ネイルサロンのおかしな現実。前編 | 爪の解剖学と材料学に基づいたネイルサロンNoelRose(ノエルローズ)パウラ後藤桂子

ネイルサロンのおかしな現実。前編


こんばんは、オーナーネイリストの後藤です。

ちょっと、今日は真面目なお話をしたいなぁ…と思います。



私の歩んできた15年のネイリスト人生、その中で変化していった「ネイル」というもの。

今、(私の勝手な意見や見解ですが) 正直に思うネイル業界のおかしな現実…



長くなると思いますが、お付き合い頂ければ幸いです。


※この話は東京での事ですので、違う地域の方には当てはまらないかもしれません。
しかし、流行は首都である東京から発信され地方都市に一般的に広がるには5~6年先と言われています。
今、東京で起きている事がいずれ全国に広がるかは分かりませんし、もしかしたら東京を反面教師にこの現実は回避されるかもしれませんし、経済状況も変わっているかもしれません。
でも、同じ事がいずれ全国のネイル業界に広がる可能性は否定しきれません。



私は18歳でネイルの世界に入りました。
まだネイリストという言葉さえ世に認知されていない時代で、ネイルサロンは都内でさえ数えるほどしかありませんでした。


私は、高校を日本の私立高校に籍も置いたまま留学させてもらいました。
実質は通ってもいない私立高校に学費を払いながらの留学だったので、高校だけでとんでもない学費をかけてもらいました。

医療系一家の私は、医師や看護師は志しませんでしたが、イギリスの大学にメディカルハーブ(私は「西洋の漢方薬」と呼んでいます)の勉強をしに行く予定でした。
夢は「日本にメディカルハーブを持ち帰り、医療施設を作りたい」でした。

ですが、イギリスは9月が新年度のため日本にいる間に少しでも知識を深める為アロマスクールに通っていた先でネイルに出会い、そちらの道に進んでしまいました。

当時、父には「人様の爪をいじって金をもらうような、そんな事をさせる為にお前を留学までさせたんじゃない!」と理解されませんでした。
唯一、母が味方についてくれネイルスクールに通う事が出来、ネイリストとして就職しました。


実家に帰る度「お前、本当は大学に行きたいだろう?今なら学費を出してやるから大学に行け」と言われて続けました。




当時はまだ今の様なジェルはなくポリッシュかアクリルスカルプかの時代で、私の就職したサロンはアクリルスカルプがメインでした。

アクリルはアレルギーが出やすく、お客様は数週間に1度のご来店なのでアレルギーのでる方は余りいらっしゃいませんが、毎日扱うネイリストは10人に1~2人位のアレルギー発症率で、私もアレルギーを発症しました。

が、皮膚科に行ってもネイリストという言葉さえ浸透していない時代ですから、医者も何なのか分からないのでステロイド剤を渡されるだけで、

「今の仕事を辞めるか、3年位で抗体がつくまで我慢するかしかないね」

と何処に行っても言われました。


アクリルは、液体のモノマーと粉状のポリマーを重合させミクスチュアを作り固まりきる前に爪の形成をします。
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左:モノマー、右:ポリマー↑

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モノマーとポリマーを重合させ、まだ固まっていない状態のミクスチュア↑


通常のアレルギー症状はモノマーに反応するので筆を持つ手や指に症状が出ます。


が、私の場合は珍しいパターンで、モノマーやポリマー単体なら平気だが、重合物に反応していたので、削り出た空中を舞うダストに反応する為、皮膚が出ている箇所全てにアレルギーが出てしまいました。
(当時はまだ空気清浄機という物もなく、換気扇だけです)


当時流行っていたチビTにローライズパンツなんて着て行った日には腰回りも赤く痒くなり、特に皮膚の薄い顔の両頬は常にグチュグチュになり汁が出て、マスクをして隠さないとお客様の前に出れるような状態ではなく、お化粧もファンデーションなんて論外な状態でした。



薬を塗るとダストが付着するので薬も塗れず、施術が終わる度に頬を洗いまたマスクで隠していました。
しかし、常にマスクをしていてもダストは吸い込んでしまうので、結果的にアレルギー喘息にもなりました。



そして、労働条件も月15~16万で毎日12~13時間は当たり前に働き、休憩は何か口に入れる時間が取れたらラッキー程度、福利厚生は一切ナシ、終電まで練習や雑務、休日出勤も当たり前でした。

自分が好きで選んだ仕事だったので、理不尽な事があっても、これが後に自分の血肉となり経験値となり自分の為になる事なので何とも思いませんでしたし、普通だと思っていました。

これは、私がいたサロンが特別おかしな訳ではなく当時は殆どのサロンがこうでした。

またもや、父には「そんな労働条件で、自分の身体を壊してまでやるような仕事じゃない!辞めろ!」と幾度と言われました。




「父に認められたい」そんな思いがあった訳ではないですが、自分が選んだ道を貫きたかった事と、やはりネイルが好きだったんです。


お客様と一緒にアートを作り上げたり、コンプレックスだった爪を美しくケアして喜んで貰えたり、純粋にお客様に喜んで貰えるこの仕事が楽しくて嬉しかった。


大会に出て成績を残し、雑誌に毎月何本も出して頂き、芸能人も沢山担当させて頂き、ですがサロンの給与だけでは食べていけずお休みの日は他のバイトも掛け持ち、同級生が大学で遊んでいるのを横目に私は遊びも恋愛もする暇も無ければ、それを羨ましいと思う暇さえ無い程がむしゃらに働き続け3~4年程経った頃、父には何も言われなくなりました。
ようやく認められた気がして、嬉しかったのを覚えています。

その頃にはアレルギー症状も和らぎ始めていました。



しかし、元々はメディカルハーブ「天然材料で治療する」という志を持っていた私は、自分のしている仕事に矛盾を感じ幾度となく葛藤していました。




そんな頃「お爪に優しい」をキャッチフレーズにカルジェルが日本に上陸しました。

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当時、流行りはロングのアクリルスカルプにゴテゴテ盛り盛りの派手ネイル。

(ハードジェルは既にありましたが、操作性も悪くカラージェルという物もなかったので流行らず、仕上げのトップコート替わりに使う程度でした。)

今のようにジェルアートが研究されていなかった当時はワンカラーかフレンチのみ。ラメラインさえありません。
長さも基本は自爪、見た目はポリッシュを塗ったのとほぼ変わらない。

色もバリエーションは少なく、日本人が好むような色もない。

ジェル自体もまだ未発展で、発色も悪く、UVライトの紫外線で黄ばみ、お仕上がり時点で白フレンチなんてラインはぼやけてるし既に黄ばんでる。

そんな物なのに施術料はワンカラーで1万円位でした。

「お爪を傷めない」のは素敵だが、正直、市場の現状から流行る訳がないと思いました。



しかし、アクリルの施術で爪を削られ、
毎日触れていれば上記に挙げたようなアレルギー性の強い物質を乗せ、
自爪はボロボロ…そろそろ華美なネイルにも飽きてきた。


そんな一定数のお客様からのニーズから、「爪に優しい」「自爪のような違和感のない装着感」がキャッチフレーズのカルジェルは徐々に広がり始めました。



そして、ジェルはほぼ無臭。

それまでポリッシュとアクリルの強いシンナーのような臭いの原因で、百貨店は勿論、雑居ビルなどでも断わられる事が多く、出店したくても物件が見つからない現状が打破され一気にサロンが目につく場所に増え、ネイルというものが認知されるようになりました。

認知される事により需要が増え、ワンカラー1万円から単価も下がり、次にバイオジェルも出てきて、それまでネイルは富裕層の方で爪ごときに月2~3万近く払える金銭的にも余裕があり3時間程かかる施術ですから時間的にも余裕のある方のみ通える場所でしたが、普通のOLさんでもちょっと頑張れば通える金額で時間もアクリル程かからないので、仕事帰りに立ち寄れるような場所へと変わっていきました。

それに伴い、私達ネイリストは新しいマティリアルであるソフトジェルを研究する日々が続きました。

そして、ある程度ジェルの使い方や特性が確立された頃、ついに大手美容会社がこぞってネイルサロンを作り始め、価格競争が始まりました。

同じ頃、今や当たり前のクーポン雑誌のフリーペーパーが出始めました。
そしてパソコンは会社にしかない時代から、1人暮しの人でもパソコンを持つのが当たり前になり始め、ネットでのクーポンサイトやポータルサイトも出てきました。

ますます価格競争に拍車がかかり始めました。



その頃、私は違うサロンに移っていました。
当時としては度肝を抜く安さ(今では普通、もしくは高いと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが) ラメグラ3980円、ワンカラー4980円、オフ代2000円で打ち出しているサロンです。


ジェル自体の使い方等は確立されていても今のようなジェルアートはまだ確立されておらず、シールなどもない時代。
お客様もアートを望む方はほぼ皆無なのでラメグラかワンカラーが主で、オフ・オンで1時間(ご案内からお見送りまで入れてなので施術時間は30〜40分程度)、当時としては度肝を抜く安さとスピードですから、ご予約は1ヶ月以上先まで埋まりご予約が取れない事がクレームになる状態で、1日MAXで12人施術していました。

1日終わったら、今日自分が施術したお客様のお名前も、お顔も、何色を塗って、どんな話をしたかなんて覚えている訳ありません。
だからカルテの記入までもその1時間内にしていました。

私は歴があったのでおしゃべりをしながらでも施術ができる余裕がありましたが、他スタッフ達はスクール卒業してすぐに現場に出されて只々黙々とご予約をこなす他なく、私達は自らを「ジェルマシーン」と呼んでいました。


価格競争が始まり、このようなネイルサロンが増え、サロンから「ホスピタリティー」が無くなり只の「爪にジェルを乗せてくれる場所」となりました。

カウンセリングなんてじっくりしていられません。
お客様の悩みや相談なんて聞いてる暇はないのです。
ましてや、世間話なんてしてる暇はありません。

正味30〜40分で終了させないければならない、そんなサロンワークではジェルをいかに早くオフしていかに早くオンするか以外の事を学ぶ暇なんてないのです。

お客様の肌色パターンに合う色の提案、お好みを把握してのご提案、お爪の状態を見てアドバイス…
そんな事が出来るようになる事よりも、只々目の前のご予約をこなす為のスピードアップしか考える暇がないのです。


クレーム対応や接客態度なんて、二の次、三の次。
会社だって回転率を上げて売上を叩かせることしか命じません。


しかし、お客様も敷居の高かったネイルサロンにこの値段で通えるのだからと、ネイリストにカウンセリング力やホスピタリティーなんて求めていなかったのです。

ネイリストの質が、ネイルサロンの質が、下がり始める予兆でした…。


~続く~
中編はこちら

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