明け方のレターボックス | おにかな日記

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ショコラティエ企画第4弾、明け方のレターボックスがリリースされて早2ヶ月が過ぎました。

今回もありがたいことに、豪華作家さまにこそりと混じらせてもらうことができました。

お題は『手紙』!多種多様、濃密で唸るような作品ばかりで、読むのが本当に楽しかったです。無料でダウンロードできますので、未読の方はぜひぜひ(*^^*)

以下感想です↓



『常夜のレターボックス』
初っ端からズドンときました。主人公と彼の関係性ににんまりしながら読み進めて、終盤に近づくにつれて、あれ?とソワソワし始め、読み終えた時には切なさと苦しさに締め付けられました。彼が寝ている場所を例える文章がとても好き。
柔らかく馴染みやすいお話を最初に持ってくるものだと思っていたけれど、こういう、ズドンとくるお話を最初に持ってくるのも、読者を物語の世界に引きずり込む一つの方法なのだなぁ…と思ったり。


『バースデーカード』
女同士って本当に面倒でどろついていて、どこかでみんなマウンティングし合っていて。そうだね、そうだよなぁと頷きながら読みました。
女同士は面倒くさい。けれど、女同士だからこそ生まれる、あたたかさがある。男と女には決してない何かが、たしかにある。とても好きでした。


『幸せの種』
この作者さんのお話はいつもわたしの心にぽっと明かりを灯してくれます。出てくる登場人物たちもとてもあたたかい。人間味もある。
抜群の安定感のあるお話を読むうちに、人生で大切なものを教わっているような、諭してもらっているような、そんな気持ちになれます。もちろん胸キュンのおまけつき!


『足許で蝉は唄う』
出てくる男の子。コラコラって思うんだけど、憎めない。そして可愛い。女の子も可愛い。愛情表現が少しわかりにくいけれど、少し曲がっているけれど、なんだかんだでお互い大好きじゃん!ってにまにましてしまいます。
この作者さんが書くキャラたちの恋愛はとても可愛くて愛おしい。学生時代の教室や風景が、目に浮かんだ気がしました。


『ささやかな罪を抱いて』
主人公のちょっとした仕返しに、スッキリしたような、くすっと笑えるような、それでいてなんだか覚えがあるような…いろんな気持ちになりました。このお話とまではいかなくても、誰もが少しだけ、意地の悪い気持ちになったことがあるんじゃないかなぁ。相手の不幸を願うことはしない。でも、相手の幸せを心から願えるなんて、綺麗ごと。人生の一部が詰め込まれている気がしました。


『残光』
手紙というお題からこのお話がきたか!と衝撃でした。読んでいて、言葉一つ一つがしんしんと心に積もっていくようでとても苦しかった。
またね、またね、またね。主人公と、姉が付き合っていた男性との、どうにも表せない、先の見えない関係の描き方がとても素敵だった。いびつで綺麗な愛が、詰まっていました。


『指切り心中 吉原編』
短編とは思えない濃密さ。息ができなくなりそうなほどでした。この世界を作ることができるのは作者さんだけで、到底わたしにはたどり着けないなと思います。
人間は、女は、何を考えて生きるのだろう。死ぬのだろう。どこを見据えて。だれを心に置いて。それとも、だれも心に置かずして。最後の一文に放心します。


『拝啓、最愛なるひとへ』
超かわいい…!!数人の手紙のやり取りで進んでいくお話ですが、とにかくうまい。うまくて可愛い。それぞれの人物像が浮かんできて、愛おしくなって、ちょっと笑って、そして最後には感動に見舞われる。
こんな書き方、表現の仕方があるのかと驚き、そして、作者さんの確固たるキャラクター作りに感服でした。


『5月のレット・イット・ビー』
読み途中、えっ!と少し驚いて、読み終えて、心の中にすっと水が流れたような気持ちになりました。雰囲気のある映画をみた気分。
さよならは、言葉だったり、文字だったり、あるいは何もなく突然訪れるもの。優しく切ないさよならは、きっと彼と彼女、それぞれを新しい世界に向かわせてくれるのだと思います。


『そして世界にロマンスが鳴り響く』
この作者さんが書く男女…人と人との関係を見ていると、いつも、日常から切り離されるような感覚をおぼえます。今回もまたしかり。
陳腐な愛や恋、わざわざ周りに知らせて回るような幸せじゃなく、揺るぎないものがある。高尚で、とても切ない。彼女が、彼のために奏でる音楽を遠くからでもいいから聴いてみたい。


『萩と牡丹が咲くとき』
始終ほっこり読ませていただきました。
可愛い思いつきをする主人公たち、その小さな冒険に、がんばれ、がんばれ、と声援を送りたくなり、ゴールしたときにはよかったねと抱きしめてあげたくなりました。
愛に溢れたお話でした。"ふたり"が、そして"ふたり"の家族が、ずっと幸せに仲良く暮らせますように。


『アズキナシ』
とてもとてもツボで、心臓をつかまれて、ぐわぁっと内側から込み上げるものがありました。風景の描写がとても緻密で美しく、走る馬が見えました。
しっとりとした世界。うごめく感情。決して丸裸にできない、してはいけないものを、濡れた布でおおったような。
最後にひとつの決断をした主人公。瑞々しい仔馬の姿と重なり、なんとも言えない気持ちになりました。


『あの人へのファンレター』
いつもそうきたか!と思わせてくれる作者さん。なんだか可愛い高校生男女のお話かと思えば、それだけじゃない。ばっちり一捻り二捻り、くわえられておりました。
女同士、いがみ合うこともあれば、そこをぐんっと越えて、憧れを抱くこともある。
作者さんの作品を読んでいる人なら、二度おいしくいただける。遊び心とお話の工夫が、とても素敵。


『拝啓、自由な青い鳥』
素晴らしいお話でした。この作者さんが描くお話に、わたしはいつも憧れてしまうのです。
手紙の最後の文章に、くーっと唸りたくなりました。世にまた一人、素敵な男性を生み出してくださってありがとうとお伝えしたい。
帰ってこい、だけじゃなくて。帰ってきて、もう一度飛び立てって、なんかもう、究極の愛情だよなぁと思う。


『ブレスオブ』
読んですぐ、主人公たちの日常に引き込まれました。父親のいない、母と子の家庭。二人で歩んできた人生の過程。
読み進めていき、主人公とともに"手紙"を見つけたとき、とても感動しました。のぼってきた朝日を目にしたような、清々しく希望に満ちた気持ちになれました。手紙というお題を、このように素敵に使われたこと、さすがだなぁと思います。


『ナカタニイチコだった』
このお話、大好きでした。めいっぱいの青春と行き場のない恋愛が、詰め込まれていました。詰め込まれて、爆音とともに弾けるような。素敵な感覚。
ナカタニイチコだった。一時の両思いより、ずっと価値のある言葉だと思った。主人公の初恋、わたしは、別の形として実ったような気がしました。



本当に素敵な、何度も読み返したくなる作品ばかりでした。
素晴らしい企画に参加させていただけたこと、本当に光栄です(*^^*)