「トラヴェラーズ・ドキュメンタリ・フィルム」
撮影隊が追い回す、
地を這ってまで彼らを追う、
クルーは旅人、興味深げに舐めるよう、
ピントを合わせ続けてる、
肩で着るドクロ柄のアロハシャツ、
浮き出たあばらが寒々しい、
少女はトカゲ模様のビキニ、
伸ばしたままのくせ毛は風に絡まり砂まみれ、
眠るふりの老いた男はパジャマのままで、
目深に被った麦わら帽子、
月の落ちる砂漠を旅してる、
ラクダに乗るトラヴェラーズ、日常だとか非日常の区別はなくて、
終わる世界を探してる、
褪せたオレンジ、陽が昇るたびに、
撮影隊のテントに潜って眠る、
月を見つけてラクダ跨がる、
旅はいつだか仕事になった、
自由をひとつ奪われながら、クルーの言いなり、
同じ砂丘を行ったり来たり、
まるでフィクション、紛いのドキュメント・レコード・ムービー、
撮影隊が眠るころ、少女は疲れ泣き始め、
アロハの男は彼女を抱きしめる、老いた男は
“ふたりきりにしてやりな”
寝ずのクルーを追い払い、
麦わら帽を鼻まで被る、
世界は終わらず続いてくから、
彼らの旅は終わらない、
ドキュメントは終わらないから、
彼らの旅はクランクアップしないまま、
世界は終わらず続いてくから、
明日の朝が旅を待つから、
伸びる影を引きずりながら、
ロードムービー、日常を払い落としてロマンだけを追い詰める、
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⇒線上のボーイズ・ライフ
⇒whatever
⇒嗤う悪党
⇒百年孤独、アコーディオン
⇒月と背骨と足元と
⇒メリーゴーランドに委ねた声は
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あの夏、ぼくらは流れ星になにを願ったんだろう……
流星ツアー(表題作を含む短編小説集)
あの人への想いに綴るうた