ペンギン星人の本音。 | ワールズエンド・ツアー

ワールズエンド・ツアー

田中ビリー、完全自作自演。

完全自作、アンチダウンロード主義の劇場型ブログ。
ロックンロールと放浪の旅、ロマンとリアルの発火点、
マシンガンをぶっ放せ!!

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 もはや単なるペットと化したペンギン星人がそこにいた、そことはつまり彼が宿主に選んだリョウタ少年の自室だが、当のリョウタは困惑するばかりである。
「もーすぐ夏休みが終わるんだけど……君はいつまで地球にいるつもりなんだい……?」

 ずっと水族館にいてくれたら良かった、それが少年の偽わざる心境であった、彼にとってペンギン星人の存在は招かれざる客に過ぎず、また、その来訪理由も分からない。
「ずーっとグウタラしてるだけじゃん、着ぐるみクン……」
「グウタラとは失敬な、君は私たちペンギン星人の真の姿を知らないだけだ」
「真の姿……? 変身するの?」
「うむ。満月を見ると大猿ならぬ大ペンギンに……」
「……ウソだろ」
「……よく分かったな。ウソだ、ペンギン星人は巨大化などしない、実は攻撃態勢になると母船に装備したレーザービームで地球をまるごと焼き尽くすことができる……ような技術は現状ではない。いずれそうなると良いのだが」
「結局、なにもできないんじゃん……」
 図星だった、ペンギン星人には特筆すべき事柄はなかった。狼狽を悟られぬよう、ペンギン星人は努めて冷静なふりをする。
「私たちは友好的な関係を築くべく地球にやってきた、私たちペンギン星人は母なる星を棄てた星間移民だ」
 地球侵略はどこへ行ったのだろう、リョウタは素直に思う。
「君と離れている間にも、金髪の青年と友好関係を築いたばかりだ、ジョニーとか言っていたな」
「外人じゃん……喋る着ぐるみが珍しかったんだね……」
 人種は無関係だ、魂の交歓があれば良いはずだ、ペンギン星人は誇らしげにそう告げた。
「よく分からないけど……僕は巻き込まれたくないんだよ……」
「……」
 いきなりの本音に言葉を失うペンギン星人だったが、姿勢は変えなかった。動揺に気づかれると快適な住居を失うことを知っていた。


<つづくんかいな……>

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ここまでのペンギン。

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祈り火と過ぎる夏

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祈り火と過ぎる夏 3
祈り火と過ぎる夏 4

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performed by billy.