深海にて生まれた命、光をその手につかもうと、
あまりに無音に過ぎる暗がり、浮上するまで呼吸さえもままならない、
跳ねる飛沫に乗り移る、陽の原色のアーチは遠く、
脆く儚く、わずかなときを、それでもいい、
足枷外せば浮上を果たす、
じゃれ合うサカナが腰を振る、地上に生くヒトを笑った、
水のなかほど生きるにいい、優しい青みはないと分かって、
泥臭い唾を吐き、追われることも追うもない、
自責も孤立も仄暗い水の底なら、永久なる嘘を続けてられる、
サーチライトも地図もなく、描く先は月の夜、暗がる海面、
顔をあげたらどこかの灯台廻ってる、そのとき、ヒトは初めて地上を掴む、
浮上の先に見るのは世界、新たなる躯体を以て、
浮上の果てにあるのは夜空、ナイフのように尖る月、その端まで飛び上がる、
graphic and text by Billy.