「アロハ~」、ダニエル・イノウエ | akazukinのブログ

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「日本史のいわゆる「非常時」における「抵抗の精神」とは真理追求の精神、科学的精神に他ならない」野々村一雄(満鉄調査部員)

ダニエル・イノウエ氏が亡くなった。


このブログを始めて、日系移民のテーマを取り上げたとき、それまで知らなかった442部隊の存在を知った。


それから間もなく、映画の上映やテレビドラマが制作され話題となった。


大統領継承順位第3位のニュースが入り、


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参考:「史上初めて日系人で米国第三位の地位に就いた人物の戦歴が凄い」海外の反応(9月23日)
http://blog.livedoor.jp/drazuli/archives/5928762.html


今年は、日系史映画の三部作目「二つの祖国で」が12月8日から上映されている。


日系強制収容所内で制作された作品を集めた「尊厳の芸術展」も東京の開催が12月7日で終了し、その後日本各地を巡廻展示される。


その締めくくりがこの突然の訃報であった。



私がこの日系部隊の話を聞いたとき、これはまさしく日本人のなせる業(わざ)であると感じた。


日米終戦後60年以上もたったこのご時世どうしてこの話題が持ち上がったのか。


出版されたばかりのすずき監督の本を講読したのは なにかいきさつが知りたかったからだ。


それまで、制作者と作品とどのような力関係になるのか興味深い感覚を味わっていた。


第一部「東洋宮武」は存在も知らなかった。

第三部「二つの祖国で/MIS」はまだ見ていない。


ので、二年前公開された第二部「442 日系部隊」のみの感想であるが、これは戦争でいうと華のような存在である。


死にざまが生きざまと直結するすさまじい状態と情況下で研ぎ澄まされた緊迫感は、まさにそれが実話であったゆえの迫力が伝わる。


なのに、なにゆえこの監督なのか。

これが本を読んだ時の感想である。


まったくもって失礼な言い方であるが、そう思ったものはしかたがない。


なぜかと言うと、この本から緊迫感が伝わらないのである。



例えば、東京新聞の夕刊に連載されている角谷優氏の「テレビ局映画開拓史」は今日[12月18日]で55回目である。


角谷氏がプロデュースを手掛けたお馴染みのタイトルが並び、映画の作られていく苦労話が、苦労のみならず直感の域の仕事ぶりがどのように作品に反映されているか、いわゆる裏方の技や思い入れや感情が入り混じり、制作にかかわるスタッフや職人たちの様子が作品の側面として重厚さを増させ、それを知ったがために私の映画の評価を変えさせるほどの話を書きつづられている。


「南極物語」は、制作者側の側面を知ることで興味が増したものだった。


「442 日系部隊」は、それ自体が驚異的である。


監督はどんな人か知らなくても、充分存在感のある映画だった。

監督の存在は別の視点をあらわにする。



映画のみならず、あの時代における強制収容所内での人びとの作品。


戦場ではないが明日をも知れず環境の中、わが身の行く末もままならない状況、一つ間違えればどうなっていたかもわからない不安定な立場。


この作品も、死にざまと生きざまが直結したところで、生まれたものである。


故に、この作品も存在自体が驚異的である。


と思う。



『1941/日系アメリカ人と大和魂』、すずきじゅんいち著から抜粋する。


軍へ志願をし、国に忠誠を誓った人たちと、従軍に反対したり忠誠登録にノーと答えた人たちとは、その後も日系社会の中で対立が続き、二派に分かれてしまった日系社会は、その後、力強さを欠いてしまったという事実もある。 (中略) 現在では、半ば忘れ去られた事実でもあるが、ボクらは、その両者にお会いし、話を直接聞いているから、この対立についてはやはり真剣に考えざるを得ないのだ。


ヒーローとして帰還した442連隊の兵士たちに対し、刑務所に入れられたり非忠誠という烙印を押されたノーノー・ボーイと呼ばれる人たちの社会への見方を言えば、悲しいかな彼らは社会の片隅に追われて、マジョリティは442派になるのは当然であった。


ノーノー・ボーイたちや、収容所からの出征に反対したドラフトレジスターズと呼ばれる人たちは、戦後、極端に言うなら日系社会の片隅にも入れてもらえないほど、苦難の道を歩まなければならなくなったのである。


映画『442 日系部隊』の中で、442連隊の大ヒーローであるダニエル・イノウエ氏は、この両者ともが英雄であり、特に、ドラフトレジスターズなど刑務所に入っても自分の意見を変えなかった人たちこそ、アメリカ人として自分の意見をキチンと語り続けたヒーローだ、と映画の取材時に話してくれた。


(『1941』、すずきじゅんいち著、文藝春秋、2012年、138~139頁)



ダニエル・イノウエ氏に敬意を表し「アロハ~」。


そして、ありがとう。◆



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http://www.daninouyehawaii.com/news/clippings/the-inouye-legacy/


参考:イノウエ米議員が死去 最後の言葉は「アロハ~」 
産経ニュース(2012.12.18 08:29)
http://sankei.jp.msn.com/world/news/121218/amr12121808300005-n1.htm