タマネギを剥く猿の涙 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

猿に・・玉ねぎを与えたらどうなるか・・・野人が中学の頃だったか高校生かは忘れたが、どうしても確かめたかった。どこの猿かも忘れてしまったが、猿から学んだことは覚えている。猿の餌付けで有名な大分の高崎山には売店の横の木で人間を物色、観光客が買ったお菓子などをふんだくる不届きものの猿がいる。目を睨んだまま黙ってポケットに手を突っ込みかっぱらうのだ。厚かましい事この上ない。脳天を思い切り拳で「ボカ!」と殴りつけていた。あちこちに猿がいたので何処だか忘れてしまったが。タマネギを手にした猿は期待に胸を膨らませ、皮を剥いて剥きまくる。当然・・涙が溢れ出て来る・・

それでも目をしばたかせながら一点集中して一枚一枚皮を剥く。よく観察すると、タマネギが小さくなるにつれて猿の顔に焦りが浮かぶ。やがて・・・最後の皮を剥き終えて、そこには何もないと知った時の猿は一瞬首をかしげ、そして落胆した。そしてこちらを向き、歯を剥いて「キ~~~!」と怒り出した。猿には、悪いのはタマネギではなく、おちょくった野人だと理解する力があった。怒り狂うのだが向かっては来ない。その悔しさを、猿の涙が・・・物語っていた。お詫びのしるしにミカンを与えた、一個・・・

猿はどうしたか・・・ミカンはいつもかっぱらって食べ慣れているはずなのに、横から見たり裏から見たり確かめていた。野人の方をチラチラ見ながら・・仕掛けがないか疑っているのだ。何もないとわかると皮を剥いて食べ始めた。礼も言わずに・・・

猿から学んだこととは、猿は明らかに学習能力が優れ、厚かましい割には疑り深い・・という事だった。だから人は街に出没した猿の捕り物に手こずるのだろう。