診察しないと分かりません:美容医療におけるメール相談の問題点 | 美容外科開業医の独り言

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美容医療とは人間愛!という信念で仕事をしている美容外科医のブログです。
レーザーなど最新の美容情報や普段の診療で感じたことなど、ぼやきを交えながら書いていきます。
外見だけではなく心も綺麗になり、自信が湧いて幸せになれる、そんな美容医療を目指しています。

当院ではクリニックホームページ上で、メールによる相談を受け付けております。
一般的な内容に関して、差し支えのない範囲で回答をしているのですが、回答しても不満足だとかなり辛辣なメールを頂く事がありますし、より詳細なことを聞かれて答えに困窮することもあります。

診察もしないで、どのような状態なのか本人の文面だけで判断し、その上で治療方法や費用、改善の度合いを答えることはできませんし、それで済んでしまうなら、医療において診察やカウンセリングという行為は必要なくなります。

車を売りたいときの査定でも今やネットで受け付けている時代です。しかし実際には車を見て、傷がないか、状態はどうなのかを確認しない限り査定額は出ません。車種や年式を聞いて、本人の申告でドアに少し傷があるだけとか、それだけで査定額を決めて車を買い取ってくれる業者さんはいないでしょう。売る側が大したことがないと思っている傷でも、実は重大な欠陥につながる傷・へこみだってあるのです。エンジンが快調と思っても、実際にボンネットを開けてみると故障寸前のことだってあります。

生き物である魚などではもっと差が大きくなります。同じ「まぐろ」でも、個別に味・脂のノリは違うでしょうし、産地・保存状態にもより違いがあります。「まぐろ」としての味は共通ですが、どんな「まぐろ」でも同じ味ではありません。その「まぐろ」がどれくらいの大きさなのか、何を食べて育ったのか、どのような回遊をしてきたのか諸々で大きく違います。切り身なら、その部位によって筋っぽかったり脂が違ったり、冷凍したのか生なのか、言いだしたらキリがありません。

自分が魚屋だとして、見ず知らずの人が「近所の魚屋でまぐろを買いました。美味しいですか?」と質問したとします。産地や部位、見た目など素人が可能な範囲で文章にして伝えてこられても、おそらく回答としては実際にそのまぐろを見せてほしいと言うでしょう。それに自分の店以外で買ったものをどう答えていいのか、、、、悩むはずです。
そして食べてみないと結局のところ味は分からないのです。

肌質も違えば傷の治りも違う「人間」において、実際に診察してみないと答えられないことは多いですし、治療しても結果には個人差があります。
生きている「人間」は、ネットや電話でのやり取りだけ、それも本人の申告だけで全てが分かるものではありません。

延々と答えを求めてきて、自分の納得する回答となるように何回もメールを頂いても答えることはできません。時には(お会いしたこともないのに)誹謗中傷されてしまうこともありますが、やはり「医師として」回答する以上は調子の良いことばかり、本人にとって都合の良い答えになるようなお返事はできません。


メール相談は一般的な内容や当院での治療ご経過・相談に限ります。他院の治療後の経過やトラブルの相談、診察もしないセカンドオピニオンはできません。