創作。
高校生の頃はノートに誰が読むでもない小説を書きなぐって悦に入り、
大学生の頃は自主映画の真似事を始め、
大学を出てふわふわしてた頃はバンドをやったり演劇をやってみたり。
それからだんだん仕事も忙しくなり、アイドルオタクになってからはほとんど自分からなにかを生み出そうとすることはしなくなった。
そんな僕が、アイドルオタクとして知り合った人たちと一緒に同人ゲームを作ることになり、シナリオを書いている。
『キミを見つけた、ヒカリを灯すうた。』というタイトルだ。
アイドル現場を舞台にした、アイドルと、オタクたちのおりなす悲喜こもごもの物語。
一応ラブストーリー…ではあるけれど、それだけではなくて、僕らがこの約10年で目にしてきたアイドル現場の色々な「あるある」ネタを盛り込んでいる。
たぶんこれは、僕らにしか書けないもので、そして今しか書けないものだろうと思う。
創作は往々にして、つらく、苦しい。
かつて演劇をやっていた時も、ひとりで台本を書く時間はつらく、稽古場でうまく演出が形にならない時もつらく、小屋入りしてからの準備もつらく、何度も「辞めよう」と思った。
でも、ステージに立ってお客の反応を全身に浴びている瞬間はえもいわれぬ楽しさがあり、苦労をともにした仲間と打ち上げで飲むお酒はなによりおいしかった。
それで、なんだかんだ5年続いた。
今。
創作を辞めてから10年近く経って、僕は再びペンを取った。
やはり苦しい。
打ち合わせでみんなでゲラゲラ笑いながらアイデアを出し合うのは、楽しい。
が、それを家でひとりキーボードに向かってまとめていると「これは本当に面白いんだろうか」と疑問がわいてきて、全身をかきむしりたくなるような不安に襲われることもある。
何度か行き詰まり、多くの人に迷惑をかけた。
ねるすさんの書く曲はどれもクオリティが高く、シナリオも彼と一緒に練り上げ、色々助けてもらった。
りんご太郎さんの描くキャラクターはとても魅力的で、絵のチカラに筆が引っ張られていく感覚があった。
プロの構成作家であるハジメさんにも途中から加わってもらい、力を貸してもらえることになった。
仕事が忙しい中スクリプト組みをやってくれたK茶さん、僕らが苦手とする宣伝の協力をしてくれたみなみさん、取材して作品を取り上げてくれた宗像さん。
みんな、アイドル現場でオタクとして知り合った人たちだ。
すごいなぁ。
そして、僕の書いたシナリオにセリフをあててくれた声優の方々や、作詞、映像、イラストなどで関わってくれた多くの方々。
色々な人の支えがあって、まずはこの夏、ゲームの体験版を出せるまでにもってくることができた。
先日、完成した体験版をプレイした。
自分にとって、面白いと信じられるものが形になってきている実感があった。
企画の立ち上げから足かけ2年。
本編の完成まであと1年。
長いようであっという間だ。
8/10(金) コミケ94
西れ66a「ガチ恋ファクトリー」のブースで、お待ちしてます。
<余談>
色々あって心が折れかけていた時に『カメラを止めるな!』という映画に出会った。
製作費300万円。無名監督・無名キャストによって作られたインディーズ映画でありながら、その内容の面白さから全国で満席続出の大ヒットを記録している。
内容はネタバレに繋がるので詳しくは言わないが、この映画を見て、僕は背筋が伸びる思いだった。
「人生のカメラを止めるな!」
これは舞台挨拶で役者のひとりが言った言葉。
年を重ねて、疲れて、人は色々なことをあきらめてゆく。
それでも、目標に向かって走り、動くことをやめなければ、きっとなにかが変わる。
それは世界が動くような大それたものではないかもしれないけれど。
初めて演劇の舞台に立った日の晩に仲間と銭湯で「どうすればもっとウケるだろう」と裸で話し合った夜とか、
自主映画の撮影で通行人から白い目で見られながらもカメラ片手に街を駆けずりまわったこととか、
バンドを組んで2度目に出演したライブハウスのコワモテの店長から「よくなったよ」と褒めてもらえた時のうれしさとか、
たくさん思い出した。
もうちょっとだけ、走ってみようと思う。