祖母谷温泉で《 自分史[24]》 | オカハセのブログ

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温泉宿は老夫婦がやっていた。

欲を言えばひと気のないところにこもりたかったけど、この温泉は人気があって毎日そこそこの人数が入りに来た。温泉に宿泊する人こそは少なかったけど孤独に練習という環境ではなかった。
食事は、キャンプ用コンロで米を炊いて食べていた。米や食材が無くなると温泉宿に頼んで売ってもらった(ほとんどただ同然にしてくれた)。宿の奥さんが時々食事に呼んでくれたり、とても良くしてもらった。
土日には欅平駅の近くでサックスを吹いて食材費にして駅の立ち食いそばを食べてから祖母谷に戻ってきた。

1ヶ月経った頃、近くの施設かなんかの作業に大工さん二人がこの温泉宿に1週間ほど滞在した。
ある日宿の奥さんが「今日の夜ごはんの時、大工さんがサックス吹いてって言ってるから来なさい」と言われ、食事の席にお邪魔した。ビールをご馳走になり少し話をしてサックスを吹いて志しを頂いた。
25歳くらいだった僕は若気のいたりで生意気な持論を熱く語っていると「にいちゃん根性ありそうだから山降りたら俺のところで1ヶ月くらい働かないか?」と親方に言われた。働いでみることにした。
大工さんは数日後帰って行った。

僕はそれから一週間程滞在して山を降りる事にした。帰る時宿の奥さんは僕が見えなくなるまで見送ってくれました。
今はどうしてるのかな?前に検索してみると宿の夫婦は引退して、違う方が建物を新しくして引き継いだと書いてたような…

その大工さんの工務店は「入善」という小さな町にありました。
ある日大工の皆んなで飲みに行った時、親方が「にいちゃんが宿で俺にいっちょ前な事を語るから、ここでの働き悪かったらそれを突っ込むつもりだったけど、確かに言うだけの事はあるな、根性あるよ。だけどお前は力が無さ過ぎるな。もし俺のところでずっと働くなら叩き直してやるぞ」と言った。
僕は「いや僕は大工になるつもり無いしもうすぐ旅の続きをします」というと「まあ、音楽やるのに力はいらないしな。だけど音楽で食っていくのはお前程度の腕では無理だぞ。趣味にして、真っ当な職に就いたほうがいいぞ」と言われた。
真っ当な意見ですね…

1ヶ月働いたお金で自転車を購入した。手元には千円くらいしか残らなかった。親方が2千円カンパしてくれた。

サイクル野郎再開の初日は小さな神社で1ヶ月ぶりの野宿をした。

朝起きると大きな御神木で小鳥が沢山鳴いていて、天国みたいな目覚めだった。










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