更新原稿
古都のブログ小説 京の鐘977
皆で、お昼を会社で一緒に取ったあと、
全員で病院へ戻り、玄関口の廊下に姿を見せると同時に、
ナースセンターの入り口付近から、
甲高い歓声が上がった。
志乃たちの車を廊下の窓から見ていたらしく、
まさに電光石火の早業であった。
ぎょっとした秋山以下、全員が身を固くすると、
一拍置いて、ナースセンターから何人からのナースが
転がるようにして、飛び出して来た。
あまりの歓声と騒々しさに、廊下沿いに並んでいる
個室のドアが次々と開けられ、
志乃たち一行を目にすると、付き添いの家族らが部屋を
とび出して来て、盛んに手を振った。
誰もが志乃たちの舞う様子をテレビで見ていたのだ。
それにしても、
ICU室担当のナースセンターの看護師とは思えない、
はしゃぎように秋山らの足が一瞬止まったが、
後ろから急かされるように、足並みを乱し、
廊下を足早に歩き始めた。
志乃と秋山は志乃を急かせぬようにのんびりとした
足取りで磨かれた廊下を進んだ。
ナースセンタ付近で、もみくちゃになりながら、
笑いあう、様子に微笑を漏らす志乃に
「君の舞を見ていたようだね」
「うちだけで、のうて・・」
と言って、口ごもる志乃を見て、秋山はいじらしくて
たまらくなり、気が付けば志乃の肩を引き、
軽く抱き寄せていた。
志乃が少し赤ら顔で、秋山の肩に頬を寄せた。
小首を少し捩じり、秋山の顔を見上げた。
遠くから、何か悲鳴のような歓声が上がった。
一瞬、見られたか・・と秋山が、ぼそっと口にしたが、
格別、悪いことをした様子も見せず、相変わらず、
ゆっくりと歩き始めた。
穂香が駆け戻って来て
「センターでも、回診当番を覗いて、全員がテレビに
釘づけになっていたようですよ」
息を切って早口に巻くし立てた。
「病室からも人が出ていて、大丈夫なのかな」
秋山の問いに答え
「どの部屋でも、うちらのテレビを見ていたようで、
舞終えた時は、悲鳴と泣き声が上がった
みたい」
穂香の興奮した話し方に、微笑みで返す志乃の目に
円らなものが膨らんでいた。
穂香の頬も熱いものがしたたり落ち始めていた。
志乃を抱きしめていた秋山が珍しく肩に乗せた片手を
放そうとはしなかった。
ナース達からも、早く来るよう急かす声が跳んでいた。
ICUへの廊下が人々で溢れだす様子が目に入ると、
志乃も秋山へ無言で、
「立っていないで、行こう」
との目が語っていた。
秋山もこれに応え、ゆっくりと歩を進めた。
駆け戻って来た奈菜や小夜が口々に志乃の舞の評判の
良さを捲し立てた。
秋山と志乃は互いに目を見つめ合った後、
「とりあえず、入院している部屋へ戻ろう」
無言で、肯く志乃の背に手を添えて、皆の後に続いた。
途中、一つの病室から顔を覗かせていた中年の女が
志乃に声をかけた。
「あんた、可愛かったよ。うちの婆さんがさ、会いたがって
るんだけど、構わないかえ」
随分と蓮っ葉な言葉で志乃を誘った。
咄嗟に、小夜が戻って来て
「悪いけど、うちの姫様は舞い疲れで、大変なの、またに
して」
めっぽう江戸前のきっぷの良い言葉で切り返した。
古都の徒然 ブログ小説 京の鐘の再開に・・
お待たせしていたブログ小説・京の鐘を本日、
再開致しましたが、御覧になられましたでしょうか、
私も久しぶりの休暇でリフレッシュの効果があった気が
しています。
何より、
自分の執筆している作品を読み返すことが出来て、
意外にも身も心も軽くなり・・
物書きにとって、
無から有を生み出す喜びは想像以上のものがあります。
ですが、最大の驚きは
自分がこんなことを書いていたのかと、あらためて
思い知らされることです。
締め切りと勝負していた頃は、書き上げた途端、
全て忘れてしまい・・
まるで、
報道のニュース原稿を書き上げた時と似ているのも
面白かったが・・・
全力で書き尽すと‥決まって、すべてを忘れるのも
嬉しかったな・・(#^^#)
とにも、かくにも、物事が始まり、
この先、この舟は何処まで流れて行くのか・・
果てしない、
見ず知らずの国まで持っていくのか・・
私は
それを知る前に穏やかな眠りに尽きたいとも・・
むにゃむにゃ・・
完全に睡眠不足です(-。-)y-゜゜゜