猫木の変な挑戦『いろんな敦賀さんを書いてみよう。』
困惑混沌の朝。から派生する続きのひとつ棲み付く彼。の続きとなっております。


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ギリギリに乗り込めた最終フライトの飛行機を降り、ゲートを抜け愛車を置いた駐車場へとキャリーケースを引きながら向う途中、ピリッと頭痛が走る。
断続的に続く痛みにうんざりしながら夜道に車を走らせ辿り着いたマンション、慣れた筈の駐車場に車を停める頃には、ガンガンと酷くなっていた頭痛。
慣れきった筈の生活感のないホテルのベッドで寝不足になるだなんてな……食欲だけでなくもはや睡眠まであの娘に握られてしまったのか、などと考えながら取り出した財布の中の二枚のカードキー、少し頭痛が薄らぐ。
開いた扉の先、ちまっと揃えて置かれている予想もしてなかったリボンの付いたパールピンクのパンプスに、頭痛なんてものはすっかり弾き飛ばされて消え失せていた。
奇妙なことに自宅の筈の廊下をまるでこそ泥のように気配を殺して進み、そぉっと開けたあの娘に使ってもらっていたゲストルームのドア。
だけど、微かに使用した形跡の残るベッドの上に思い描いたひとは居なかった。
ドキドキと妙な期待と不安を胸に向かった寝室、最近はなかなか使用してなかった俺のベッドの隅っこにちまっと丸く小さく俺の枕を抱くようにすぅすぅと眠る君。



あぁ、もう………君は、俺を殺す気か?
かわい過ぎて心臓がもたない。




あの日の朝、最上さんが出て行く気配で飛び起きて捕まえた細い腕。切羽詰まった様子だったけれど、ほんの一言でも……せめて、この気持ちの欠片だけでも告げようと口を開いた俺を必死で仕事に行かないとと遮る君。
けれど、まるで告白の言葉を告げればこの部屋のベランダから飛び降りてでも逃げ出しそうな勢いの、キョドキョドと泳ぐ小動物のような視線。
俺の存在を消し去ることなく、恥ずかしげに染まった頬。
泣き出しそうな瞳に怯えと……微かに灯る熱を見つけて、決めた。
そうと決めれば、今、慌てている最上さんの混乱に乗じて仕舞おう。
そう、オートロックに慣れぬ最上さんが扉から出るだけならスペアキーはいりませんよ?なんて事に気付かれぬ内にね?



その日の内に、とりあえず駐車場の契約は済ませた。
このマンションから手近な所で、でも、マンションの地下ではなく、少し離れた所に。もちろん、ガレージなんかではない所を。
まぁ、最上さんにそれがバレた時は驚かれたし、叱られた。
「敦賀さんのお車は、それでなくとも滅多に走ってない高級車と呼ばれるとっっっても目立つものなんですよ!?」
まぁね?知ってるよ。
あの車はダメなの?じゃぁ、新しく買い換えるか……それとも、中間に乗り換え用の目立たない車と駐車場を用意しようかなぁ?なんて、ボソッと零してあげれば、俺の無駄な新車購入を止めるのに必死になってくれる最上さん。企み通りに有耶無耶の内に言いくるめて、いつものあの車でここへ通う。マスコミなんかに余裕でナンバーも抑えらてるのは、勿論承知の上で……ね?
最上さんは、いつも俺にアルコールだけを摂取するのはいけないとお小言をくれるから……おつまみ買うようになったよ?
ここの近くのコンビニで、変装用のメガネもマスクもなしで。
あぁ……当然言うまでもなく、俺はアイツと違って最上さんを家政婦だなんて思ってもないし、そんな風に思わせたくもない。
だから、最近は朝とかにちょくちょくと彼女の城であるキッチンにも入り込ませてもらっている。
先生が優秀だからね?なんとかトーストとサラダにスクランブルエッグくらいなら俺も作れるようになったよ。今は、オムレツを修行中。
同じ部屋で暮らし、同じバスグッズを使っているから、移香に気付かれた社さんなんかには「エゲツないな…」なんて言われたけど、そんな事は大した問題ではない。




そんな生活な中、2週間の予定だったロケ。
いつも理性との闘いとセットで抱き込んでいたぬくもりも、最上さんの気配さえないホテルのベッド。浅い睡眠しか取れなくて纏わり付くようになっていた頭痛。
予定より早めに終わった撮影。飛行機は手配出来たけれども……時間はどっぷりと深夜帯。まさか、こんな時間になんの連絡もなく彼女の部屋に乗り込むなんてことも出来ずに、久しぶりに帰り付いた自宅。
深く眠り込む最上さんの頬を撫でながら「どうしてこんなとこで寝てるのかな?」と、返事も期待してないつぶやきを零せは
「ん……んぅ?こ…こなら、敦賀さんの……匂いがするから……寝れるの。」
むにむにと眠ったままのかわいい唇が答えてくれた。きっと、予定通りに俺が帰る頃にはこの部屋に来た痕跡すら残すつもりもなかっただろうにね?
恋愛拒絶の鉄壁ガードだと思っていたこの娘は、一旦その内側に入り込んで仕舞えば結構隙だらけだった。
それはそれで、心配でもあるけれど………じわりじわりと侵食するみたいに、尊敬の更に上の崇拝なんて高いところに置かれた俺を引きずり下ろして一緒に過ごして、触れて、抱き合って眠るのさえ当たり前みたいに思えるくらいに、油断させてやろう……
最上さんが俺の気持ちを理解する頃には、逃げようと思っても手遅れなくらいなまでに囲い込んでしまおうと、そう決めていたんだけど、これは………
君も俺がいないと眠れなくなってくれたの?
とりあえず、最近の睡眠不足を解消する為に入り込んだベッドの上、そおっと起こさないように……でも、逃がさないように最上さんを抱き込んで瞼を閉じた。





もう少し…また少し……囲い込むこの腕を狭めても逃げないでいてくれる?
明日、目が覚めたら………覚悟してね?





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敦賀さんの奇行ネタストックがなくなって……いや、もうそろそろなくて当然かもしれないくらい書いちゃった気もして放置しておりましたこのシリーズ。
なんとなーーーく、猫木が思い付きましたネタ。


「今までのは、既成事実を盾に短期決戦一気になんとか騙し討ち☆みたいのが多かった気がするので、既成事実を越えてさえ、石橋叩くが如くにじっくり腰を据えた長期戦な蓮さん。」


ってのを書いてみようとしてみましたら………
なんだろね?もうくっついちゃえよ、まどろっこしいみたいな?
(^▽^;)



↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。

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