欧州を揺るがす難民は欧米の身勝手が生み出したことを知るべき | 岐路に立つ日本を考える

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 私は日本を世界に誇ることのできる素晴らしい国だと思っていますが、残念ながらこの思いはまだ多くの国民の共通の考えとはなっていないようです。
 日本の抱えている問題について自分なりの見解を表明しながら、この思いを広げていきたいと思っています。


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 大量の難民が欧州に殺到にして大混乱を引き起こしていることは、皆さんもよくご存知だろうと思います。ハンガリーは対セルビア国境に加えて対クロアチア国境にも鉄条網を張り巡らせて、自国内への難民の流入を押しとどめようとしていることに加えて、さらに国境に軍を派遣し、限定的な武器の使用も認めました。セルビアはまだEU加盟が認められていないものの、クロアチアはEU加盟国であるので、EU域内での人の移動の自由を認めたシェンゲン協定は、事実上崩れたと言ってよいでしょう。

 この難民の大量流入に関して、まず見落としてはならないことは、このような無秩序な難民の群れが発生した原因は、中東や北アフリカでの政治状況の不安定化にあるわけですが、そもそもそうした不安定化を引き起こしたのが欧米の利己主義にあったということです。

 反米のイラクのフセイン政権は「大量破壊兵器を隠し持っている」との嫌疑をかけられて、アメリカによって潰されました。実際には大量破壊兵器を隠し持っていた事実はなかったにも関わらず、フセインは逮捕され、死刑に処せられたのは、皆さんもよくご存知の通りです。これがきっかけで中東の軍事バランスが崩れて無秩序化が始まりました。

 2012年に反欧米のシリアのアサド政権が危機に陥った時に、ロシアが穏便な形でアサド退陣を提案した際に、欧米側がこのロシア提案を受け入れなくてもアサド政権はすぐに崩壊すると見て拒絶していたことも明らかになりました。もしロシア提案を受け入れていたら、シリアにおける混乱も今よりはずっと小さいものになっていたでしょう。
http://www.theguardian.com/world/2015/sep/15/west-ignored-russian-offer-in-2012-to-have-syrias-assad-step-aside?CMP=share_btn_tw

 反欧米のリビアのカダフィ政権はNATOの空爆によって崩壊させられるなど、北アフリカでは「アラブの春」が吹き荒れました。カダフィは1970年に欧米資本の石油会社の国有化を断行したことから欧米からにらまれるようになりました。彼はリビアが資金の大半を提供することで、アフリカ独自の通信衛星ネットワークを持てるようにし、情報分野で欧米から自立しようとしました。アフリカ通貨基金などの金融機関を設立し、ここに欧米の資本を入れないようにして、欧米の金融支配からアフリカが抜け出す道を進めようとしました。こうした動きを欧米は好まず、カダフィ政権は転覆させられたわけです。
http://www.jca.apc.org/~kitazawa/undercurrent/2011/khadafi_plan_for_africa_.htm

 このように欧米の都合で安定政権の転覆が図られ、政治状況の不安定化がもたらされたことが原因となって難民の大量発生が生み出されているわけです。

 ここから汲み取るべき私たちの教訓は、武力にせよ、巨大な資本力にせよ、力を背景として現状変更を他国に迫るような政治手法は誤りだということです。欧米は自らが正義の立場にあるかのような顔をしてこれまで様々な現状変更を迫ってきましたし、中国も力を付けるにつれてその傾向を激しくしてきました。力による現状変更は悲劇と不安定化の玉突き現象を生じさせるのだということを、われわれは忘れるべきではないと思います。


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