「ジョニーは今日も相変わらずで。」
コンビニを立ち去った彼はすでに本来の目的を忘れていた。
タバコを買い、喫煙所を探したがそれも見つからない。公園の灰皿はすでに撤去されていた。閑散とした公園だった、芝生のうえで野宿者がハトに餌をやっている。食べ残しのナッツか何かだろう、人に慣れたハトが群がっている。
ジョニーは双方を眺めていた。公園のどこかに住み処をかまえているのか、その痩せた長髪の老 人はどこか達観した趣さえ感じさせる。
そして、ハトの群れはハトの群れで、おそらくはそう大金など持たないだろう彼に食事を世話になっているのだ。
「……どちらが幸せで、どちらが裕福なのか」
ジョニーは思う。
「うーむ……」
いま、自分がなるのならどちらを選択するだろう。やはりヒトであるべきか、あるいは食事を摂れるハトなのか。
……いや。違うな。
人差し指と親指で顎のあたりをさすりながら、ジョニーは思案に耽る。
<彼はハトを手なずけ、やがては自らの食事にするつもりではないか>
海難事故などで漂流した航海者の話に聞き覚えがある。
魚は毒を持つ場合があるが、鳥類は毒を持たない。体内に残存した細菌も火を通せば、ほぼ全てが食用に転用できるはずだ。
あの方は……まさか平和の象徴であるハトを食べるつもりなのではないだろうか。
平和を食らう。それは……許されることだろうか。誰もが享受でき、安心して暮らせるもののはずだ。
しかし、ハト料理と言うものも存在はある。
「……平和とは……自らの空腹を満たしてこそのものかもしれないな……」
何度も頷き、相も変わらず、くだらないことに思いを馳せるジョニーだった。
しかし、そのとき、彼を呼ぶ声が届いた。
「あれ、ジョニー?」
振り返ると、どこかで見た顔であった。
しかし、見たことはあるが、その様相は大きな変化を遂げていた。
呼びかけた男はスーツを着てネクタイをしめていたのである。
「あ……タ、タマゴくん、久しぶり……」
ジョニーは記憶力を総動員して彼の名を探りよせた、ほとんど間違いないはずだ、彼はタマゴ君に違いない……。
人の名前を間違えるほどの失礼はそうない。ジョニーとて、それくらいは分かるのだ。
自らがビリーだのジャックだのと呼ばれた日には、しばらく自らの存在意義さえ疑うだろう。
「……いや……コダマだよ」
コダマ君だった。
☆前回までは……
∞イケメン・ジョニーはスーパースター
∞イケメン・ジョニーは働かない。
∞ジョニーもようやく何かに気づく。
∞イケメン・ジョニーはやっぱり、頑張るあなたを応援しない。
(不定期につづく)