西方音楽祭 七條恵子 フォルテ・ピアノ リサイタル | 西方音楽館のブログ

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西方音楽祭の続きです。

4月17日(日)13:30~
七條恵子 フォルテ・ピアノ リサイタル

オール ハイドン。
使用する楽器は、故小島芳子愛用の名器。

昨年7月西方音楽館 木洩れ陽ホールで、この楽器を用いて、
七條恵子さんに演奏していただきました。
七條さんの繊細で自由な感性に導かれ、
この名器は、その力を十二分に発揮し、
様々な音色、様々なニュアンスが見事に引き出され、
七條さん独自の宇宙が拓かれ、
「こんな素敵なフォルテ・ピアノの演奏は初めて」という感想をいただいたりしました。

西方音楽館 木洩れ陽ホールは、
フォルテ・ピアノがとりわけ美しく響くホールです。
ぜひ、聴きにいらしてください。

お問い合わせは、西方音楽館 0282-92-2815 info@wmusic.jp

以下、プログラムノートです。

西方音楽祭2016年4月17日(日)13:30~
七條恵子 フォルテ・ピアノ リサイタル 全曲F.J.ハイドン(1732―1809)

[プログラム・ノート]

●カプリッチョト長調「8人のへぼ仕立て屋に違いない」Hob.ⅩⅦ:1 (1765年)
タイトルのドイツ民謡がテーマ。このテーマが、何度も調を変え、形を変えて登場する遊び心に満ちた変奏曲。ハイドンの発想の自由さ、柔軟さが面目躍如する曲。
  
●ピアノ・ソナタ第58番 ハ長調 Hob.ⅩⅥ:48 (1789年)
・第1楽章 Andante con espressione
始めに登場する短いテーマが、自由で即興的な、またppからffまでのダイナミック幅を即座に交代させながら、何度も変奏されて現れる。
・第2楽章 ロンド Presto
最初の12小節がテーマ部分A。このあと、2回目、3回目は、ほぼ完全な形で現れ、4回目で増強され華々しく登場し終結する。躍動感あふれる楽章。A-B-A-C-A-D-A`(コーダ)のロンド形式。

●十字架上のキリストの最後の七つの言葉 (原曲1786年、フォルテ・ピアノ版1787年)
そもそも復活祭前の聖金曜日、ある教会地下の祈祷室で、イエスキリストの受難を覚える儀式用に作曲されたオーケストラ曲。もともと歌詞はついていない。翌年ハイドン監修の元、フォルテ・ピアノ編曲版が作成された。
 「教会の壁や窓そして柱は黒い布で覆われ、中央から吊り下がっているひとつの大きなランプだけがこの聖なる暗闇を照らしていた。」十字架に掛けられたイエス・キリストが発したとされる最後の7つの言葉1つ1つについて祈られた。

・序奏 Maestoso ed Adagio 付点音符が特徴的な、荘重で悲劇的な楽章。

1.「父よ、彼らをお赦しください。自分がなにをしているのか知らないのです。」Largo
アナバシス(上昇音型)で願い、カタバシス(下降音型)で赦されると解釈できるであろうか。

2.「はっきり言っておくが、あなたは今日わたしと一緒に楽園にいる。」Grave e cantabile
やさしさに溢れ、中間や最後の長調の部分は天国を思わせる明るささえ感じさせる。

3.「婦人よ、御覧なさい。あなたの子です」Grave
十字架に磔にされた息子イエスを目の前にして、母マリアの思いを表す。ため息を連想させる音型が印象的。

4.「わが神、わが神、なぜわたくしをお見捨てになったのですか。」Largo
神への問いかけに対して、答えも与えられているような楽想。

5.「渇く。」Adagio
短く切られた音が渇きを表すのであろうか。

6.「成し遂げられた。」Lento 
十字架を刻む運命的な音の後、それを肯定するような楽想が続く。

7.「父よ、わたくしの霊を御手にゆだねます。」Largo
神にすべてを任せる平安に満ちた楽章。
 
・地震 Presto e con tutta la forza
イエスが息を引き取ったのち起きた大地震の様を表す。

最終楽章「地震」を除き、各楽章すべて、ソナタ形式(不完全な楽章もあるが)に則っている。

                                                                               中新井 紀子