the sunshine underground -6 | ワールズエンド・ツアー

ワールズエンド・ツアー

田中ビリー、完全自作自演。

完全自作、アンチダウンロード主義の劇場型ブログ。
ロックンロールと放浪の旅、ロマンとリアルの発火点、
マシンガンをぶっ放せ!!

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 何かが変わろうとしている、それは力による強制的な変化だろう。
この島を善意によって救うなどとは誰も考えてなどいない。
ここは病巣なんだ、ディータはいつかそんなふうに表現したことがある。
それは俺たちではなく、外から島を見る人々にとって、だ。
 ディータはラジオに耳をそばだてている。砂嵐とともに揺れる音、指先の神経を尖らせてチューニングを繰り返す。最近は日課のようだ。
そうやって外界の情報を得る。
そのほとんどは俺たちには無関係なことだ、株価がどう、どこかの国の内紛、そして殺人事件。
欠伸をする、遠慮なんかしない。
そうか、この島以外では殺人は重罪なんだ、同じ言葉を使っていても、その感覚のずれは埋めようもない。

「なにかマシなニュースはあったか」
 ディータは無言で首を振る。そして小さくため息をつく。
 知りたいことはひとつだけだ、謎の奇病の発生源がこの島だという噂が流れてる。

 サンシャイン・アンダーグラウンドには定期視察だと称し、本国の役人たちがモスグリーンのヘリであらわれる。
連中はいつも高価そうなスーツ姿で、マスクをし、何に触れるにも手袋をしている。
病巣、そう思うんだろう。事実は俺には分からない。ここでは人の死は珍しくもなんともない、死因を調べるヤツもいない。
 生きているか死んでしまったか。
それだけだ。
俺たちの世代のなかには本国へ帰還しようと考える者も多い。
それはしかたない。だが、誰もそれを実行できない。受け入れてもらえず、しかたなく島へ戻ってくることになる。

 ディータも……いや、ディータはそんなふうに追い戻された連中とは別の手段でニホンに潜入しようとしている。
ここに生きる全ての人々の権利と生存を主張したい、そんなことを真剣に話すときがある。
 ニホンの人間としての名前を持ち、教育を受け、別の人間に生まれ変わるつもりなんだろう。
 できるかどうか、それは俺には分からないし、なぜそれを望むのかも分からない。

 一度だけ聞いてみたことはある。
「ディータ、お前は本気でニホン人になれると思ってんのか」
「できないと思う。正規の手段ではね。サンシャインアンダーグラウンドのディータではなく、まったく別の人間になりすます以外にないだろうな」
 僕らはここで生まれたんだよ、この国籍や人権さえ持てない国で。
ガゼル、ずっとここには生きていけないって分かってくれよ。
僕は自分だけ逃げてやろうなんて思っていない。
きっかけを作りたいんだ、どんな環境に生まれても、人はきっと意思さえあれば生まれ変われるんだって自分で証明したい、それだけなんだ。
 俺は黙って頷いた、その先のディータの話はよく覚えていない。
 ただ、ヤツはその理想を遂行するべく、懸命に生きている、それだけはよく分かった。

 俺とは違う。
ディータはこれから先を生き延びるために生きている、だけど俺は……俺はガゼルと言う名を捨てる気がない。
 あの鉄塔の頂から俺たちを眺める連中を引きずり落としてやりたい。
それだけだ。
それまでは死ねない。

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……the sunshine underground...
“first half” the end.
to be next...
“second half”.