the after years. part 10 | ワールズエンド・ツアー

ワールズエンド・ツアー

田中ビリー、完全自作自演。

完全自作、アンチダウンロード主義の劇場型ブログ。
ロックンロールと放浪の旅、ロマンとリアルの発火点、
マシンガンをぶっ放せ!!

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the sunshine underground / after life

  ジタン、もう一人生きてるんだ、所在は分からないし連絡もついていない、でもな、俺の友人もやはりアンダーグラウンドに向かっている。
  ディータ、お前も島へ向かってるんだろう、俺たちはまた、あの地で再会するんだ。

「小綺麗になっちまいやがって」
  かつての面影をどこかに探しながら新たに建造された都市のメインストリートをゆく。
「いまはもう、サンシャイン・アンダーグラウンドなんて呼ばれてないんだろうな」
「呼び名はばらばらなんだ、もうニホンなんて名前の国もなくなるかもしれない、軍の侵攻を受けてから国家の存続が危うくなって、そのときにマフィアや移民たちが大量に流入してきた、純粋種のニホン人は山村部や地方都市に逃げるしかなかった、そこで小さなコミューンをつくってるって聞いたことがある」
  そうか、俺は屈託なく話す少年の顔を眺めた、黒髪の黄色人種だが、その目は薄い茶で、何種かの血が混じった人間だと分かる、踵でリズムを打つような独特の歩き方もニホン人ではない。
  だが、彼は自らをニホン人だと言う。生まれた国を祖国と表現するのに人種は関係がないはずだ、俺にとってのサンシャイン・アンダーグラウンドがそうであるように。

  ジタンはトーキョーを拠点にする、ある「ファミリー」の一員なんだと言う、ギャングのことだろう、左手の甲と首筋に同じマークの刺青がある、一味への、あるいはボスへの忠誠の証なんだろうか。
  彼は屈託なく無邪気な印象を与えるが、肝心なことに話題が及ぶと表情を曇らせる、しばらくの沈黙を経て、別の話を切り出す。一昼夜を共にしているが、俺はジタンがこの島に侵入した理由も聞いていない。
  もっとも、ここに来た理由に関しては俺も話していない。友達に会いに来た、としか言いようがないが、ディータが島にいると知ってきたわけじゃない、里帰りなんてのどかさもない。

「ほら、あれがこの島の平和を祈念して造られたモニュメントだ」
  ジタンが指差した先には石の壁に包まれた噴水の広場があり、赤と白のストライプの旗がなびいていた。
  足下の土は懐かしい感触がするが、その広場はアスファルトで固められている。島の中央……そう、俺が率いた島の住民たちのほとんどが撃ち殺された因縁の場所。
  すくみそうになる足を引きずりながら、その噴水に歩いてゆく、ふいに吹き上げられていた水流がやんだ、そしてそこには俺たちのほうを真っ直ぐに見てタバコを吹かせている男がいる。

やっぱり。
やっぱり、生きていたか。
そして、この地で巡り合うのも決まっていたような気がする。
「久しぶりだな、ディータ」
  そうつぶやき、ゆっくりと広場に足を踏み入れた。

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……続劇