この小説は古高俊太郎の
本編捏造版です。

似ているかもだし、
なんか違うかも。



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古高俊太郎編




「計画を断行するぞ」


「へぇ」


私はこの状況を呆然と見ることしかできなかった。



ーーー…



「きゃ…っ!」



青い龍のように雷が一瞬で光った。離れようとした体が瞬間に枡屋さんの方向に傾く。


本当は恥ずかしかった。

だけど現代より大きな音の雷が頭に響く。震える手を枡屋さんがゆっくり包み込んでくれた。



「はは…かいらしい子猫や。大丈夫。怖ない」



枡屋さんの甘い男の人の声が耳元で響いた。その声があまりに色っぽくて、顔が熱くなる。

枡屋さんはそれを見て苦笑した。



薄暗い稽古場を群青色に染め上げる。その中でいろんなことを考えた。



高杉さんと話をしていた枡屋さん。
その瞳はぞくりとするほど怖かった。何か覚悟のあるような、強い目線。

高杉さんは立ち去ってしまったが、それは壬生浪士組に尋問をされたから。それは枡屋さんと何か関係があるのか。



まるで犯罪の計画をしているかのような…

昨日のような枡屋さんはどこへいったのか。



優しい人なのか。悪い人なのか。
私はよくわからない。



「すごい雷や…。近くに落ちたかいな…」



枡屋さんは雨がふる青い空を眺めていた。
その瞳は、綺麗で……怖い。

なぜか、怖かった。



「…枡屋さん」


「へぇ、なんでっしゃろ」


「……」


「志春はん?」


「…いえ」



聞きたい事は沢山ある癖に、何も聞けない。聞いてはいけない気がした。この人の隙間には入れない気もした。

それに、聞いてもまともに答えてくれないだろう。

枡屋さんは絶対に普通の町人ではない。


どれが本当の枡屋さんなのか、わからずにいた。



「…‼きゃっ‼」



さっきよりも大きな雷が落ちてくる音。



肩にある大きい手がぎゅっと体を引き寄せる。



「おさまるまで、ずっと傍におるよ。大丈夫や」



どきん、どきん、と胸の高鳴りが抑えられない。



…だめだ。太夫の好きな人だ。



私はただの名代で…。



私は、何もできない。



枡屋さんが触れる指先からは熱が伝わる。



そのままでいたら、なんだかどうにかなってしまいそうで怖くて…だけど傍にいたくて…。



「志春はん」


「…はい」


「ここで会ったことは…忘れなさい」


私はただ、肩を抱く彼の妖艶で、綺麗な瞳を見つめる事しかできなかった。