して皇室の一員になるということも想定される。そういった形で皇室を支える覚悟が、国民にも求められるわけだ」と「女性宮家」への婿入りを呼びかけているが、想像力が欠如している。

「女性宮家」に婿入りする民間人男性は、わが国の歴史上例のない妃殿下ならぬ「婿殿下」となる。当主が天皇に即位すれば「皇婿(こうせい)陛下」「皇配陛下」だ。どんなに高潔な男性が婿入りしたとしても、国民感情としてその男性を皇族と認識するだろうか。昨今の「雅子さまバッシング」のように、インターネットの中傷の餌食になるのは目に見えている。そして生まれた子供は神武天皇以来の男系の血筋を継承しない初の女系皇族だ。「女性宮家」創設は宮家の民間化、皇室の解体でしかない。

 本当の意味での「安定的な皇位継承」のためには「女性宮家」ではなく、昭和22年にGHQ(連合国軍総司令部)によって皇籍離脱を余儀なくされた11宮家の男系男子に復帰していただく「男性宮家」しかない。「60年以上、俗にまみれた一族を…」という声もあるが、俗にまみれているのは「女性宮家」に婿入りする民間人男性のほうだ。

 そして、「男性宮家」に女性皇族が嫁がれるのが最も好ましい。

産経新聞:http://sankei.jp.msn.com/life/news/111217/imp11121720320003-n1.htm










「女性宮家」八幡和郎氏、大原康男氏 
2011.12.16 07:18

 現在8人いる未婚の女性皇族が今後、結婚して皇室を離れられるとすると、天皇陛下の孫の代の皇族は秋篠宮家のご長男、悠仁さまお一人になってしまう。そのため、女性皇族が結婚後も皇室に残られる「女性宮家」の創設構想が浮上している。野田佳彦首相は1日、この問題について「緊急性の高い課題」と述べ、検討を進めていく方針を示した。女性宮家創設の是非について、評論家の八幡和郎氏と、国学院大教授の大原康男氏に見解を聞いた。(溝上健良)

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 ≪八幡和郎氏≫

1代限りで認めるべきだ

 --女性宮家創設について

 「賛成だが、皇位継承問題の将来をそれによって限定してしまうのは不適切だ。とりあえず、現在おられる未婚の女性皇族については1代限り、結婚しても皇族のまま、とするのが妥当だろう。ご公務の分担ということであれば、結婚後に『宮内庁嘱託』となって活動してもらうことも考えられる」

候補者はより多く

 --女性宮家の問題点は?

 「夫となる人の扱いが最大の問題だが、夫を皇族にする必要はないと思う。そして男のお子さまが生まれた場合、現存する宮家の養子にして皇族になるようにすべきと考える。ただこうした夫やお子さまの身分については、数年間かけて慎重に検討する必要がある」

 --女性皇族の男のお子さまは女系男子ということになるが

 「万が一、悠仁さまの後が男系男子でつながらなかった場合に、皇位を継承するのは旧皇族か女系か、というのはそう簡単に結論の出る問題ではない。どちらの可能性も残しておくべきだ。いずれの場合でも、現存あるいは最近まであった宮家の養子という形にするのが違和感が少なく妥当だろう。候補者はたくさんもっておくことが大事だ」

 --旧皇族の皇籍復帰についてはどう考えるか

 「未成年の男系男子の方を宮家の養子に迎えて育てるのが現実的なあり方だろう。そうすれば国民にとってもそれほど違和感はないはずだ」

 --女性宮家の創設を認めることの利点は?

 「いろいろな式典で、皇室のどなたかが来てあいさつしてくださるのは十分、値打ちのあること。皇族が海外にどんどん出られることは、日本のファンが増えることにもつながる。国民も皇族と接する機会がそれなりにあれば、皇室に対する敬愛の情が深まることになる。皇族の人数はある程度、増えたほうがいい」

 --女性宮家の範囲について

 「天皇陛下のお孫さんだけではなく、三笠宮さまのお孫さんも、また黒田清子さんも対象とすべきだ。歴史上、皇籍復帰した方は何人もおり、即位までされた例もあることを念頭に置くべきだろう」

 --女性皇族が旧宮家の男系男子の方と結婚された場合は?

 「その場合、夫になられる方も皇族と認めていいのではないか」

皇族方のご意見を

 --皇室典範改正を審議する委員の人選については?

 「与党側だけで決めるべきではない。政権交代で議論が白紙になるという事態は避けねばならず、野党からも元首相らを入れる必要がある。そして公表するかどうかは別として、皇族方や旧皇族のご意見は広くうかがうべきだ」

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 ≪大原康男氏≫

女系天皇につながる恐れ

 --女性宮家構想をどうみる?

 「表向きは天皇陛下のご公務をお助けするため皇族の人数を確保する必要があり、そのためには適齢期の女性皇族に宮家の当主になっていただこう…とのことで国民の耳に入りやすい話だが、実際は女系天皇導入を裏口から入って実現させようとするもので、実に巧妙な議論の立て方だ」

皇位継承の議論が先

 --女性宮家の創設には反対ということか

 「本来は正面から、男系の維持を原則とした皇位継承か、わが国の歴史上いまだかつてない女系天皇という考えを導入するかの議論をまずすべきだ。今回のように皇位継承には触れず、女性宮家についてだけ論じるのは、問題の取り上げ方が本末転倒だと言わざるをえない」

 --これまで男系維持を主張されてきた

「昭和22年にGHQの経済的圧力によって皇籍離脱を余儀なくされた旧皇族の方々の子孫で適切な方に皇族の身分を取得し、宮家を設立していただければ安定した皇族の確保につながる。皇籍を取得された方がすぐ皇位につくわけでもなく、時間がたつにつれて見識や風格も培われることだろう」

 --小泉政権下での有識者会議で、旧皇族の皇籍復帰は「60年近くたっており、国民の理解が得られにくい」と片づけられた

 「過去の例をみると、直系でなく傍系による皇位継承は全体の45%(56方)に及んでいる。皇籍を離脱された方が復帰して、さらに即位した例も2例ある。また、今の皇后陛下のように、民間から入られて永年、皇室になじまれ、敬愛の対象になっている方もおられる現実を考えるべきだ」

 --女性宮家の問題点は?

 「民間出身の配偶者の地位や呼称はどうするのか。お子さまが生まれた場合、女系皇族ということになるが、皇位継承権はどうするのか。女系天皇を認める、というところまで突き進むことになる」

 --女性宮家構想の背景に、未婚の女性皇族方が結婚適齢期を迎えられていることがある

 「それは何年も前に分かっていたことでこの間、適切な提言をしてこなかったのは宮内庁の怠慢。反省の弁があって当然だろう」

宮家の拡充は必要

 --皇室典範改正の必要性は?

「このままでは悠仁親王の代には他に皇族がいなくなることも考えられる。宮家の拡充は必要だが、典範そのものの改正ではなく時限立法で対処するのが適切だ」

 --その際に皇族方のご意見を反映させるべきか

 「現在も皇室会議という制度があり、皇族お二方が議員になっておられる。この皇室会議を通して皇族方のご意見も聞くべきだ」

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【プロフィル】八幡和郎

 やわた・かずお 昭和26年、滋賀県生まれ。60歳。東京大法学部卒業後、通産省(現・経済産業省)に入省。フランスの国立行政学院(ENA)に留学。情報管理課長、国土庁長官官房参事官などを歴任し、平成9年に退官。徳島文理大教授。著書に「皇位継承と万世一系に謎はない」など。

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【プロフィル】大原康男

 おおはら・やすお 昭和17年、滋賀県生まれ。69歳。京都大法学部卒。日清紡績勤務を経て、53年、国学院大大学院博士課程修了(神道学専攻)。同大日本文化研究所を経て、同大神道文化学部教授。専門は近現代皇室制度史。共著に「皇位継承の危機いまだ去らず」など。

産経新聞:http://sankei.jp.msn.com/life/news/111216/imp11121607240001-n1.htm






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