2014.5.23開催「やってみよう!じぶんごとプロジェクト」第4弾レポート(2/2) | 武蔵野市市民活動かわら版のブログ

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武蔵野市市民活動推進課と協力して、武蔵野市の市民活動を楽しく元気にするグループです。

身のまわりの気になっていることを「ひとごと」ではなく
「じぶんごと」として考え、形にしてみよう!
という「じぶんごとプロジェクト」。

第4弾のイベントテーマは、「やわらかアタマでまちづくり」。
スピーカーは、饗庭 伸(あいばしん)さん
【首都大学東京 都市環境学部 准教授】
にお越し頂きました。

イベント前半は、首都大学東京大学院の授業で学生さんが
開発したカードゲーム「みんなでまちづくり!」をみんなで体験、
後半は、饗庭さんからなぜこのゲームを作ったのか、
まちづくりとは?というお話をしていただきました。

本日はその後半の饗庭さんのお話をご紹介します。


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それではここからは、私と学生がなぜこのゲームを作ったか
についてお話したいと思います。

私は、都市計画の専門家です。
学生たちは、建築・設計を勉強しています。

都市というのは建築の集合ですので、
授業の中では「世の中には良い建築と悪い建築がある」という話をします。

デザイン性や快適さといった様々な価値観はありますが、
学生たちには、良い建築を作りましょうと教えているわけです。

ただ、皆がそれぞれ良い建築を作っても、それが集まったからといって
必ずしも良い都市になるとは限らないのです。
ちょっとひねくれたことを伝えています。

まずは、これをご覧ください。銀座の街の写真です。


銀座にはお金が集まり、高い家賃を稼げるので
世界中の有名な建築家が建物を作ります。
良い建築が集まっているはずですが、こうして上から見るとめちゃくちゃです。

一つひとつは素晴らしい建築だとしても、
皆がバラバラに自分が良いと思った建物だけを作っていっては、
良い街にはならないという問題意識がありました。

では、どうしたら良いのでしょうか。

建築家というのは、空き地を持っている人に仕事を頼まれます。
「僕の土地に僕の喜ぶ建物を建ててね」と言われ、
依頼者の好きそうなものを作る。それが建築家の仕事です。

でもそういう仕事をしていては、街は良くならないのです。

良い街をつくるということは、
「あなたの土地をこうすると皆のためにこんなに良くなるよ」
と提案することなのです。

他人の土地ですが、街のためになりそうなことを
とりあえず提案しちゃえ!という精神が大事なのです。

私が取り組んだ事例を紹介します。

国立市に古い空き家がありました。
近所に住む住民と建築家になった教え子は、毎日この空き家の前を通りながら
「この空き家もったいないな」と思っていて、
ある日私のところに何とかしたいと相談に来ました。

調べてみると、その家の所有者は、たまたま私の遠い知り合いでした。

そこで、建物の活用方法を提案させてほしいともちかけ、
許可をもらいました。

建物についてや空き家周辺の人の動きなど、3カ月ほどかけて状況を調査し、
学生たちにも「この土地がどうなったらみんなが幸せになれると思う?」
と聞いたり、ワークショップを開いたりしました。

「掃除が大変」という所有者の声にこたえて学生たちは庭の草取りや
掃除を行いました。

そのあとのビアパーティーには近所の方にも声をかけました。
また、その家には歴史が詰まっていることがわかり、
その土地に昔から暮らしている方々を招いてお話を伺ったりもしました。

そして、提案書を作成し、金銭的な相談もクリアして、実行のOKをもらいました。

1年ほどかけてプランを実現させ、
完成後にはオープニングパーティーを開きました。
関わってくれたたくさんの人とお祝いをしたのです。

この事例は、誰が持っているか分からない空き家に対して勝手に提案をした、
それがうまくいったものです。

頼まれてもいないのに勝手に提案した、ということですが、
それがすごく大事かなと思っています。



今回のゲームは、人の持っているものに対して、
提案を作って出す力を鍛えるというものだったんですね。

自分の考えをプレゼンテーションし、いいね!と言ってもらうまでを
体験してもらうものでした。

このゲームでは、まず始めにどこのまちを考えるのか、場所を設定しました。

その次に人物を選んでもらいました。都市は皆のものです。
誰かの立場になりきって考えることで提案の質が上がっていきます。

ツールカードはたった5枚しか配りませんでした。
しかも、ろくでもないものばかりがきたと思います。

でも、それが現実なのです。
まちづくりは、皆が持っているものを出し合うしかないのです。
資源は限られています。

そして、テーマカードは抽象的な写真を選びました。

これは夢が大事ということです。夢がないとつまらないのです。

例えば、排水路が詰まっているとか、公園に犬の糞があって困るとか、
苦情ばかりが重なっても良い街ができません。

この街でどういう暮らし方がしたいのか、どんな風にしたら面白いのか、
といった夢を持たないと都市は良くなっていきません。

そして、自分の提案を相手に伝えるということも必要です。
実現するための手段を考え、手持ちの資源で何ができるかを想像して、
お互い出し合っていく。

最後に、コインを使って投票をしてもらいましたが、
これも意味がありました。決めることが大事だということです。
前に進むためには、エイヤッと思い切って決めることが必要なのです。

私は、これをぐるぐる繰り返すと良い都市ができるのではないかと思っています。
武蔵野市は結構良い街だと思うので、
色々やってくれると面白いかなと期待しています。

今日のゲームが皆さんのまちづくりに何か役立てば嬉しいです。
本日は、どうも有難うございました。