the sunshine underground / after life
「何年ぶりだ? ずいぶんアンダーグラウンドも変わっちまったみたいだけどな」
「ガゼル。臨時政府はこの島を合衆国に明け渡したんだ、だが、本土が押さえられたいま、ここは再び不要になった、そのあたりはジタン、君のほうがよく知ってるはずだ」
ディータは僕の手に刻まれた刺青に気づいていた、だけど、そのことを口にはしなかった。
何を言おうとしたか、それとも僕には話すことなんてなかったのか。ガゼルとディータ。ふたりはただ再会だけを望んでいた、そうだとしても、何か大きな、価値観の変容さえももたらす二匹のチンピラ。僕はそのふたりの背中を交互に見つめた。大柄ではない、鍛えあげた筋肉を持つわけでもない。
それでも、彼らが無意識に放つ圧倒的な存在感。幾千の戦いをくぐり抜け、なおもその渦中に生きようとする静かな覇気。知恵や仁義や、正義やモラルをもってしても、刻みつけられた「命」の痕跡には太刀打ちさえもできない、それが分かる。感じる。
喉元に切っ先を突きつけらても、ふたりなら唾を吐いて微笑みさえも浮かべるだろう。
タバコをよこせ、そんな軽口さえも叩くだろう。
オヤジ。
あんたが僕にふたりに会ってこいって言ったのが分かるよ。トーキョーに生きる人間にはこんな強く激しい心臓を持ったヤツはいない。
ピストルやナイフなんかでは屈することのない何かを持つ人間はいる。死を恐れないヤツだ。でも死にたいわけではなく、命を引き換えにしても譲れないものを持ち、しかも、死なないヤツだ。
そして、彼らは優しい。僕が知り合った誰よりも。
「さあ、何からやろうか」
ガゼルが言った。
「ビールでもってわけにもいかないみたいだ」
ディータは楽しくってたまらないように笑顔を浮かべる。
ねえ、と僕は言う。
「まずはとんずら、でしょ」
……続劇