極めて危険なマイナス金利の導入 | 岐路に立つ日本を考える

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 私は日本を世界に誇ることのできる素晴らしい国だと思っていますが、残念ながらこの思いはまだ多くの国民の共通の考えとはなっていないようです。
 日本の抱えている問題について自分なりの見解を表明しながら、この思いを広げていきたいと思っています。


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 日銀がマイナス金利導入に踏み切りました。市中の金融機関が日銀に預ける日銀当座預金を3段階に分けて、ごく一部だけにマイナス金利を適応するということになっています。運用上、マイナス金利が適応される部分はほとんどゼロではないかとは思われますが、それでも金融政策の歪みがここまで来てしまったことには危機感を覚えます。

 これまでの異次元の金融緩和において、本来金利ゼロであるべき日銀当座預金(市中の金融機関が日銀に預ける預金)には0.1%の金利が無条件に適応されてきました。これは日銀が国債を買い進めるためには、市中の金融機関が国債を手放す気になる条件が必要だったからです。国債を日銀に売ってしまった後に金利がゼロとかマイナスになるのであれば、市中の金融機関は日銀に国債を売らなくなってしまいます。これでは日銀が国債を買い進めることができなくなってしまいます。このあたりの事情は日銀もよく理解していて、日銀に国債を売却した結果として増えた日銀当座預金残高には、これまで同様に0.1%の金利を付けるつもりでいるようです。

 ただ、日銀当座預金残高は市中の金融機関の貸出のベースとなるものなので、増えた当座預金をベースに市中の金融機関が企業や個人に対する貸出をなかなか増やしていかないとすれば、金融機関の貸出の積極姿勢が足りないとみなして、当座預金の一部にゼロ金利やマイナス金利を適応するようにするという仕組みに切り替えるというものです。このようなプレッシャーを金融機関に掛ければ、金融機関は何としてでも貸出を増やすだろうというのが、日銀の考えている話です。

 これは市中の金融機関の側から見れば、これまでの金融緩和でも貸し出せなかった怪しい貸出であっても何とか増やせという圧力になるわけです。一般の企業は、需要不足のデフレ経済下では今借り入れを行って設備投資を行っても過剰投資になって意味がないと判断して借り入れを行っていないわけですが、このような現実を無視しているとしか言いようがありません。

 通常の設備投資に対する資金需要がない中でも貸出を増やせと言われたら、株や土地の値上がりを求める投機資金需要への貸出を結果として増やすしかないでしょう。これまでもアベノミクスは投機資金需要への貸出を増やすことで株高を演出してきました。株価が上がれば株を持っている人たちは手持ち資産の価格上昇によって財布のひもが緩むわけで、これによって景気を引き上げるという策を講じてきました。手短かに言えば、バブルを生み出すことで景気回復を図ってきたのがこれまでの金融政策だったわけです。そしてこれをさらに強化しようと言うのが今回のマイナス金利の導入ということになります。つまり、バブル創出的な貸出をさらに強化させようというのが今回の処置の実際です。

 一国の経済力が着実に増加し、それに比例するレベルで株価や地価が上昇するのであるならば、その経済は健全だと言えるでしょう。しかしながら、株価や地価を引き上げて、そのおこぼれで一国の経済力を引き上げられないかというのは、発想の観点で逆転しているわけです。

 国債を積極的に増刷することはいかなる経済環境でも許されないという思い込みから脱却しない中で、より歪みの大きい政策に踏み込んでいることに、非常に危険なものを感じます。中国の経済崩壊ばかりが眼につきますが、欧州(とりわけドイツ)の変調が見過ごされているかと思います。今の日本に求められるのは、中国や欧州が暴発してもそのショックを受けにくい経済を築くことであり、そのショックを受けやすい経済を避けることではないでしょうか。分厚い内需に支えられた日本だからこそ、その強みを活かした経済運営ができるし、そしてその強みを活かした経済運営を行うことが世界経済に最も貢献する道だということに未だに気がついていないことに、ショックを覚えました。


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