貴乃花親方が「親睦というなら土俵の上で力いっぱい正々堂々と相撲を取ることが親睦ではないのか」という話をしていた。
そこは本当にその通りだと思う。

 


僕は「飲みニケーション」に対してやや懐疑的な考え方をしている。
有効ではある、けれど必須ではない。



最近の若い役者さんは稽古後の飲みにあんまり行かないそうだけれど、別にそれでいいと思う。

「飲みの席でなら演出家さんの話をいっぱい聞ける」かもしれない。
でもそれってどうなのか。
必要なことを稽古時間内に言えていないならそれは時間配分が悪いだけのことだ。
遠回しにでも作品づくりに関係する話なら全員が聴ける場で語られるべきだろう。

かく言う僕も時間が足りなくて飲みの席でダメ出しをする(来ない人にはLINEで)なんてことはしょっちゅうあったけれど。



若い演劇人にとっては居酒屋での出費もかなりの負担なのである。
劇団が大変だという計算は以前書いたけれど、個人だって大変だ。

仮に月収が15万円としてみよう。
家賃・光熱費・水道代・交通費等、ほぼ固定で出ていく出費が合計9万とすると、残り6万。
食費を1日1000円で済ませば残り3万。
この3万円で「観劇代+交際費(飲み代)」をまかなわなければならない。

すると、週に1回の観劇と週に1回の飲みがせいぜい、というところである。
貯金などできない。
チケットノルマをクリアできず自己負担したりすると、もう本当にカツカツだろう。

もう一線を退いた僕でさえ、11月末時点で2017年は33本、月平均3本の演劇作品を観ている。
現役の役者が人間関係を大事にしたらおそらく月6本でも足りない。
月6本の観劇をしていたらもう稽古後の飲みになどほとんど行けない。

時給のいい深夜バイトを選ぶ人が多いのも頷ける。

あと、カップラーメンを主食にしてしまうのも頷ける。
おいしいっていうより安いからだ。
ぜったい体に悪いからやめたほうがいいぞと僕はずっと思っているのだけれど。



と、そんな風にギリギリのところで飲み代を捻出している人は少なくないはずだ。
飲みニケーションありきで物事を進めていくのはよろしくない。

そして、2~3回分の飲み代があれば「知り合いの出ていないトップクラスの演劇」を観に行ける。
今、何に投資すべきか――若い人にはよく考えてほしい。