新型コロナウイルス 年末の医療状況 重症者の実際 | ある脳外科医のぼやき

ある脳外科医のぼやき

脳や脳外科にまつわる話や、内側から見た日本の医療の現状をぼやきます。独断と偏見に満ちているかもしれませんが、病院に通っている人、これから医療の世界に入る人、ここに書いてある知識が多少なりと参考になればと思います。
*旧題「ある脳外科医のダークなぼやき」

今年も残すところ今日を含め2日となりましたね。

12月下旬に入ってメディアを賑わせているのは新型コロナ変異種ですが、

変異種については、私を含め多くの現場医師はあまり驚いておりません。

 

流行するウイルスは変異するのが常ですし、変異の結果、感染力が強くなる一方で弱毒化したウイルスが流行することが多いです。

これは、単純に感染力が強いウイルスの方が他よりも広がりやすいことと、

宿主を殺さない弱毒ウイルスの方がウイルスの生存に有利であるからです。

 

映画やドラマにあるような、突然変異で強毒化したウイルスが広まる、というのは少ないようです。

インフルエンザはたまに強毒種が流行しますが、これは鳥の体内で変異した新しいタイプのものが人間に広まるからで、

人間に広まったものが突如強毒化するわけではありません。

 

さて、年末の医療の状況ですが、

私が連絡を取り合っている友人らの10か所程度の関東圏内や札幌の総合病院で、

現在外来停止や救急停止、手術停止などのいわゆる”医療崩壊”と呼べるような状況の病院はありません。

どこも通常稼働をしております。これは一貫して12月中変わりありませんでした。

一か所、クラスターが院内で生じ、2-3日救急を止めた病院がありましたが、そこもすぐに通常稼働に回復しています。

 

また、先日、コロナ重症患者を4床、コロナ中等症を20床以上治療している病院の、

担当の感染症専門の医師にも話を聞きました。

 

彼の病院も多くの入院コロナ患者を診ているものの、外来や救急、予定手術などは全て通常稼働しております。

 

先日話を聞いた時点では、

重症患者4名のうち、人工呼吸器が使用されているのは1名のみでした。

残りの3名は高齢のため人工呼吸器の使用を望まず、実質的に自然経過でのお看取りの状況にあるようです。

 

メディア報道の影響か、コロナ重症と聞くと全員に人工呼吸やECMOが使用されているような印象があるかもしれません。

しかし、実際には全例に集中治療をしているのではなく、

高齢の場合には人工呼吸器などによる高度な治療や、延命に当たるような行為は行っていないのが現状のようです。

連日、30~50名ほどの新型コロナウイルスによる死者が全国で報告されていますが、

その多くはこのような形で亡くなっている高齢者の方と類推されます。

 

ましてや、ECMOなどは非常に限られた症例にのみ用いられているようです。

 

人工呼吸器については、通常の肺炎などのケースでもご家族が治療を望む場合に使用が検討されます。

しかし老いによって余命が非常に短いと考えられる場合、人工呼吸器を用いても回復の可能性が極めて低い状況と考えられることが多いため、適応とならない方が多いです。

 

これは通常の誤嚥性肺炎や細菌性肺炎にかぎらず、間質性肺炎などあらゆる肺炎による高齢患者の重症化において、

これまでも現在も行われている医療の実際です。

 

現実には人工呼吸器を使わないことの方が多いです。

ましてやECMOとなるともってのほかで、まず使用することはありません。

 

肺機能が人工呼吸器を使用しても保てない場合に、肺機能さえ補えば回復が期待できる重症例にECMOは使用されます。

必然的に予備能が高いと考えられる程度までの年齢の、従来健常だった方が急激に肺炎で重症化した場合にようやく条件を満たすことになります。

 

高齢者が主に重症化する新型コロナにおいては、全体としてECMOの適応となるケースはごく一部となります。

人工呼吸器やECMOが必要で、そのためマンパワーも必要だから医療従事者は大変、

という理解は必ずしも重症例の大半に当てはまるわけではないようです。

 

私が話を聞いた友人の感染症専門医は実際、特に燃え尽きているようでも、疲れ果てているようでもありませんでした。

むしろ、昨今では酸素投与が必要な時点でステロイド投与を開始することで、

重症化を防げる症例も増えてきたと手ごたえを感じているようで、やりがいを感じているように見受けられました。

 

ただ一方で感染症対策を行いながら患者さんの日頃のケアを行う看護師の負担は高いと話していました。

行う医療やケア自体は他の重症患者と大差はないようですが、

それらすべてをN95マスクや、ゴーグル、防護衣などを装着して行うことの不快感や苦痛が高いというのが大きいようです。

そして、自分が感染するかもしれないという精神的負担や重圧がより負担を強めています。

 

コロナ重症床を確保している病院には1床につき1500万円の手当が支給されるように国が調整しているようですから、

これは是非、過酷な看護を担当する最前線の看護師のスタッフに報いてほしいと思います。

1500万というのは結構破格で、通常1床の重症床のベット代(診療報酬)がざっくり5~10万ですから、

そのベッド1床を150日から300日運用したのと同じ補助を病院は受け取れるのと同じです。

 

さて、全国の新型コロナ重症者数はこの2週間程度、600人台で緩やかな増加傾向です。

 

どの程度まで増加するか現状まだわかりませんが、1000人程度と考えていた予想から大きく外れることはなさそうな気がします。

2000や3000とはならない公算が日に日に高くなっており、

あとは一刻も早くワクチン接種の開始をすべきと私は思っています。

 

ワクチンには重症化を防ぐ効果があるとされており、

つまるところ結局は重症化しうることが新型コロナの最大の恐怖要因だと思いますので、それがワクチンによって緩和されれば、

世の中の空気も大きく変わってくるのではないかと思うのです。

 

今回のコロナ禍は実際のウイルスによる高齢層への脅威自体もさることながら、

それと同等かそれ以上に心理的要因からの社会的問題を多く起こしていると私は思っています。

ワクチンの接種はそのいずれにも効果があり、事態を改善するだろうと思います。

 

ところで、世の中はコロナ騒ぎで一辺倒ですが、

冬場は絶え間なく、脳卒中の重症者が当院にも搬送されております。

おそらくこの1か月で全国では数千以上の重症者が増加したのではないでしょうか。

コロナだけでなく、脳卒中にもお気をつけていただければと思います。

 

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