ユノさんが出て行ってから
僕は荷物の整理を再開した

ユンホさんと違ってユノさんは
まったく優しくない
なんで僕が一緒に暮らすと言っただけで
あんなに嫌な表情をするんだ?

クローゼットに服を掛けながら
いろんな思いが頭をよぎる

その時、突然ドアが開いた

ノックの音もしなかったから
僕は驚いてドアの方を見た

「俺、腹が減ったんだけど
   なんか作ってくれ」

そこにはユノさんが立っていて
僕の顔を見るなり
ぶっきらぼうに告げられた

そんな言い方
なんか、ムカつく

料理なんて簡単だけど
もっと違う言い方があるだろう

でも、僕は
スッと息を吸い込んで
気持ちを落ち着かせた  
 
これは、ユノさんの性格なんだから
仕方がない…
そう自分に言い聞かせて
無理矢理
笑顔を作って見せた

「わかりました
    すぐに食事の用意をしますから
    少し待ってて下さい」

そう言って、立ち上がると
僕はユノさんの隣をすり抜けて
キッチンへと向かった

今はもうお昼を過ぎた時間
確かに、遅く起きたユノさんは
まだ、朝食も食べていないんだろうな

少しボリュームのある料理がいいのかな?

そうだ
カルボナーラでも、作ってあげよう

冷蔵庫を覗くと
ちょうどベーコンも生クリームも
ちゃんとある

あんなに不愛想なユノさんも
僕が作った料理は
残さずに食べてくれる

僕の事は気に入らなくても 
僕の料理は口に合うらしい

材料を取り出し
手早く調理を始めた

丁度出来上がる頃
まるで、それを待っていたかのように
ユノさんがキッチンに現れた

「旨そうな匂いだな」

さっきとは打って変わって
ユノさんが子供の様な
無邪気な笑顔を見せ
テーブルに腰掛けた

目の前の料理をあっという間に
ぺろりと平らげると
満足そうな表情でソファに寝っ転がった

「本当に美味かった
    ご馳走さま」

ぽつりとそう言うと
ごろりと横を向いて寝息を立て始めた

その一連の動作が
あまりにも、今までのユノさんと
違って見えたせいか
僕は呆気にとられながらも
何故か可笑しくて
寝顔を眺めながら
思わず、くすりと笑ってしまった